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楢崎智「複合」初代王者…ジャパンカップ

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男子決勝、ボルダリングの課題を攻める楢崎智亜

 スポーツクライミング・コンバインドジャパンカップ最終日(24日・岩手県営運動公園ほか)――スピード、ボルダリング、リードの3種目の総合成績で競う「複合」の決勝が、前日の予選を通過した男女上位6人で行われ、男子は楢崎智亜ともあ(TEAM au)、女子は野口啓代あきよ(同)が制し、第1回大会の優勝者となった。

最終種目で逆転「達成感ハンパない」

 得意のボルダリングでの失敗が響き、スピードとの2種目を終えた時点では2位。最後のリードの勝負で、楢崎智は力を振り絞った。他の5選手がはじき返された最終盤のホールドをつかみ、最高高度を記録。「プレッシャーがやばかった。逆転できてよかった」と胸をなで下ろした。

 スピードでの好結果も物を言った。「いつもよりライン取りがうまくいった」と、トーナメントを勝ち上がるごとにタイムを上げ、1位に。この日3本目となる決勝では、前日に自身がたたき出した日本記録をさらに0秒06更新する6秒87をマークした。

 最終種目を前に、トップに立っていたのは、昨年の世界ユース選手権の複合で優勝した実績を持つ3歳年下の弟、明智めいち。兄の意地を見せ、「達成感、ハンパないですね」。初代王者の称号を手にし、笑顔がはじけた。

野口が3連勝、男子は楢崎智が2位…ボルダリングW杯

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決勝で最終の第4課題を完登して優勝を決めた野口啓代

 2020年東京オリンピックの新競技「スポーツクライミング」の一種目、ボルダリングワールドカップ(W杯)第5戦は3日、東京・エスフォルタアリーナ八王子で男女決勝を行い、女子は野口啓代あきよ(TEAM au)が優勝した。

 野口はW杯第3戦から3連勝。2位は野中生萌みほう(同)。初の決勝進出となった伊藤ふたば(同)は6位だった。男子は2016年総合王者の楢崎智亜ともあ(同)が2位につけた。

決勝

  • ▽男子
    • 1位 ガブリエレ・モロニ(イタリア)
    • 2位 楢崎智亜(TEAM au)
    • 3位 杉本怜(北海道連盟)
  • ▽女子
    • 1位 野口啓代(TEAM au)
    • 2位 野中生萌(TEAM au)
    • 3位 エカテリーナ・キプリーアノワ(ロシア)

ボルダリングW杯初戦で野中生萌が2年ぶり3度目の優勝

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JMSCA提供

 2018年度IFSCクライミングワールドカップ・ボルダリング初戦(4月13、14日=スイス・マイリンゲン)、女子で野中生萌みほう選手が2年ぶり3度目の優勝を決めた。野中選手のワールドカップ優勝は、16年ミュンヘン大会以来3度目。

 同競技に出場した野口啓代あきよ選手は3位となった。男子では楢崎智亜ともあ選手が2位、ワールドカップ初決勝進出の高田たかた知尭ともあき選手が5位だった。

 ボルダリング国別ランキングは、日本が367ポイントで、4年連続年間1位を継続中だ。

JMSCAが第2期オリンピック強化選手を発表

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 日本山岳・スポーツクライミング協会(JMSCA)は3月27日付で、オリンピック強化選手の選考基準に準じて、第2期JMSCAオリンピック強化選手男女各6人を発表した。4月1日からの対象となる。

 JMSCAオリンピック強化選手は、複合種目を強化するための強化合宿やワールドカップ、世界選手権をはじめとした国際競技大会などへ優先的に出場することができるほか、渡航費や宿泊費などへの補助などを受けられる。成績に応じて6か月ごとに入れ替えを行うため、2017年10月19日付で発表した第1期選手のうち、男子2人と女子1人が入れ替わりとなった。

第2期JMSCAオリンピック強化選手は以下の通り(敬称略、発表順)

  • 男子

    楢崎智亜ともあ、藤井こころ、原田かい、緒方良行、是永敬一郎、土肥どひ圭太

  • 女子

    秋彩あい、野口啓代あきよ、伊藤ふたば、野中生萌みほう、谷井菜月なつき、小武芽生めい

「スピード」の壁を超えろ! 日本代表選手が「複合」強化合宿

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高さ15メートルの壁に、同時スタートで2人が登りタイムを競う「スピード」(東京都昭島市のモリパーク・アウトドアヴィレッジで)

「スピード」では隣の選手を大いに意識することになる。手前は野中生萌(のなかみほう)選手(東京都昭島市のモリパーク・アウトドアヴィレッジで)

 日本山岳・スポーツクライミング協会(JMSCA)は12月6日~8日、2020年の東京オリンピックで実施されるリード・ボルダリング・スピード3種目の「複合(コンバインド)」方式を取り入れた日本代表強化合宿を東京都昭島市などで開催した。複合方式による本格的な日本代表合宿は初めて。

 3種目のうち、得意のボルダリングでは世界を圧倒し、リードでも健闘する日本勢だが、速さを競うスピードでなかなか好成績を残せず、大きな課題となっている。オーストリア、フランスからの招待選手も交えた今回の合宿を経て、2018年の世界選手権、さらに3年後のオリンピックを視野に入れた成長に期待がかかる。

