連載 侍出陣

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心の強さ 監督期待

(財津翔)

 急転直下、日の丸を背負うことになったソフトバンク・武田の心中は複雑だ。課せられた役割は、先発の柱と目されていた大谷(日本ハム)の代役を担うこと。「責任の重さは感じている」。普段は物事に動じない23歳が、珍しく言葉を選ぶ。

 日本代表「侍ジャパン」の常連だったが、1月に発表されたメンバーには名前がなかった。悔しさを押し殺し、「(ソフトバンクの)開幕投手を狙う」と、一度は気持ちを切り替えた。だから、「戸惑いがないと言えばうそ」というのが本音だ。

 それでも、「万が一」への備えは怠らなかった。オフの間、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)使用球で投げ込みを重ねて手に感触をなじませた。第1回WBCや五輪に、大リーグも経験した、チームの先輩の和田に助言を求めた。WBC球への対処法や米国の湿度、国際大会の雰囲気——。様々な情報を得て、「全然違う緊張感なんだろうな」とイメージを膨らませてきた。

 小久保監督は、故障の大谷に代えて武田を選んだ理由に、「精神面の強さ」を挙げた。和田も同感だという。「いつもひょうひょうとしていて、緊張してるのかどうかも分からない。国際大会に向いていると思う」と背中を押す。

 武田の代名詞は、縦に割れる大きなカーブ。しかし、実は「一番苦手な球」なのだと言う。「(変化が大きい分だけ)制球が難しい」というのが理由だが、外国人打者に対しても有効なことは、2015年の「プレミア12」でも実証済み。キャンプの第3クールから変化球を解禁し、調整のピッチを上げていく考えだ。

 7日には室内ブルペンに設けられたWBC仕様の硬めのマウンドに初めて上がり、直球のみ52球を投げた。シュート回転したり、すっぽ抜けたりと球にばらつきはあったものの、「硬いマウンドは好きだから。徐々に調整していけばいい」と問題視しなかった。

 追加招集が決まった4日朝、大谷から「申し訳ない」とのメールが届いた。WBC開幕まで約1か月。準備期間は限られているが、「十分すぎる」と表情に焦りの色はない。28人目の侍となった右腕が、日本の救世主になろうとしている。

(2017年2月8日読売新聞より)

武田投手

WBC仕様にした硬めのマウンドで投げ込む武田

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