連載 侍出陣

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前回「悔しい思い出」

(工藤圭太)

 夕暮れが近づき、ファンの姿もまばらになった室内練習場で、巨人の坂本勇は黙々とトスされた球を右方向に打ち返した。一振り、また一振り。約30分間のティー打撃を終えると、休む間もなく今度はマシン相手に打ち込みを始めた。

 昨季、自身初の首位打者と遊撃手のゴールデン・グラブ賞を獲得し、名実ともに球界を代表する選手となった。それでも、向上心は衰えない。元々、練習熱心な男が、今年は例年以上に鬼気迫る姿を見せている。

 朝8時半からの早出練習と、全体練習後の居残り練習にも連日参加し、球場を後にするのは午後5時半頃だ。その向上心の源泉は何か。「もっと野球がうまくなりたい」という純粋な欲求がもちろんある。加えて今年はもう一つ、原動力がある。前回のWBCで味わった屈辱だ。

 24歳で迎えた前回は「悔しい思い出しかない」という。プエルトリコに敗退した準決勝では5番に座った。6試合通算で25打数6安打の打率2割4分0厘、1本塁打6打点と不本意な成績に終わった。チームも3連覇を逃した。

 2度目のWBCでも主軸を任される可能性が高い。精神的支柱としても期待される存在となった。今度こそ自らのプレーで侍ジャパンを栄冠へ導くためには、いくら練習してもし足りないような気がするのだ。量だけでなく、練習には工夫も凝らしている。昨季開花した打撃を磨くため、キャンプには通常使用しているものより約4センチ長いバットを持参し、打撃練習では主に中堅から右方向への打球を意識している。「体の内側からバットを出さないとちゃんと飛ばない」と、あえて打ちづらいバットで逆方向を狙うことで、体にコンパクトなスイングを染みこませている。

 小久保監督は「ショートのレギュラーと思っている。内野の要としてチームを引っ張っていってもらえれば」と信頼を寄せる。坂本勇は「今回のWBCでは何としても活躍して、結果を残したい」と話す。プロ11年目、28歳。表情は、自信と自覚に満ちている。

(2017年2月7日読売新聞より)

坂本選手

守備練習中に笑顔でボールを返球する巨人の坂本勇=伊藤紘二撮影

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