日本勢が得意な「ボルダリング」(東京都武蔵村山市のマーブークライミングで)

 IFSC(国際スポーツクライミング連盟)が発表した2017年クライミングワールドカップのシーズン成績によると、個人では複合で楢﨑智亜選手が優勝、藤井快選手が3位に、リードでは是永敬一郎選手が3位となった。国別ランキングでもボルダリングで日本が4年連続世界1位と圧倒的な強さを見せ、リードも3位に食い込んでいる。ただ、スピードは国別ランキングで21位であり、個人成績もふるわない。

 今回の合宿では、スピードの苦手意識克服と3種目を一日でこなす方式に慣れることなどを目指した。

到達した高さを競う「リード」競技(東京都昭島市のモリパーク・アウトドアヴィレッジで)

 メディカルチェックやグループトレーニングを受け、最終日の8日は朝から、スピード、ボルダリング、リードの順にコンペティション(競技)形式で練習の成果を確かめ合った。参加したのは、10月に決定したJMSCAオリンピック強化選手のうち欠席者人を除く楢崎選手、伊藤ふたば選手ら9人、オーストリア代表5人、フランス代表8人。スピードでは海外選手に後れをとる場面も目立った。

 現在、スピード(15メートル)の世界記録は男子で5秒台、女子で7秒台。日本勢の現状は男子7秒台、女子9秒台だ。合宿を振り返り、楢崎選手は「スピードはフライングで一発失格という難しさがある。練習では7秒台前半が出ており、今後は6秒台を目指したい」と話し、直近では来年の世界選手権優勝をねらうとした。

「リード」は日本選手も得意。競技中の楢﨑智亜選手。(東京都昭島市のモリパーク・アウトドアヴィレッジで)

安井博志・日本代表ヘッドコーチは、スピードの現状について、国内でスピードの練習ができる壁が少ないこと、ボルダリングやリードと違い、同じスタートで共に登る隣の選手と競うためメンタル面で対処の仕方が違うこと、などを挙げ、「1日3種目をやることによる負担も経験してほしかった。今回、合宿で海外の選手からいい刺激を受けた。スピードにも手の届くところまで来ている感覚がある」と話した。

JMSCAが第1期オリンピック強化選手を発表

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緒方良行選手(2017年7月にポーランドで開催されたワールドゲームズ大会の様子、JMSCA提供)

野中生萌選手(同)

 日本山岳・スポーツクライミング協会(JMSCA)は10月19日付で、オリンピック強化選手の選手選考基準に準じて、第1期JMSCAオリンピック強化選手男女各6人を発表した。

 今後、優秀な成績を収めた選手を追加する可能性もあり、6か月ごとに入れ替えを行う予定。

 第1期JMSCAオリンピック強化選手は以下の通り(敬称略、五十音順、所属と年齢は10月24日現在)

  • 男子

    緒方良行(福岡県連盟、19歳)、是永敬一郎(埼玉県連盟、21歳)、楢崎智亜(栃木県連盟、21歳)、楢崎明智(栃木県連盟、18歳)、藤井快(東京都連盟、24歳)、渡部桂太(三重県連盟、24歳)

  • 女子

    伊藤ふたば(岩手県協会、15歳)、尾上彩(福井県連盟、22歳)、谷井菜月(奈良県連盟、14歳)、野口啓代(茨城県連盟、28歳)、野中生萌(東京都連盟、20歳)、森秋彩(茨城県連盟、14歳)

アジア選手権のボルダリング、リードで藤井快選手が優勝、女子2選手も

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ボルダリング男子で表彰台を独占。1位の藤井快選手(中央)、2位の緒方良行選手(左)、3位の渡部桂太選手

女子リードも日本勢が圧勝。1位の尾上彩選手(中央)、2位の野口啓代選手(左)、3位の小武芽生選手

 9月18~21日にイラン・テヘランで行われた「IFSCクライミングアジア選手権 テヘラン大会」で、藤井快(こころ)選手が男子ボルダリング、同リードで2冠を達成。女子もリードで尾上彩選手、ボルダリングで野口啓代(あきよ)選手が優勝するなど、好成績を上げた。スピード種目ではいずれも下位となった。

日本人選手の主な成績は以下の通り(敬称略)

  • ボルダリング
    <男子>
    1位:藤井快、2位:緒方良行、3位:渡部桂太、4位:楢崎智亜
    <女子>
    1位:野口啓代、2位:尾上彩
  • リード
    <男子>
    1位:藤井快、3位:緒方良行
    <女子>
    1位:尾上彩、2位:野口啓代、3位:小武芽生
  • スピード
    <男子>
    19位:楢崎智亜
    <女子>
    22位:野口啓代

2017年8~9月 世界ユース選手権@オーストリア・インスブルック 日本勢は参加国トップの金8、銀9、銅7の計24のメダルを獲得

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ボルダリング女子ユースBで優勝した伊藤ふたば選手(中央)、2位の谷井菜月選手(左)、3位の菊地咲希選手(右)

