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料亭「金茶寮」 庭園離れで一客一亭 <石川>

 1組の客を1000坪の庭園内に点在する離れでもてなす――。金沢市中心部の喧騒から少し離れた犀川河岸。高低差40メートルの斜面を生かした園内に料亭「金茶寮」はたたずむ。本館と数寄屋風の離れ5棟に「一客一亭」の精神が宿る。他人の目がない静けさの中、庭と料理から四季の移ろいを味わう至福がある。

 京都で修業後、金沢に戻った料理人竹内春次郎氏が加賀藩家老の一族だった横山男爵の別邸を譲り受けて1933年に創業。以来、ハードとソフトの両面から「一客一亭」を引き継いできた。

庭園の緑に心安らぐ「御亭の間」。伝統ともてなしの協演に身を任す(金沢市の金茶寮で)

 横山家の茶室として江戸時代末期に建てられた最古の離れ「御亭(おちん)の間」は、天井は楓ぶき、手すりに精緻な細工を施した栗の木が使われ、当時の技術をうかがい知ることができる。金びょうぶや掛け軸、季節の花が空間を彩る。

 予約時に用途や出身を聞き、しつらえや料理を変える。県内在住者には郷土料理を避け、再訪者は記録をたどり、かつて飲んだ酒を用意。「把握できた範囲で対応する」(総支配人の吉川光久さん)と心を配る。

 各離れには専属の客室係が付く。予約の30分前には待機し、庭園下の裏玄関も使って客同士が会わぬよう配慮する。離れに隣接する小部屋で待機し、絶妙な間合いで酒の追加や要望に応える。「一品一心」の料理を温かく提供できるよう、主賓のペースを読んで、調理を始める頃合いを料理長に伝える。

 金茶寮は、石川や富山などの伝統文化の第一人者を招く宴「歳時記」の主催者という他の料亭にない顔もある。2008年から毎月開かれ、参加した客の旅先選びに影響を与える。職人に講演を依頼する吉川さんは「地域の伝統が集約された料亭には希少な伝統文化を伝える役割があると思う。北陸新幹線開通後は、築いた人脈でとっておきを紹介できるコンシェルジュを目指したい」と自負をのぞかせる。

昆布かごや菊花大根の創作に息をのむ「八寸」

(2014/1/13 石川県版の記事より。年齢・肩書きは、新聞掲載日のものです)

今回取り上げた新幹線写真の一部は、「よみうり報知写真館」で購入できます
[協力] JR東日本・JR西日本(運転席動画提供)
[編集] 東京本社・長野支局、新潟支局 北陸支社・富山支局、金沢支局 メディア局企画開発部
[デザイン] 東京本社メディア局企画開発部デザインチーム 株式会社ロフト  [イラストレーション] 荒木田美咲  [動画] 蓑輪潤、和多史朗
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