KARARE 空手

アスリート

植草歩

PROFILE

うえくさ・あゆみ/1992年7月25日、千葉県八街市出身。柏日体高等学校(現・日体大柏高等学校)から帝京大学へ進学。香川政夫師範に師事する。2015年、全日本空手道選手権大会(個人組手)で初優勝。16年、17年と3連覇を果たす。強さだけでなく、モデルで歌手のきゃりーぱみゅぱみゅに似たルックスでも注目されている。

INTERVIEW

  • 空手との出会い

  • インタビュア

    空手と出会う前はどんな子どもでしたか?

  • 植草

    ままごとが好きで、姉と一緒にお人形で遊んでいるような子どもでした。小学生になると、近所の男の子と外で走ったり、体を動かすのが好きな子になっていました。体育の授業もすごく好きでした。人と競争し、勝つためにがんばることが好きでした。

  • インタビュア

    小学3年生から空手を始めたそうですね。

  • 植草

    毎日一緒に遊んでいた幼なじみの男の子に誘われて、道場に顔を出したのです。「ミット打ちをしてごらん」と先生に言われてやってみたら、パーンとはじける音がすごく気持ちがよくて、父に「私は空手がやりたい」と伝えました。

  • 学生時代

  • インタビュア

    その後、中学、高校と空手を続けてこられました。

  • 植草

    (空手を続けられる環境を求めて)いろいろな高校を訪ねました。最終的に柏日体大高校に進学することを決めて、高校でぐんと成績が伸びた感じです。

  • インタビュア

    その頃から空手でも一番を目指していましたか?

  • 植草

    はい。でも、チャンピオンになりたいと思いつつも、負けたらどうしようとか、こうやって負けちゃうんじゃないかと、ネガティブな思考をしてしまう選手でした。

  • インタビュア

    それでも続けた空手の魅力とは?

  • 植草

    技を極めることや、相手がこう来るからどうするという(技の)工夫が好きで、どんどんはまりました。下の学年に強い子たちが入ってきてからは、常に勝たないと後輩を指導できないと思い始めてから成績が伸びるようになりました。人間的な成長とともに、空手の成長もできたと思います。

  • 空手家として

  • インタビュア

    空手人生を歩もうと決めたのは?

  • 植草

    大学です。高校でインターハイ3位になって、国体も優勝できました。空手の雑誌に載る、周りから注目される、大学の推薦が来る、という自分の中の目標がだいぶ達成されて満足していました。体育の先生になりたかったのです。でも、帝京大学から声をかけていただきました。親や高校の先生方から「帝京大学は日本一だから行くべきだ」と言われて、進学することに決めました。

    帝京大学には日本一、世界一の先輩がいて、自分が見たことのない世界でした。みんな意識が高くて、常に一番を目指しているチームで、最初はすごく圧倒されました。帝京に入ってから世界一、日本一を目指す選手になれたと思います。

  • インタビュア

    自分の人生にとって空手とは?

  • 植草

    私の人生を本当に大きく変えてくれました。空手をやっていなかったら、普通の女の子みたいにバイトして、ダイエットして、おしゃれして、という方に進んで、きっと体育の先生になりたいとも思わなかったのでは。

  • 東京オリンピック

  • インタビュア

    空手が東京オリンピックの追加種目に決まった時、どう思いましたか?

  • 植草

    やっと、オリンピック(種目)になったんだなと。中学、高校の頃、何度かオリンピック種目に入るチャンスがあったことは知っていました。テレビや雑誌で見てきた空手の選手がオリンピックに出てくれないかなって思って、子どもの頃はウキウキしていました。今その立場に自分が立っていて、そういうふうに思っている子どもたちはたくさんいると思うので、その期待に応えたいと思います。

  • インタビュア

    東京オリンピックに向けた計画は?

  • 植草

    技のバリエーションを増やすため、いろいろな技を試したり、自分の視野を広げたりしたいです。大会に出て(代表選考に必要な)ポイントをどんどん取って、オリンピックに向けて確立させていくというのが、今のざっとした目標です。

  • インタビュア

    得意技は?

  • 植草

    中段突きです。でも、みんなにばれているので、それを生かすために、もっとほかの技を増やしていきたいです。足技を使う他の競技を空手に生かしていかないといけないと思っています。

  • プライベート

  • インタビュア

    強さだけでなく、ルックスも注目されていますね。

  • 植草

    最初は恥ずかしい気持ちでいっぱいでした(笑)。でも、ほめられて嫌な気持ちになる人はいないと思うので、すごくうれしいです。(注目されることで)多くの人に空手を知ってもらうきっかけになれればいいと今は思っています。

  • インタビュア

    オフの日はどう過ごしていますか?