リード女子ユースBで、優勝した森秋彩選手(中央)、2位の谷井菜月選手(左)、3位の伊藤ふたば選手

コンバインド女子ユースBで優勝した谷井菜月選手(中央)、2位の森秋彩選手(左)、3位の伊藤ふたば選手

リード男子ジュニアで優勝した緒方良行選手(中央)と2位の楢﨑明智選手

 2020年東京オリンピックの追加競技に決まったスポーツクライミングで、14~19歳の若手選手らが競う「IFSC世界ユース選手権」が8月30日~9月10日まで、オーストリア・インスブルックで開催された。日本勢は素晴らしい活躍を見せ、参加国中トップの金8個、銀9個、銅7個の合計24個のメダルを獲得した。2020年東京オリンピックに向け、トップアスリートの卵たちの飛躍に期待が持てそうだ。

 メダル獲得ランキングの国別2位はアメリカの14個(金5、銀3、銅6)、3位はロシアの15個(金4、銀7、銅4)。

 今大会には世界55か国・地域から1172人が参加し、日本代表選手は20人だった。選手らはジュニア(1998年、99年生まれ)、ユースA(2000年、01年生まれ)、ユースB(2002年、03年生まれ)に分かれ、リード、ボルダリング、スピード、コンバインド(前3種目の複合)の各種目に挑んだ。

 日本勢の中でも女子ユースBは、ボルダリング、リード、コンバインドの3種目で日本勢が表彰台を独占した。残念ながらスピード種目でメダルを獲得できなかったが、東京オリンピック方式のコンバインドで男女とも好成績を上げたのは将来に向けていい兆しといえそうだ。

日本選手の1~3位の結果は以下の通り(敬称略)

  • ボルダリング
    <男子ユースA>
    2位:土肥 圭太、3位:田嶋 瑞貴
    <男子ジュニア>
    1位:緒方良行、2位:楢﨑 明智
    <男子ユースB>
    1位:川又玲瑛、3位:抜井亮瑛
    <女子ユースB>
    1位:伊藤ふたば、2位:谷井菜月、3位:菊地 咲希
  • リード
    <男子ユースB>
    3位:西田秀聖
    <女子ユースB>
    1位:森秋彩、2位:谷井菜月、3位:伊藤ふたば
    <男子ユースA>
    1位:田中修太
    <男子ジュニア>
    1位:緒方良行、2位:楢﨑明智
    <女子ジュニア>
    2位:田嶋あいか
  • コンバインド
    <男子ユースB>
    2位:川又玲瑛、3位:西田秀聖
    <女子ユースB>
    1位:谷井菜月、2位:森秋彩、3位:伊藤ふたば
    <男子ジュニア>
    1位:楢﨑明智、2位:緒方良行

アスリート

藤井快

PROFILE

ふじい・こころ/1992年11月30日生まれ。静岡県浜松市出身。浜松日体中学・高校を経て、中京大学卒業。ボルダリングのジム「B-PUMP TOKYO 秋葉原店」勤務。2016年のボルダリングW杯(計7戦)で総合2位、17年も同5位と上位入り。18年2月、国内大会のスポーツクライミング・ボルダリングジャパンカップを制し、男子初の3連覇を果たした。身長175センチ、体重65キロ。(肩書などは2018年4月現在)

INTERVIEW

  • インタビュア

    始めたきっかけは?

  • 藤井

    中学に壁があって、そこで初めて、ボルダリング、クライミングに出会いました。

  • 藤井

    面白いけど、最後まで壁を登りきることができなくて。それで悔しくて、このまま続けようと思いました。

  • インタビュア

    悔しさは、いまも原動力?

  • 藤井

    どのレベルになっても、できないことは多くある。その悔しさが、たぶんいつまでもあると思います。

  • インタビュア

    得意なのは?

  • 藤井

    ある意味、バランスがいいとか、オールラウンダーとか言われます。

  • 藤井

    目指すところは、特徴がない選手。

  • インタビュア

    苦手なのは?

  • 藤井

    動きを同時に行うこと。手足同時に行うとか、反応系、反射神経は苦手。

  • インタビュア

    どんな練習をしている?

  • 藤井

    ホームジムのお店(B-PUMP TOKYO 秋葉原店)は、僕が課題、コースを設定しています。ほかの人が作ったコースもしっかり登っておかないと。

  • 藤井

    大会に対しての練習という意味では、他の人の意図を読み取るのが大事な練習。それを重点的にやっています。

  • インタビュア

    東京オリンピックについて

  • 藤井

    選手として戦える時期に、(オリンピックが)来てくれた。とてもやりがいがあります。

  • 藤井

    「ラッキー!」という感じ。

  • インタビュア

    東京オリンピックへ向けてのライバルは?

  • 藤井

    いま競っている相手と変わらないので、世界中がライバルです。

(2017年11月1日、B-PUMP TOKYO 秋葉原店で取材)

INTERVIEW MOVIE

小武芽生

PROFILE

こたけ・めい/1997年5月18日、北海道札幌市生まれ。小学5年生でクライミングを始める。2013年日本ユース選手権(リード競技・ユースA女子)優勝。2018年春、女子栄養大学短期大学部を卒業し、エスエスケイフーズに入社。

INTERVIEW

  • インタビュア

    スポーツクライミングが東京五輪の追加種目に決まった時、どう思いましたか?

  • 小武

    まずは「やっとここまで来たんだ」という思いです。スポーツクライミングはロッククライミングが発祥で、それがちゃんと認められました。私が始めた時は五輪競技に入るとは1ミリも思っていなかったので、「五輪競技になったんだ」という驚きと喜びが同じくらいありました。

  • インタビュア

    クライミングを始めたのは?

