連載 侍出陣

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  • [決意の春]
  • 菅野「大谷の分も」

威風堂々 既にスイッチ

(工藤圭太)

 大谷(日本ハム)が投手としてのWBC出場を断念したと聞き、キャンプ初日の練習を終えた巨人の菅野は、淡々と言葉を並べた。

 「相当な思いがあったと思うし、本人が一番残念な気持ちが強いと思う。代わりになれるかはわからないが、彼の分も頑張りたい」

 菅野と大谷は、侍ジャパンの権藤投手コーチに「別格」と評され、先発陣の両輪となるはずだった。その片方が欠ければ、菅野にかかる期待はさらに大きくなる。それでも、重圧を周囲に感じさせない。威風堂々。そんな風格を漂わせる。

 WBCは初出場だが、エースの自覚は十分。12月から1か月超に及んだハワイでの自主トレーニングでは、例年以上に自らを追い込んだ。菅野をよく知る関係者は、ハワイから帰国した菅野の表情を見て、「既にスイッチが入っている」と驚いた。キャンプインを前に、近寄りがたいほどのオーラを出しているのは、プロ5年目で初めてのことだったという。

 周囲は、菅野の特長の一つに「想像力」を挙げる。菅野を入団時に指導した元コーチは、「ブルペンでも一球一球の状況を細かく想像していた。ずば抜けた潜在能力に加え、豊かな想像力があった」と振り返る。その才能は、自らに足りないものを認識したり、試合状況や相手選手の心理などを把握したりする上で生かされる。

 今季のテーマとして「チェンジアップの習得」を掲げたのも、滑りやすいとされるWBC使用球ではフォークボールがすっぽ抜けやすいため、代わりの落ちる変化球が必要と判断したからだ。1月28日の合同自主トレでブルペン入りした際には、そのチェンジアップも含めて39球。「思った通りに投げられている」と語り、充実感を漂わせた。WBC使用球への適応もうまく進んでいる。

 キャンプイン前の神社参拝で、「頂」の一文字を絵馬に書いた。「準備はしてきた。あとはやることをやるだけ」と語る27歳には、きっと、世界の頂点に至る明確な道筋も想像できているはずだ。

(2017年2月2日読売新聞より)

菅野投手

侍ジャパンのエースとして期待される菅野=中司雅信撮影

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