山田町

 津波とともに火災が発生したが、消防車ががれきに行く手を阻まれ、水の確保が困難だったことなどで、被害が広がった。漁港の裏には、町を守る形で新しい防潮堤の建設が進んでいる。JR山田線の宮古—釜石間は、三陸鉄道に移管されることが決まっている。2018年度の復旧を目指し、15年3月に工事が始まっている。

データ
岩手県山田町
震災前後の人口の変化(国勢調査から)
2010年18,617人
2015年速報値15,826人
被害状況(町、県まとめ)
死者数679人
不明者数145人
住家被害(半壊以上)3,167棟
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店舗続々オープン やまだ商店街 復興へ前進 ヘアサロンが再開

2015年12月12日掲載

新しい商店街での再出発を喜ぶ湊さん(山田町中央町で)

 東日本大震災で被災した山田町の「新生やまだ商店街」(山田町中央町)で、店舗が次々とオープンしている。被災した店舗で初の営業再開を果たしたヘアサロン「カットインみなと」の湊正美社長(67)は「山田の復興が進んでいる姿を先陣を切って示したい」と意気込んでいる。(高橋学)

 震災前、同町中央町の国道45号沿いにあった自宅兼店舗は津波で2階天井まで浸水した。経営していた6店舗のうち、沿岸部の山田町と宮古市にあった計5店舗が被災した。湊さんは家族と高台に避難し、中心部から離れた保育園に身を寄せた。震災が起きた日は、県理容生活衛生同業組合の理事長に内定して3日目。「心が折れている場合じゃない。何としてでも再開してみせる」と心に誓った。

 再びハサミを握ったのは、震災の約2週間後、避難所の住民を散髪するボランティアを頼まれたのがきっかけだった。しかし、手元には仕事道具がなかった。「店は全壊し、残されたのは技術だけだった。『カット道具さえあれば役に立てるのに』と悔しかった」

 翌日、被災した店に初めて足を踏み入れた。2階のがれきの中からハサミやクシ約100点を拾い集め、浸水を免れた3階に残っていた古い研ぎ器で丸1日かけてハサミを研いだ。

 避難所近くの集会所で、同業の3人と3か月間で約300人の髪を切った。住民の表情を明るくすることは、自分の心の糧にもなった。

 ボランティアを終えた2011年6月、町内の仮店舗と宮古市内の3店舗で営業を再開した。髪を切り終わると、手をぎゅうっと握り締め、「ありがとう」と涙を流す高齢女性もいた。「見た目だけではなく、カットで心の中も晴れやかにすることが自分の使命だ」と再建への思いを強くした。

 今月9日にオープンした店舗は、以前の場所から数十メートル離れた場所の木造2階建て。車椅子の人や高齢者が楽に入れるように入り口の段差をなくした。「子供からお年寄りまで、みんなに喜ばれるサロンでありたい」。3色のサインポールが再び回り出した。

◆行政と民間2か所 中心部で街づくり

 山田町中心部では、行政と民間による街づくりが2か所で進んでいる。

 町は、JR陸中山田駅の周辺で街づくりを進める。3・3ヘクタールを約3メートルかさ上げし、10店舗が入る共同店舗棟、図書館機能のある交流施設などを備えた区域をつくる。被災した中心部などに商業施設を整備する「まちなか再生計画」をまとめ、3月に県内で初めて復興庁の認定を受けた。

 一方、「新生やまだ商店街協同組合」の21事業者は、交通量の多い国道45号沿いでの早期再建を目指し、町の進める計画とは別の道を歩んだ。地盤沈下した約50センチ分がかさ上げされた0・43ヘクタールの土地に、11月下旬にコンビニ店が第1号としてオープン。12月中に4店舗、来年6月頃までに全9店舗が開業する見込みだ。

 昆尚人理事長(41)は「駅前の街と連携し、一緒ににぎわいを生み出していきたい」と話している。

アカモク 復興後押し 養殖の邪魔→「健康に効果」

2015年10月29日掲載

カキの養殖施設に付着したアカモクをとる漁師ら。春から夏前にかけてがシーズンだ(山田町で)

 肥満抑制など健康効果に関心が集まる海藻「アカモク」の生産地として、東日本大震災の被災地が注目を浴びている。漁業者に邪魔者扱いされてきたが、外食産業が注目し、全国展開するスーパーでも取り扱いが始まっている。被災したカキ養殖業者らの「副業」にもなり、復興を後押ししている。(福元洋平)

 カキの養殖施設などに付着して繁殖するアカモクは、スクリューなどにからみつき、海中に入る日光を遮る邪魔物だった。宮城県では「ジャマモク」などと呼ばれている。アカモクもとっている山田町の漁師柏谷智康さん(41)は「昔は畑の肥やしにしていた」と笑う。

 カキ養殖で知られる山田町では、津波でカキ養殖施設約4000台が流失した。徐々に復旧したが、町によると2014年度の生産額は約3億3900万円で、震災前(約6億5200万円)の半分ほどだ。カキの生産が落ち込んでいた時、脚光を浴び始めたのがアカモク。テレビや雑誌で抗肥満効果が取り上げられ、急速に需要が増えた。

 岩手アカモク生産協同組合の宮古市の加工場では、従業員4人が働いている。震災前は月間出荷量が300キロほどだったが、現在は1・5トン程度。日産1000パックの生産能力に対し、約5倍の引き合いが来ており、大手スーパーなどの注文に供給が追いつかない状態となっている。従来は、山田町のみでとっていたが、今年から大船渡市や普代村などの漁業者からも仕入れるようになった。組合代表理事の高橋清隆さん(42)は、山田町にあった組合の事務所と自宅を津波で失ったが、「ようやく認めてもらえてうれしい」と話す。

 アカモクに詳しい北海道大の宮下和夫教授(水産科学)によると、アカモクは肥満抑制に効果があるフコキサンチンを豊富に含み、その量はワカメの3~4倍、コンブの10倍以上にのぼる。アカモクから抽出したサプリメントも販売されている。太平洋側では岩手、宮城県が一大産地となっている。

 外食産業も注目する。「日高屋」などを展開するハイデイ日高(さいたま市)は、今年4月から新たに「とんかつ かつ元」の出店を始め、アカモクの小鉢をメニューに加えた。同社経営企画部は「健康効果が高いと、以前から社長が目をつけていた。トンカツとの相性もよく、お酒のつまみにもなる」と関心を寄せる。全国でレストランを展開する「ひな野」(仙台市)は10年以上前からアカモクを提供している。担当者は「『どこで買えるのか』という問い合わせが関西を中心に増えている」と話す。

粘り気のあるアカモク

〈アカモク〉
昆布やワカメと同じ褐藻類で、日本各地の沿岸に生息する。10メートル近くにまで成長し、粘り気がある。東北地方では「ギバサ」などと呼ばれ、秋田、山形、新潟県などでは郷土食として食卓に並んできた。船のスクリューにからんで漁業者に嫌われ、ほとんどの地域では利用されていなかった。