  • 小武

    小学5年生の時です。最初は習い事として何かやりたいなと。他人と違うことをするのが好きだったので、クライミングという、当時は今よりもっとマイナーなスポーツを始めて、そうしたら、どっぷりと漬かってしまいました。

  • インタビュア

    どんなところが魅力的でしたか?

  • 小武

    ただ本当に興味本位でした。もともと運動することが好きで、ジャングルジムとか木に登っていたので、クライミングをすれば、もっと登れるところがあるんだというのがあって。

  • インタビュア

    ご両親や家族の影響で?

  • 小武

    家族は誰もやっていません。なぜか最初の小さな大会で、たまたま優勝して。いつも以上の集中力を出せたんです。「自分はちょっとできるのかも」と、いい意味で勘違いをして、それからいっぱい登るようになって全国大会にも出るようになりました。

  • インタビュア

    それはボルダリングの大会ですか?

  • 小武

    リード競技の大会でした。今でこそ、ユースの大会でもボルダリングがありますが、4年くらい前まではユースはリードしかなくて、リードメインで活動していました。

  • インタビュア

    ボルダリングの魅力は、壁を登りきった時の達成感ですか?

  • 小武

    できなかったことができるようになるという達成感はあります。体のポジションや足を置く位置、気持ちとか本当に小さなことで、登れたり登れなかったりするので、そこを頭で考えて、調節しながら課題に打ち込むというのがすごく楽しかったです。

  • インタビュア

    ほかにもスポーツや習い事を?

  • 小武

    体操とかホッケーとか水泳とかスノーボードとか、北海道なのでいろいろやっていましたが、11年間クライミングをやってきて、今はもう人生の半分以上、それを中心にして生活している感じです。

  • インタビュア

    2010年3月、12歳の時にJFAユース選手権(ユースC女子・リード)に出て5位。そこから選手生活が始まったのですか?

  • 小武

    その前年のジュニア五輪カップで初めて全国大会に出ました。全然決勝に進めなくて、もっと登らないといけないと思ってトレーニングを始めたら、少しずつ成績も出るようになってきました。

  • インタビュア

    2010年8月のジュニア五輪カップ大会(ユースC女子)では2位に躍進しましたね。

  • 小武

    優勝してやるっていう気持ちでしたが、ちょっとまだ優勝までは及ばなかったです。

  • インタビュア

    東京五輪ではボルダリング、リード、スピードの複合種目で戦います。自身の課題は?

  • 小武

    ボルダリングとリードは似ているところが多くて、ボルダリングでの瞬発力やパワーをリードで生かしたり、逆にリードの持久力やテクニックをボルダリングで生かしたりすることがあります。でも、スピードはそもそも日本に専用の壁がなくて、練習できませんでした。私自身も去年くらいからやっと練習を始めました。

  • インタビュア

    スピード競技の手応えは?

  • 小武

    練習は楽しいです。ただ、ボルダリングやリードは自分で考える時間とか、落ち着く時間が割とありますが、スピードは“よーいどん”で登って、おしまい。しかも、陸上競技などと違って、足を滑らせて落ちることがあるのが(精神的に)大きくて。結構プレッシャーはあります。

  • インタビュア

    今の生活拠点は?

  • 小武

    埼玉に引っ越しました。今月、エスエスケイフーズという会社に就職しましたが、競技メインで、遠征も優先させてもらっています。

  • インタビュア

    今月、日本山岳・スポーツクライミング協会の第2期五輪強化選手に指定されました。

  • 小武

    去年の第1期強化選手に選ばれなくて、今年は狙っていたので、「やった」と思いました。

(2018年4月、広島市で取材)

INTERVIEW MOVIE

楢崎明智

PROFILE

ならさき・めいち/1999年5月13日、栃木県宇都宮市生まれ。2020年東京五輪に向けて活躍が期待される一人。2018年2月、椎間板ヘルニアを発症し、ボルダリングジャパンカップを欠場したが、3月の日本ユース選手権リード競技(ジュニア男子)で優勝。三つ上の兄の智亜(ともあ)は2016年、日本人男子初のボルダリング世界王者に輝いた実力者。

INTERVIEW

  • リードで頭角

  • インタビュア

    リードで頭角を現してきました。ボルダリングを含めて今後の戦略は?

  • 楢崎

    リードのイメージがぼくは強いのですが、昔からボルダリングをメインで練習していました。リードはまだ実力不足の感じがします。これからはリードの練習もボルダリングと半々くらいメインでやって、スピードの練習を週1回くらいできたらいいと思っています。

  • 東京五輪

  • インタビュア

    2年後の東京五輪で活躍を期待されています。

  • 楢崎

    東京五輪をゴールとしては見ていません。あくまで通過点の一つとして見られたらいいかなと。五輪までがんばって燃え尽きるのではなくて、競技が好きだからトレーニングをやって、そのタイミングで強いから出られる、という選手になりたい。

  • インタビュア

    東京五輪の追加競技に決まった時の心境は?

