連載 侍出陣

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  • [決意の春]
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「狙うは世界一のみ」

(財津翔)

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)開幕まで1か月を切った8日。ソフトバンクの内川が特打を行った。131スイングの半数以上が安打性で、柵越えも10本。ロングティーでも、芯で捉えた打球が次々と左翼席に吸い込まれた。「まあまあかな」という素っ気ない言葉とは裏腹に、グラウンドに響く快音が状態の良さを物語っていた。

 プロ16年間で通算打率3割1分。昨季は自己最多の106打点をマークした。34歳の今も十分に日本の中軸を担える実力の持ち主だが、最大の強みは経験値の高さだ。侍ジャパンでは唯一の3大会連続出場。小久保監督は「何も言わなくてもチームを引っ張ってくれる」と、青木(アストロズ)と共に精神的支柱としての役割も期待している。

 「自分に何ができるのか。それを常に考えながらやりたい」。その思いを、すでに行動に移している。1月の自主トレで約2週間、22歳の鈴木(広島)と寝食を共にした時のこと。打撃について語る中で、WBCの体験談も披露した。

 初出場した第2回大会の1次ラウンドの韓国戦。一回の好機で迎えた第1打席。重圧にのまれ、初球のストライクを簡単に見逃してしまった。2点二塁打を放って取り戻したが、「打っていなければ、一生後悔した」という。その経験を踏まえ、「(気持ちの面で)受けた中で打席に入ってほしくない」と伝えた。

 今、できることを——。その信念は、キャンプでも変わらない。大舞台を前にしても、緊張感を漂わせることもなければ、調整ペースを速めることもない。「(過去2大会とは)年齢も違うし、体も変わっている」と現状を冷静に見つめ、「できる範囲のことをやる」と自分の体と対話する。泰然自若とした姿に、ソフトバンクの王貞治球団会長も「体がキレている。心配ないよ」とうなずく。

 第2回大会は決勝の韓国戦でファインプレーを演じ、連覇に貢献。前回大会では準決勝のプエルトリコ戦で痛恨の走塁ミスを犯した。天国と地獄を知るからこそ、「日の丸をつけるのは、相当な覚悟がいる」という言葉には重みがある。「目指すところは、世界一だけ」。静かに闘志を燃やし、決戦の時を待つ。

(2017年2月11日読売新聞より)

内川選手

3大会連続出場となるWBCに向け、バットを振り込む内川

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