  • 植草

    おしゃれが大好きです。お化粧したり、髪の毛をおろしたりすることで、ふだんと違う自分になれると思っています。はやりのお店やイベントに行ったり、洋服を買いに行ったりすることが、私にとってリフレッシュになっています。(笑)

  • インタビュア

    植草選手のファンの方や小さいお子さんたちに一言お願いします。

  • 植草

    私は大学時代、空手で勝たなきゃ、勝たなきゃと自分自身を追い込んでいたところがありました。社会人になって気づいたのは、やはり何でも楽しんでやる方が人生は楽しい。しんどい時も、つらいと思うより、どうすれば楽しく乗り越えられるかを考えたら、空手もしんどくなくなりました。どんなことでも楽しむことが、人間として一番輝くきっかけになるのではないかと思います。空手だけでなくても、いろんなことをみんなに楽しんでやってもらいたいなと思います。

(2017年8月 東京都内で取材)

INTERVIEW MOVIE

喜友名諒

PROFILE

きゆな・りょう/1990年7月12日、空手発祥の地、沖縄県に生まれる。興南高校から沖縄国際大に進学。空手家の佐久本嗣男氏に師事する。2014、16年、世界選手権優勝。全日本選手権は2012年から6連覇し圧倒的な強さを誇る。

INTERVIEW

  • 友だちの影響で道場へ

  • インタビュア

    どんなきっかけで空手を始めましたか?

  • 喜友名

    5歳の頃、幼稚園で一番仲がよかった友だちが空手をやっていたので、両親に「自分もやりたい」と伝えて、それで始めました。両親からは「やるんだったら最後までやりなさい」と言われました。試合で優勝して楽しかったこと、道場に遊びに行く感覚で楽しく習っていたことが、空手を続けられた一番の理由だと思います。今は、空手をやればやるほど歴史も知りたくなり、空手の奥深さを研究することもとても好きなので、劉衛(りゅうえい)流の佐久本嗣男先生の空手を学びながら、自分の空手を磨いていくことに楽しさを覚えます。

  • 激しい稽古

  • インタビュア

    空手選手として人生を歩んでいくと意識しだしたのはいつ頃?

  • 喜友名

    中学、高校の時には世界チャンピオンになりたい、それまでは絶対に続けようと思っていました。将来は、自分の道場を持ちたいと考えていました。

  • インタビュア

    稽古熱心で有名です。ふだんの練習で心がけていることは?

  • 喜友名

    基本を大事に、常に限界を超えるように毎日稽古しています。

  • インタビュア

    思い入れのある形は?

  • 喜友名

    「アーナンダイ」(※)という形をもっともっと研究して奥深さを知り、自分のものにしていきたいと思っています。
    ※アーナンダイ:劉衛流で最高レベルとされる形の一つ

  • インタビュア

    「アーナンダイ」の特徴は?

  • 喜友名

    宗家が中国に渡って中国の達人から武術を学び、それが劉衛流の空手となったので、中国拳法の動きが入っています。ほかの流派も体さばきをして攻撃に移ることがあると思いますが、それを形の中でも表現しているのは、恐らく劉衛流ぐらいではないかと思います。その違いも楽しいところだと思います。

  • インタビュア

    形の追究には終わりがないと聞きますが?

  • 喜友名

    形には自分自身の精神面も出てくると思います。本当にその時々で違います。究極の形というのは、単純に言えば誰よりも速く、強く、正確に、ということです。それを自分自身でどれだけ磨き上げていくか、どこまで行けるか楽しみにしています。

  • 東京オリンピック

  • インタビュア

    競技空手の選手として今の目標は?

  • 喜友名

    もちろんオリンピックで金メダルを取ることが一番の目標です。

  • インタビュア

    東京オリンピックの追加種目に決まった時はどう思いましたか?

  • 喜友名

    「よっしゃー」という気持ちでした。まずは出場権を必死で取りに行きます。絶対に誰にも渡さずに3年間しっかり過ごしてオリンピックで金メダルを取る、それが今の意気込みです。オリンピックで空手の形とはこういうものだというのをアピールするのが、ほかの選手でなくて自分であるように、必死に戦って金メダルを勝ち取りたいと思います。

  • 空手家として

  • インタビュア

    喜友名選手にとって空手とは何ですか?

  • 喜友名

    今は(道場の)指導者として自分の職業にもなっています。自分の道を空手で作ってきました。空手を通していろいろな人と出会えたり、精神面や生活面のことも学べたりするので、自分の「道」だと思います。

(2017年8月、東京都内で取材)

INTERVIEW MOVIE

競技紹介・みどころ

 空手は、オリンピック競技候補に過去3回挙がるも採用されなかったが、2020年東京大会の地元開催枠競技として正式に採用された。日本勢のメダルラッシュも期待できる競技だ。

競技紹介

沖縄発祥の「突き」「蹴り」の競技

 空手の最大の特徴は「突き技」「蹴り技」だが、「投げ技」「固め技」などもある。

 発祥は沖縄。かつての琉球王国で「手(ティー)」と呼ばれた格闘術が、中国や日本の武術の影響を受けながら独特な進化をした。当初は、仮想の敵を相手に組み立てられた「形」という一連の動きを、一人稽古で繰り返し練習し、身体の鍛錬と「形」に込められた技術を習得していた(現在も源流の「沖縄の空手」が盛んだ)。2人で相対する「組手」も、もとは「形」の一種だ。

