WBC侍の軌跡

2013 準決勝敗退

山本監督「『いける』と踏んでのダブルスチール、悔いはない」

日本―プエルトリコ

最後のビッグチャンス、走塁ミスで・・・

チーム名123456789
プエルトリコ1000002003
日本0000000101
  • M・サンティアゴ(1勝1敗)
  • S
    カブレラ(3S)
  • 前田健(2勝1敗)
  • リオス〈1〉(2能見)

 効果的に得点したプエルトリコに敗れた。プエルトリコは、一回、前田健の制球難を突き、連続四球の二死一、二塁から5番アービレイスの適時打で先制。七回には、リオスが2番手の能見から2ランを放った。日本は八回、井端の適時打で1点を返したが、直後の走塁ミスで追加点を奪えなかった。

【内川】

 鳥谷の三塁打に続く井端の適時打で2点差。内川が3連打で続いて一死一、二塁とした。4番の阿部を打席に迎え、走者へのサインは「行ければ行け」。しかし、二塁走者の井端が足を止めたのに対し、一塁から飛び出した内川が戻り切れずに、一、二塁間でタッチアウト。絶好機は一瞬でしぼんだ。内川は「全部自分が悪い」と涙ぐんだ。

 「必死にやった結果なので仕方ない」。主将の阿部は、さばさばと敗戦を受け止めた。四回、六回そして八回と、得点圏に3度走者を置いて凡退。ただ、自分が下を向いては、無念さがナインに広がるばかりと思ったのだろう。

 「一戦やるごとにチームは一体になっていった。向こう(プエルトリコ)もメジャーの一線でやっている選手もいる。いい勝負はできた」。ともに激闘を重ねた仲間の結束力をたたえた。

(2013年3月の読売新聞を基に再構成)

2009 優勝

Coming Soon
近日公開

イチロー「神が降りてきた」

日本―米国

ずっと「米国に追いつき追い越せ」だった。日本野球の進化を見せられるか

チーム名123456789
米国1010000204
日本01050003X9
  • 松坂
  • オズワルト
  • ロバーツ〈1〉(1松坂)

 先発の松坂が、一回、先頭のロバーツに中越え本塁打を喫した。二回に城島の犠飛で同点としたが、三回にもライトに勝ち越しの二塁打を許した。

 しかし、四回、相手の失策で同点とし、城島の犠飛で勝ち越し。さらに、岩村、川崎、中島が適時打して、この回、5点を奪った。八回には、イチローと中島の連続適時打などで3点を奪って突き放した。先発の松坂は五回途中に交代するまで2失点。最後はダルビッシュが締めた。

【原監督】

 準決勝の相手が米国に決まった時、原監督はこんな思い出話を披露した。「私は小学生の時に『ベーブ・ルース物語』を読んで野球に興味を持った。それから『米国に追いつけ、追い越せ』でやってきた。尊敬する米国と戦うことになり、非常に興奮している」

 原監督にとって、米国野球は師匠であり、究極の目標。これまでの試合に比べ、挑戦者意識がより強かったのだろう。思い切った攻めの姿勢が目を引いた。

 1点を追う二回無死一塁、小笠原にランエンドヒットのサインを出した。左前打で一、三塁とし、一死後、城島の右犠飛で同点とした。再び1点リードされた四回は、稲葉が安打で出ると、小笠原が今度は強攻。やはり城島の犠飛で勝ち越した。ここから打線がつながり、結局この回、5長短打で5点を挙げた。

 試合後、原監督は少しだけ胸を張った。「これで米国を追い越したとは思っていない。ただ、米国が日本の存在を認めてくれるようになったかなと思う」。日本野球の確かな進化を、ベースボール発祥国に知らしめた、意義ある1勝だった。

日本―韓国

1999年以降、五輪、WBC関連大会で、5勝9敗と苦手とするライバル・韓国との決勝戦

チーム名12345678910
日本00100011025
韓国00001001103
  • ダルビッシュ
  • 林昌勇
  • 秋信守〈2〉(1岩隈)

 小笠原の先制右前打に対し、韓国は秋信守(チュシンス)の本塁打で同点に。日本は七回に中島が適時打、八回に岩村が左犠飛を放って3―1としたが、韓国は八回、代打・李大浩(イデホ)の犠飛で追い上げ、九回にはダルビッシュから李ボム浩(イボムホ)が同点の適時打を放った。しかし、日本は十回二死二、三塁で、イチローが中前に2点適時打を放って振り切った。

