落語家も体力勝負。きょうも走ってます【隅田川馬石のやわらか噺】

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元球児にして市民ランナーの真打ちがご機嫌をうかがいます

 落語家の隅田川馬石(すみだがわばせき)でございます。野球少年から高校球児、そして今は市民ランナーをしており、打って走って守れる噺家です。コロナ問題を乗り越えて立ち上がるスポーツを応援しようというこのコーナー、私らしく軟らかーくおしゃべりしたいと思いますので、肩の力を抜いてお付き合いください。

 本当なら今年の夏は東京オリンピック・パラリンピックで盛り上がっていたはずですが……。暑い夏だけは延期されずにしっかりとやってきましたねえ。

オリンピアンから勇気をもらった

ロサンゼルス五輪の開会式。こんな人、飛んでましたよね。
ロサンゼルス五輪の開会式。こんな人、飛んでましたよね。

 私のオリンピックの思い出といえば1984年ロサンゼルス大会です。開会式で、ジェット噴射装置を背負った人が空を飛んだじゃないですか。それと(陸上4冠の)カール・ルイスです。マラソンで勝てなかった瀬古利彦選手は(日本がボイコットした4年前の)モスクワに出ていたら優勝していたと言われていたから、気の毒な巡り合わせで残念でした。

 落語家になって、オリンピック選手から勇気をもらったことがありました。冬の競技ですが、10年くらい前にフィギュアスケートで「4回転論争」というのがありました。失敗した時の減点リスクが高い4回転ジャンプを跳ばずに回避して、プログラムの完成度で勝負した選手が勝ったことで「4回転なき金メダル」を認める、認めないっていう両方の立場から議論が起きました。

 私は真打ちになって間もない頃で、トリの高座に「大工調べ」という噺をかけたいけれど、大工の棟梁(とうりょう)が大家さんにタンカを切る場面の「言い立て」をもし間違えたり()んだりすると取り返しがつかない。だからトリネタにするかどうか迷いました。でもフィギュアの話を聞いて、あえて4回転を跳ぶという選手の心意気というか挑戦心にかき立てられて自分もこの噺をやった。そんな思い出があります。

 マラソンは昔も今も花形種目ですね。オリンピックには出てないけれど、私は川内優輝選手が好きです。レース前日にはゲン担ぎで必ずカレーを食べるそうで……。ロンドンの世界選手権に出場した時も、現地に着いて、まずカレー屋さんを探した。あそこのコースはね、石畳の路地を走ったりするんですよ。そしたら、本番では看板に激突したり、路地の段差で転んだり……。おいおい、カレー屋を探す前にコースを下見しておけよ(笑)って。いや、新聞なんかで読んだいろんな話を、マクラでちょこちょこネタにさせてもらいました。

フルマラソンは9回完走

走る前のストレッチ。なんだか自分専用のコースみたい。(撮影のためにマスクを外し、距離を保っています)
走る前のストレッチ。なんだか自分専用のコースみたい。(撮影のためにマスクを外し、距離を保っています)

 私は、小学生の頃から長距離走は速かったんです。でも、いつもぶっつけ本番で、ちゃんと練習していれば、といまだに思います。高校は兵庫県の地元にある駅伝の名門、西脇工業高でしたが、ここは県下からスゴイ選手が集まってくる。まったくレベルが違うので、陸上部には入らず好きな野球部に入りました。

 今は隅田川沿いの5キロのコースを週に3~4日、ストップウォッチを持って走ります。設定タイムは5キロ19分台。コロナのために3月からマスクをするようになって、1分増しにしました。数字を明確にすると向上心がわきます。今日より明日、明日よりあさってには、1秒でも速くなりたい。でも、真夏の暑い時分は無理をせず、タイムは関係なく走っていますよ。

 もう16年ぐらいになりますが、走り始めたきっかけは、大病を患った後輩の落語家と話したことでした。「復帰して10分の噺をしたらすごい(つら)かった、やっぱり落語は体力がいるんですね」と聞かされ、その時に一念発起して私は走ろうと思った。後日、体力づくりに走っていることをその後輩に話したら、噺家が走ってどうするんですか、と笑われました。

 これまでに東京マラソンを含めてフルマラソンを9回、完走しています。初めて出たのは2008年の東京・荒川市民マラソン(現在の名称は板橋Cityマラソン)で、公式タイムは5時間24分。スタート地点を通過するまでにかかった時間を引いて5時間10分でした。初めて4時間を切ったのは始めて6回目のマラソンで、現在のベストタイムは3時間43分22秒です。

 フルマラソンで4時間を切るランナーは全体の3割くらいだそうで、ここまでくるには失敗談や自分なりの苦労や研究の成果がありました。それは次回にゆっくりとお話ししようと思います。そろそろお時間です。次回もお付き合いのほどをよろしくお願いいたします。

プロフィル
隅田川 馬石( すみだがわ・ばせき
 1969年兵庫県生まれ。石坂浩二さんの主宰劇団に所属した後、93年10月に五街道雲助に入門して前座名「わたし」。97年9月にニツ目昇進で「佐助」。2007年3月に真打ちに昇進して四代目「隅田川馬石」を襲名。ゆったりと軟らかな語り口で滑稽噺(こっけいばなし)から師匠譲りの芝居噺、人情噺も手掛ける古典落語の名手。高校時代は野球部で9番・サード。趣味のマラソンではフルで4時間を切る「サブフォー」の実力者でもある。高座名は、馬をつなぎとめるのに使われたと言い伝えられる隅田川沿いの駒止石(こまどめいし)に由来する。十代目金原亭馬生を大師匠に持ち、落語界では「馬派」とも呼ばれる。

受賞歴
1999年 北とぴあ若手落語家競演会奨励賞
2007年 第12回林家彦六賞
2012年 文化庁芸術祭大衆芸能部門新人賞

無断転載・複製を禁じます
1406697 0 馬石のやわらか噺 2020/08/15 06:00:00 2020/08/15 16:49:02 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200811-OYT8I50051-T.jpg?type=thumbnail

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