 戦前、本土に伝わり、主に大学で「形」の鍛錬が、続いて、2人で行う「組手」の練習(組手稽古)が広まった。「組手」では攻撃する部位や技術を制限し、突きや蹴りも相手の体に当たる直前で止めることとした。戦後の連合国軍総司令部(GHQ)による武道禁止政策でも「形」の鍛錬が中心の空手道は禁止されず、空手道を学ぶ学生はさらに増えた。

 1957年(昭和32年)には剣道のルールを参考に、全国規模で初の空手競技大会となる第1回全日本大学空手道選手権大会が開催された。これを機に、形を1人で演武し、その習熟度を競う「形競技」、突き・蹴りを中心として2人で打ちあう「組手競技」という現在の形がほぼできあがり、世界各地にも伝えられ、人気武道となった。

オリンピックは「伝統派空手」方式

 空手道には数多くのグループや流派がある。突きや蹴りをコントロールし、体にコンタクト(接触)する直前で止めることをルールとした空手は、「伝統派空手」と呼ばれる。特に頭部へ突きや蹴りを入れることは危険、との考えからだ。2020年東京オリンピックで行われるのは、この伝統派空手だ。

 伝統派空手の四大流派「松濤館流・剛柔流・糸東流・和道流」が中核となり、1964年(昭和39年)、オリンピック競技を目指すために全日本空手道連盟(全空連、JKF)が設立された。その後、全空連を母体に組織された世界空手連盟(WKF)が、世界レベルでのルール統一やオリンピック競技採用を実現させる活動を進め、現在は2020年東京大会に向け、競技運営やルールの再整備などに取り組んでいる。WKFには190を超える国・地域が加盟し、世界中で約1億3000万人の愛好者がいるという。

 一方、防具やグローブを着けて一部の当て身を可能としたり、体の各部位を徹底的に鍛えることで、実際に直接打撃で勝敗を決したりすることをルールとする空手もある。頭部を除く直接打撃ルールなどを採用するのが「フルコンタクト空手」だ。

中学校の武道必修化でも採用

 国内には数多くの空手道場があるが、学校教育の一環としても、小・中・高校生や大学生が、大半はWKF準拠の全空連ルールに従って「競技(スポーツ)空手」を学んでいる。2012年(平成24年)4月からは全国の中学1、2年生の保健体育で「武道必修化」がスタートし、柔道や剣道と並んで空手を習う中学生も増えつつある。

みどころ

みどころ 1

「組手競技」と「形競技」

 2020年東京オリンピックで、WKFルールで行われる空手競技は1対1の「組手競技」と通常は1人で演武する「形競技」に分かれる。
(写真の技は必ずしもポイントを獲得した場合のものではありません)

「突き・蹴り・打ち」を早く、正確に力強く…組手競技

 相対する2人の選手が自由に攻め合い、「突き・蹴り・打ち」をコントロールし、早く、正確に力強く極めるかを競う。

 攻撃部位は「上段(頭部、顔面、頸部)」「中段(腹部、胸部、背部、脇腹)」で、どの部位にどういう技を仕掛けたか、その難易度の違いなどでポイントが異なる。

  • 一本

    「一本」3ポイント (1)上段への蹴り(2)相手を倒しての突き

  • 技あり

    「技あり」2ポイント (1)中段への蹴り

  • 有効

    「有効」1ポイント (1)上段への突き、または打ち (2)中段への突き

試合時間は男子3分、女子2分

8ポイント差がつくか、試合終了時にポイントが多い方が勝ちとなる。同点の場合はポイントを「先取」した方が勝ち。「先取」ポイントがなかった場合は審判5人で判定する。

「受け・突き・蹴り・投げ・固め」は正確か効果的か…形競技

 仮想の敵に対する攻防を演武し、形として編まれた「受け・突き・蹴り・投げ・固め」などの技を正確に効果的に行えるかを競い合う。WKFが認定する「形リスト」から選んで演武する。それぞれの形には名称があり、演武直前にその名称を呼び上げる。形に定められた一連の動きについて、正確さ、力強さ、スピード、リズム、バランス、極めを競う。審判5人が判定する。(各流派に「型」と「形」の表現があったが、全空連で「形」に統一した)

みどころ 2

2020年東京大会では8種目で競う

 2020年東京オリンピックでは、組手競技が男女各3階級(体重別)の6種目、形競技は階級分けがなく男女2種目の合計8種目で争われる。出場枠は各10人。

 各国・地域の代表はそれぞれ1人が上限。日本は開催国である特権として、全種目に出場できる見込みだ。

 階級の体重区分は、男子は75キロ超級、75キロ級、67キロ級。女子は61キロ超級、61キロ級、55キロ級。

 「組手」は日本をはじめ各国の実力が拮抗きっこうし、イラン、フランス、エジプト、ウクライナ、ブラジルなどの選手も手ごわい。「形」は、日本の得意競技だが、スペイン、イタリア、トルコ、フランスなども迫っている。
(2018年3月末現在)

(写真は宮崎真・読売新聞写真部記者撮影)