【イチロー】

 十回、イチローが2点適時打を中前に放った。二死二、三塁の好機に、日本のつなぐ野球が理想的な形で実を結んだ。

 「(今大会は)谷しかなかった。最後に山に登ることができてよかった」。3年前の大会では、全試合で安打をマーク。しかし、今年は、快音が戻らなかった。「個人的には想像以上に苦しみ、つらさ、痛みを感じた」と胸の内を明かした。

 放った決勝打に、「神が降りてきました」とイチロー。苦しみを乗り越えた安堵(あんど)感をにじませた。

 原監督が「あのセンター前は生涯忘れない」と賛辞を惜しまなかった決勝打。

 優勝セレモニーの後、ロッカールーム内で行われたシャンパンファイトで、自然に「イチローコール」がわき上がり、胴上げされた。昨季まで8年連続200安打の大リーグタイ記録を達成した世界屈指の安打製造機が、また一つ、大きな勲章を手にした。

(2009年3月の読売新聞を基に再構成)

2006 優勝

Coming Soon
近日公開

イチロー「できれば、このチームでメジャーでやりたいぐらい」

日本―韓国

大会で韓国に2連敗。米がメキシコに敗れる波乱によって、絶望的だった準決勝進出が実現した日本。準決勝の相手は、3度目の韓国だった・・・

チーム名123456789
日本0000000516
韓国0000000000
  • 上原(2勝)
  • 全炳斗(1敗)
  • 福留〈2〉(2金炳賢) 多村〈3〉(1裴英洙)

 0―0で迎えた七回、日本は、福留が右越えに2ランを運んで待望の先制。この後、里崎、宮本、イチローも適時打を放ち、集中打で5点。八回には、多村のソロ本塁打で試合を決めた。イチローの初の3番起用、福留と宮本の代打起用など、王監督の采配も的中した。先発・上原は直球とフォークボールなどを有効に使って韓国打線に的を絞らせず、流れを引き寄せた。

【上原】

 上原は「フォーク」が武器だ。これを逆手にとって、日本のエースが会心の投球を見せた。

 韓国打線の裏をかいた。「フォークが多いということは知られていたので、あえてスライダーを多めにと、(里崎捕手に)お願いした」

 フォーク投手がなかなか“伝家の宝刀”を抜かない。初回、一死二塁で李承ヨプ(イスンヨプ)。ここまで5アーチを量産している長距離砲に対し、スライダーを交ぜて的を絞らせず、最後は高めのボール気味の142キロで空振り三振に。

 中盤に入ると、フォークを少なめにしたことが効いてきた。「フォークは忘れたころに投げた。韓国打線は(迷って)中途半端なスイングになっていた」。七回は、三つのアウトをすべて三振で取る圧巻の投球。結局、7回を3安打無失点、8奪三振。「95球」と球数を制限された中で見せた最高の「86球」だった。

日本―キューバ

初優勝をかけて、強力打線のキューバと対決。日本野球の力を見せられるかの大一番

チーム名123456789
日本40002000410
キューバ1000020216
  • 松坂(3勝)
  • S
    大塚(1S)
  • ロメロ(2勝1敗)
  • パレ〈1〉(1松坂) セペダ〈2〉(2藤田)

 相手のミスにつけ込み、着実に得点を重ねた王ジャパンがキューバを下し、初代王者に輝いた。

 日本は一回、今江の2点適時打などで4点を先制。終盤1点差に迫られたが、九回にイチローの適時打などで突き放し、八回途中から救援した大塚が締めくくった。最優秀選手には、今大会3勝目を挙げた松坂が選ばれた。

先発から、中継ぎ、抑えと安定した投手陣の防御率は2.49で、韓国、プエルトリコに次ぐ3位の好成績。攻めては、打率3割1分1厘、10本塁打、13盗塁は、いずれもナンバーワンで、大技、小技を織り交ぜる質の高さを見せつけた。日本野球の総合力を証明する優勝だった。

【川崎】

 一つ間違えば川崎の右腕は折れていた。「危険だということは分かっていたが、夢中だった」

 1点差に迫られた直後の九回表の攻撃。一死一塁から、西岡が投手と一塁手の間に絶妙なプッシュバント。続くイチローが一、二塁間をゴロで抜いた。二塁走者の川崎は本塁へ。しかし、捕手が本塁をブロックしていてベースが見えない。捕手に向かって右側に滑り込んだ川崎は、左手でベースに触れようとしたが、「それでは間に合わない」と瞬時に判断。捕手のひざ下から無理やり右手を突っ込んだ。セーフだった。

 優勝を決めた後、川崎は目を輝かせた。

 「日本の野球は世界に通用するなんてものではない。世界を引っ張っていくべきものなんです」

 技術と、献身と、プライドと――。選手の心が一つに結ばれた時、日本の野球は無敵となった。

(2006年3月の読売新聞を基に再構成)