  • 楢崎

    「ああ、入ったんだぁ」と。初めはあまり実感がありませんでした。ただ、じわじわとメディアの取り上げ方も大きくなって、競技人口が増えてうれしいです。

  • 兄、智亜の存在

  • インタビュア

    同じ競技者として先行する兄、智亜選手はどんな存在ですか?

  • 楢崎

    兄は一番相性のいいパートナーです。(2016年に)兄が世界チャンピオンになってから、率直なコメントをする人が少なくなってきている感じがします。そこは昔から一緒に登っているぼくが、「そのムーブ(手足の使い方)は違うよ」とか、「どうなの?」とか指摘したりできるので、いい仲だと思っています。

  • インタビュア

    最近はどんなやり取りを?

  • 楢崎

    毎日電話していて、仲がいいです。話す内容はだいたいゲームのことですが。

  • インタビュア

    兄弟げんかは?

  • 楢崎

    昔はしょっちゅうしていました。毎日のように。ただ、少年漫画の読み過ぎか分かりませんが、けんかした後、「いいパンチだったよ」みたいに握手して仲直りしました。

  • インタビュア

    幼い頃から刺激を受けてきたと思います。競技者としての智亜選手はどんな人?

  • 楢崎

    競技者という面では、かなり尊敬できる人です。すごく努力してきたのに、それを表に出さない。みんなから「才能でしょ」と思われがちですが、実はかなりの努力家で、尊敬しています。人一倍考えているので。

  • スポーツクライミングの魅力

  • インタビュア

    ボルダリングの魅力とは?

  • 楢崎

    できなかった課題ができることや、ジムでまったく面識がなかった人と課題を作り合って仲良くなれることがあってすごく楽しい。ボルダリングをやったことがない人は「大変」「危ない」というイメージが大きいと思う。実はジムに行けば、シューズもレンタルできるし、意外とあっさりできることをみんなに知ってほしい。

  • インタビュア

    リードについては?

  • 楢崎

    初心者は高い所まで登るのは怖いと思うので、ボルダリングの練習をまずしてから、リードに挑戦するのがいいと思います。

  • インタビュア

    スピードについては?

  • 楢崎

    クライミングジムに一緒にスピードの壁がある海外と比べると、日本はスピードの壁が少なく、難しいイメージが強くてやらない人が多い。これからはもっとスピード専門の選手が日本に増えてもいい。

  • 複合競技の難しさ

  • インタビュア

    東京五輪では「複合」種目。その難しさは?

  • 楢崎

    五輪競技に決まった時点(2016年8月)では、スピードを一度もやったことがありませんでした。総合力を鍛えないといけないが、リードの練習をしていると、ボルダリングの練習量が落ちたりして、バランスを取るのが難しい。

  • インタビュア

    明智選手にとっての課題は?

  • 楢崎

    一番大事だと思うのは体力アップです。一日のうちに3種目やるのはすごく疲れます。あとは3種目の競技レベルを上げていくことです。

  • インタビュア

    東京五輪の日本代表への意気込みを聞かせて。

  • 楢崎

    (仮に)兄と一緒に出て、一緒に表彰台なんかに乗れたら最高でしょうね。楽しいでしょうね。「ぼくがケガをしたら代わりに出て」って、逆に「兄がケガをしたら代わりにぼくが出てあげるよ」って言っています。

(2018年4月、広島市で取材)

INTERVIEW MOVIE

森 秋彩

PROFILE

もり・あい/2003年9月17日生まれ。茨城県つくば市在住。市内の公立中学2年生。2016年のリード・ジャパンカップ女子を史上最年少で優勝し、17年は「完登」で連覇。2017年9月の世界ユース選手権(オーストリア)の女子リード・ユースB(02、03年生まれ)で優勝、複合で準優勝。好物はから揚げ。身長154センチ、体重42キロ、体脂肪率18%(肩書などは2017年9月現在)。

INTERVIEW

  • インタビュア

    スポーツクライミングを始めたきっかけは?

  • 小学校1年の時、父と自宅近くのボルダリングジムへ体験に行ったら、もともと大好きな木登りと似ていて面白くなって、はまりました。

  • インタビュア

    魅力は?

  • 登り切れた時の達成感ですね。

    大人と子どもも年齢に関係なく、ハンディ無しで、自分の体だけで戦えるところも。

  • インタビュア

    どんなペースで練習している?

  • 学校が終わった後の平日も含めて、週3~4回です。

    平日は学校の後3時間あまり、休日は朝からずっと7~8時間練習しています。

  • 筋肉をつけたいので、毎朝プロテインを飲んだり、食事でタンパク質を多めに取ったりしています。

    自宅でストレッチや筋トレもやっています。

  • インタビュア

    種目で得意なのは?

  • リードは持久力に自信があり、一番得意ですが、好きなのはボルダリング。

    リードは試合で一度落下すると終了ですが、ボルダリングはミスしても続けてチャレンジできるので楽しいです。

    ゆっくりした動きの方が好きですが、スピードは瞬発系で、最近やり始めたばかり。

  • インタビュア

    得意技やもっと上手くなりたい技は?

  • 得意なのは、ホールドにかかとをかける足技の「ヒールフック」です。

    うまくなりたいのは、「ランジ(飛ぶ動き)」です。

    走って、ダイナミックにやりたい。

  • インタビュア

    あこがれの選手、ライバルは?

