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よしのや 職人魂で挑む 深い味わい <長野>

 長野市内を流れる犀川沿い。倉庫群の中の出荷場のようにも見える建物で、風味豊かな日本酒が造られていた。酒造会社よしのやの「犀川蔵」だ。

 この酒蔵に杜氏(とうじ)はいない。酒造りの多くの工程が機械化されているからだ。しかし、味わい深い日本酒は全自動では造れない。「判断するのはすべて人間」。製造担当取締役の原田浩生さん(53)が強調した。

 父親がよしのやの前身の会社の役員で、原田さん自身も、大学で醸造を学んだ。しかし、卒業後に就職したのは東京都内のソフトウェア会社で、肩書はSE(システムエンジニア)。よしのやの関連会社に転じた際も、職種はエンジニアだった。20年ほど前、けがで休んだ工場長に代わり、戸惑いながらも製造を担当し、そのまま、異色の経歴を持つ酒職人となった。

 よしのやは1983年から機械化を進めていた。「手作りで続けるべきだ」との声もあったが、品質の安定を優先させた。実は、この機械が、別のところで思いがけなく役立った。

 「もろみは6度ほどに保った室内で仕込む」。約10年前、原田さんがこのルールに沿って作業をしていたところ、温度を下げる機械が突然故障した。高い室温のままの作業。雑味が混じるリスクが高まると思われたが、そうして造られた酒を味見したところ、「不思議とおいしかった」のだ。

 この“トラブル”時の環境を、原田さんは工程に取り入れた。目指すのは、芳醇(ほうじゅん)な香りに加え、しっかりとした米の味わいも感じられる酒だ。代表的な銘柄の「西之門」や「雲山」を飲めば、確かにそれがわかる。

 原田さんは「機械化されていても、毎年同じ酒を造り続けるわけにはいかない」と話す。品質向上を目指す職人たちの努力は、どの蔵でも変わりはない。

150年前に建てられた、善光寺からほど近い本社「西之門蔵」

(2014/11/21 長野県版の記事より。年齢・肩書きは、新聞掲載日のものです)

今回取り上げた新幹線写真の一部は、「よみうり報知写真館」で購入できます
[協力] JR東日本・JR西日本(運転席動画提供)
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