  • 同世代には強い選手が大勢いるので、その中で競い合い、さらに強くなりたいです。

  • インタビュア

    2020年の東京オリンピックへの意気込みは?

  • ワールドカップに出場し、世界で活躍したいので、そのためにもオリンピックに出られるといいと思います。

(2017年9月28日、ロッキーつくば阿見店で取材)

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競技紹介・みどころ

競技紹介

楢崎智亜選手

 1989年に初めて正式な国際大会(ワールドカップ)が開催され、世界選手権が91年にスタートした、まだ歴史の浅い競技。自然の岩場を登るロッククライミングのうち、道具に頼らず自分の手足だけを使って挑むフリークライミングがルーツだ(落下時に安全を確保するためのロープなどは装着する)。

 国際スポーツクライミング連盟(IFSC)認定の公式種目は、「ボルダリング」「リード」「スピード」の三つ。岩場に模した人工的な壁を、突起物(ホールド)を手掛かりに登り、ボルダリングは課題達成度(登り切った回数)、リードは到達した高さ、スピードは時間をそれぞれ競う。

 東京オリンピックでは、1人の選手が3種目すべてを行い、総合成績で競う「複合競技(コンバインド)」の形で開催される。2016年の世界選手権男子ボルダリングで楢崎とも選手が日本人初の優勝をするなど、日本選手はボルダリングやリードでは世界でもトップクラスの活躍を見せている。一方、スピードは国内競技施設の整備が遅れるなど、日本選手があまり得意としない。スピードを強化し、総合力を向上させることが期待されている。そして、今後は五輪競技方式の「コンバインド」種目がより注目されていくことになるだろう。

 日本山岳・スポーツクライミング協会(JMSCA)によると、スポーツクライミングの競技人口はボルダリングを中心にここ数年で急増し、愛好者推計60万人。ジムは2017年3月時点で全国476か所に及ぶという。

※東京大会のルールや試合形式の詳細は未定(2017年8月現在)。

みどころ

1 「ボルダリング」~体を使ったチェス

2017年5月に、東京・八王子で開催された「IFSCクライミング・ワールドカップ」

野口啓代(あきよ)選手

 高さ5メートル以下の壁にホールド(突起物)を設け、最大12手程度の複数のコース(課題と呼ばれる)を制限時間内にいくつ登れたかを競う。個人戦。ゴールホールドを両手で触り安定した姿勢を取れば「完登」。ロープやハーネスは装着せず、地面には落下時の衝撃吸収マットが敷かれている。両手両足を置く場所や姿勢を考えながら動く頭脳プレーだ。「体を使ったチェス」とも言われる。

 予選と準決勝までは、「5分間の競技」と「5分間の休憩」を交互に繰り返す「ベルトコンベア方式」が一般的。決勝は、1課題に対して全選手が「4分間の競技」を終えた時点で次の課題に移る「ワールドカップ決勝方式」のことが多い。どんな課題かは試合当日に初めて知る。他の選手のトライを見ることはできない。

上位に入るには、少ないトライ数で登ることも重要
ボーナスが勝敗を分けることも

※ボーナス(ポイント)…各ルート中に設定されているボーナスホールドを保持した時につくポイントのこと

スコア表の見方

2 「リード」~持久力と戦略が勝敗を左右

リードの壁(2017年4月、東京都昭島市のモリパークアウトドアヴィレッジで)

森秋彩(あい)選手

 高さ12メートル超の壁につくられた最長60手程度のルート(コース)を、制限時間でどの高さまで登れたか(到達高度)を競う。個人戦。

 選手はロープとつながったハーネスを装着し、途中の支点にロープをかけて安全を確保しつつ登り、最後の支点にロープをかけると「完登」となる。

 最も長い距離を登る種目のため、「持久力」が勝敗を分ける。最初から最後まで全力で登り続けられる距離ではないため、最小限の力で重力に打ち勝ち、自身の高度を上げていく「テクニック」や無駄な動きを省き、長い距離の中でも自身の動きをいかにコントロールしていくかなどの「戦略性」も問われる。

 墜落、時間切れ、反則の場合、その時点での高度が到達高度になる。ルートには、下から順番にホールドに番号がふられており、何番目まで到達できたかの数字がスコアとなる。基本的に他の選手のトライを見ることはできないが、予選ではあらかじめ実際にもしくはビデオでデモンストレーションを見ることができる。

勝つためには、一手でも先に到達すること
カウントバックにより準決勝での順位で勝敗が決まることも

※カウントバック…前ラウンドでの順位が高い選手を優先する仕組み

スコア表の見方

3 「スピード」~高さ15メートルの世界記録は5秒台

高さ15メートルのスピード種目の壁。ボルダリング、リードと合わせ3種目の壁すべてを常設した施設は国内で初めてという(2017年4月、東京都昭島市のモリパークアウトドアヴィレッジで)

 高さ15メートルまたは10メートルの壁で、あらかじめホールドの配置が周知されているコースをどれだけ速く登るかを競う。ロープの支点は終了地点付近のみで確保するトップロープスタイルで、選手はこのロープとつながったハーネスを装着して登る。並んだ2人が競う、1対1の戦い。

 選手たちは、同じルートで何度もトレーニングを行い、動きを体にしみこませている。2人のクライマーが隣り合わせで登り勝ち抜き方式で競うため、対戦相手からのプレッシャーをはねのけ、どれだけ自分の登りに集中してベストタイムを出すか、という心理戦でもある。

 2017年7月現在の世界記録(15メートル壁=4、5階建のビルに相当)は、男子が5秒48(レザー・アリプアシェナ選手、イラン)、女子が7秒32(ユリヤ・カプリナ選手、ロシア)。10メートルの壁は現在、国際大会では使用されていない。

「SPEED STARS 2018 スピードクライミングカップ」(2018年4月、東京都昭島市のモリパークアウトドアヴィレッジで。昭和飛行機工業株式会社主催)から

2020×You

なぜか高い山がない千葉が「クライミング王国」だった

千葉県フリークライミング協会会長・目次めつぎ俊雄さん(66)

プロフィル

1952年、松江市生まれ。名古屋大農学部卒業後、千葉県で生物の高校教員に。同県内の佐原女子(現・佐原白楊)、船橋西(現・船橋啓明)、船橋東、幕張総合の各高校に赴任し、ワンダーフォーゲル部や山岳部の顧問を務める。2018年春からは20年東京大会に向け、スポーツクライミング普及に取り組む。

幕張総合高校のクライミングウォール。同校ワンダーフォーゲル部員が使うだけでなく、各種大会や千葉県フリークライミング協会のイベントが頻繁に開催されている

 この壁(千葉県立幕張総合高校の中にあるクライミングウォール)は、2010年に千葉国体が(県内の)印西市で開催される4年前の06年に、選手の強化練習用としてここに設置されたんです(※当初はリードとボルダリングの壁のみ。17年にスピードの壁も完成)。ここで登るために、7歳から77歳までやってきますよ。

山登りが趣味で登山部顧問に

北アルプス鹿島槍ヶ岳で(右端、30歳くらいのころ)

八ヶ岳で(後列一番右、40歳ごろ)

 学生時代は柔道部や美術部に入っていたこともありますが、趣味で山登りをしていました。23歳で千葉県の高校教員になった後、ずっとワンダーフォーゲル部や山岳部の顧問として生徒に山登りやクライミングの指導をしてきました。授業で生徒に呼びかけてワンゲル部を創設したところもあります。指導といっても、生徒と一緒にテント担いで寝泊まりして自分も登ります、それが性に合っているんですね。

生物の教諭だった(1992年1月、船橋東高校で)

 ここ(の「小中学生体験クライミング」)にも、高校生だった時に教えた子がお母さんやお父さんになって自分の子どもを連れてくることがよくあります。今日も来ていますね。

 山登りといっても、千葉県には高い山がなく(県内最高峰が標高408.2メートルの愛宕山、47都道府県で最も低い最高峰)、夏合宿などは隣の東京を越えて南アルプス、北アルプスあたりまで遠征です。赴任3校目の船橋東高は山岳部の生徒ががんばって全国高校総体(インターハイ)登山競技に男子が6回、女子が4回出場し、千葉県としては初めて入賞したりしました。最高位は男子が準優勝、女子は3位でした。

習志野の“壁”誕生が契機

埼玉・秩父の岩場でロッククライミング(40歳代半ばごろ)

 自分では岩登り(ロッククライミング)も趣味で始めていた23~24年前ですか(1994年10月)、隣の市の習志野市立東部体育館に本格的な人工のクライミングウォールができたんですね。利用開始にあたってクライミングを指導できる講師が何人か必要で私も声をかけられ、参加することになりました。

 そこで自分もスポーツクライミングを始め、高校の生徒たちも連れてきて人工壁を登るのを体験させました。そうしたら非常に興味を持つ生徒が多かったので、「これは部活動に取り入れる意味がある」と。

習志野市立東部体育館の壁を登る(40歳代)

 山登りの遠征に出かけない時に、日常の部活は極めて単調なんですよ(笑)。知識や技術などの勉強はしますが、後は荷物を背負って階段の上り下りとか、ランニングとか。野外の岩場はもちろん魅力ありますが、そうしょっちゅう行ける場所ではなく、人工の壁は日常的にトレーニングをしていく場所としては非常にいいところ。そう、最初は外に行くためのトレーニングの場としてとらえていましたね。週1回くらい、生徒らを習志野の壁に連れて行くようになりました。

 この後、クライミング界では茂垣敬太くん、松島暁人くん、渡辺数馬くんなど「ユース第1世代」が誕生してきました。茂垣くんは国体で私が監督を務めた千葉県成年男子のクライミング(リード)で中心選手として、高知、静岡、埼玉、岡山の4年連続と秋田の計5回優勝しました。その影響を受けて渡辺くんら若手選手たちが活躍し、千葉県は国体男女総合優勝5回を果たして「クライミング王国千葉」と呼ばれる時代を築くことになりました。みんな、今は30歳代でしょう、自分でジムを経営したり、大きな大会でルートセッターをしたり、次世代を育てる立場になってきています。

 船橋東高では2000年に山岳部女子の小田敦子、榊原佑子が「アジアユース・スポーツクライミングチャンピオンシップ」に出場してそれぞれ1位、2位に輝きました。

シンプルな競技、今や大人気

トレーニングとしてランニングを行ううち、マラソンに何度か出場した(2000年ごろ、千葉・旭市飯岡)

 2001年、49歳の時に県立幕張総合高校に異動となりました。船橋東高の山岳部男子が、岐阜開催の全国高校総体で準優勝した翌年のことです。この異動を機に、私は部活動指導の重心を登山からスポーツクライミングに移しました。登山行動中の体力や歩行技術、テントの張り方や天気図の書き方まで審査される登山競技に比べると、競技としてシンプルでわかりやすいですから。

 異動当初休部状態だったワンゲル部をテコ入れし、今の壁ができるまでの数年間は、生徒たちと一緒に作った屋外の小さな壁で練習していました。今はもう部員数は120人近いですよ。うち女子が3、4割かな。この壁の存在を知る人が増えたせいでしょうか。

 その後、県内ではここで練習し、育って世界に出ていく若手もどんどん出てきました。

 私自身は60歳の定年、その後5年間の再任用、1年間の非常勤講師を経て、2018年3月でここを“卒業”しました。この春からは千葉県のスポーツエキスパートという制度、つまり助っ人で月2~3回、ここ幕張に来て生徒を指導しています。

「クライミング王国千葉」と指導者

 県内の自宅敷地にもウォールがあります(笑)。ウォールを手作りする時代からやってきたので、(スポーツクライミングがオリンピック競技になったのは)正直驚きでした。ぜひ、オリンピックを機にさらに国内でクライミングが広がってほしいです。

 クライミング選手の高校生育成に関しては、千葉は国内では一番早かったと思います。千葉工業高校で先生がコンクリートの電柱を支えにして壁を作って県大会を始めましたし、高校フリークライミング研究会というのを立ち上げたり、県高校総体の競技にいち早く入れたり。ただ、層は厚いのですが、今は小学生くらいからクライミングを始める人が多いので、高校から始めてトップになるのはなかなか大変です。民間のクライミングジムもたくさんできて、そこで開設したスクールからどんどん優秀な選手が、都市圏だけでなく地方からも生まれる時代になりましたね。

 将来的には、たとえトップ選手になれなくても競技を経験して好きになった人が指導者になるのが、この競技が発展していくには欠かせないことだと思います。たとえばサッカーは活躍した選手が指導者に(なって)“循環”している。それがまだクライミングでは極めて少ない。

 私自身は40歳代からクライミングにかかわったし、選手経験があるクライミング指導者は国内では30歳過ぎの人が何人かいる程度でまだまだ少ないです。

やはり登りきった時の達成感

リードの壁を登る

 クライミングの魅力ですか? 登っていくというのは非常に楽しいことですよ。どの年齢になっても訓練することによって少しずつレベルが上がっていくし、登りきった時に達成感がある。ほかの競技も同じとは思うけど、その達成感は非常に大きくて、クライミングは本当にそれではまる人が多い理由の一つと思います。一生懸命やればやるだけの成果が出てくる種目ですしね。

 体が動く限り自分でも続けていきたいと思います。

 (3種目の中では)リードから始めているので、リードが一番やってて楽しい。ボルダリングは瞬発系で場合によっては無理な動きもやるので、高齢になると体への負担が大きいんです。リードがおすすめ(笑)。

 スピードは自然の岩場では行わない競技、特殊な競技です、ただ、登って楽しいという反応もありますし、(日本では)これからの競技ですね。

 (2015年から)「全日本マスターズクライミング選手権大会」が始まりまして、今年で4回目です。昔の“レジェンド”などが集うシニア世代の大会です。私はいつも裏方(主催者側)なのですが、2回目に出場しました。前日まで準備で、1本目は完登しましたが、2本目ではつるっと落ちました。完登した喜びと、自分の力を出せなくて落ちた悔しさで、久々に選手の気持ちがわかりました(笑)。

世界の頂へグイグイ

伊藤ふたばさん

プロフィル

2002年4月生まれ、盛岡市出身。16年のボルダリング・ジャパンカップで4位に入ると、17年の同カップを14歳9か月で史上最年少優勝。リードの日本選手権では4位に入った。盛岡市立松園中3年。1メートル60、44キロ(2017年7月時点)。

 すらりと長い手足を存分に使い、難しい課題をクリアする姿は、ボルダリングのワールドカップ(W杯)で4度総合優勝に輝いた野口啓代(あきよ)(茨城県連盟)を連想させる。「啓代ちゃんみたいな動きがしたいなと練習していたら、似たような動きになった」と笑顔を見せる。

 一躍注目を浴びたのが、その野口を上回り、最年少優勝を果たした今年1月のボルダリング・ジャパンカップだ。長身で軽量という恵まれた体格に高い柔軟性が合わさり、年上の世代と同等に戦うだけの実力を持つ。

 スポーツクライミングと出会ったのは、小学3年の頃。父・崇文さんと一緒に自宅近くの施設に行ったのがきっかけ。元々、ジャングルジムで遊ぶなど高い所が大好きだったこともあり、「やっていくうちに、登れた時の達成感がすごく楽しい」と夢中になった。

 クライミング少女が狙うのはもちろん東京五輪。ボルダリングに加え、到達高度を争う「リード」、速さを競う「スピード」の3種目の複合で行われる難しさはある。それでも、「追加種目に決まった時は実感が湧かなかったけど、出るからにはメダルを取りたい」。伸び盛りの15歳が狙うのは、世界の頂だ。(上田真央)