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コロナ太りも解消? カラダもアタマも鍛えましょう【隅田川馬石のやわらか噺】

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 落語家の隅田川馬石でございます。野球少年から高校球児、そして今は市民ランナーをしており、打って走って守れる噺家です。コロナ問題を乗り越えて立ち上がるスポーツを応援しようというこのコーナー、私らしく軟らかーくおしゃべりしたいと思いますので、肩の力を抜いてお付き合いください。

元球児にして市民ランナーの真打ちがご機嫌をうかがいます

写真はイメージです
写真はイメージです

 まずは江戸小咄(こばなし)をひとつ

何もない貧乏な人。なぜか部屋に大きな石が置いてある。
「これ、何に使うのですか」
「あんまり寒い日は、これを持ち上げて体を温めるのです」
「……」

 子供のころ、家の中で寒い寒いと言っていたら、親に「寒かったらおもて走ってきいー」と言われたのを思い出しました。緊急事態宣言がもうしばらく続きそうな地域もあって、家の中で過ごす時間が長くなりがちですね。コロナ禍をきっかけに、男性も女性も自宅で筋トレや運動を始めた方が多いと聞きます。

 私は、20歳のころから毎日、風呂上がりに柔軟体操と腹筋を欠かさず続けていました。いつのころからか、(あお)向けになった状態で床から上げた脚と腕を上下に30回ずつ動かした後、背筋を30回、そして腕立て伏せを10回。これをセットメニューにしました。

 自宅でも、地方の仕事で旅に出た時も、一日1回、無理なく続くように内容は軽めです。旅先で相部屋になってしまった時には、見られるのが恥ずかしいので、隠れて大浴場の脱衣場でやったこともありました。

 コロナ禍の前は、落語会の打ち上げなどで飲んで家に帰って、夜中どんなに酔っぱらって遅くなってもこれだけはやろう、休まないで続けることだけを頑なに守ってます。なぜと言われると困りますけど。

長い噺では筋トレの効果も

 それでも続けているおかげで、長い噺をしていても息切れをせずに耐えられる気がします。1時間くらいかかる噺だと30分を超えてからが苦しい。会話の部分はごまかせても、地のところで息切れしてしまうのは怖いですからね。

 一度やり出すとやめられないのが性格で、野球部の時、手首のスナップをきかせるためにお風呂の湯船の中で手をひらひらさせて鍛える運動をしていました。野球から離れてもやめられず、ただやっていたのですが、せっかくだから、ひらひらさせている間に「外郎(ういろう)売り」の早口言葉をやろうと決めて、またこれが日課になりました。風呂の中で手をひらひらさせて早口言葉をやっている。人には見せられません。

 「外郎売り」とは、江戸時代の、二代目市川団十郎の作となる歌舞伎十八番の内の演目で、劇中には万能薬である外郎の故事来歴や効能を早口言葉のように言い立てる長台詞(ながぜりふ)があります。役者さんやアナウンサーの方の発声練習の教科書のようなものです。

 「落語家さんはボイストレーニングをするんですか」と聞かれることがありますが、特別なことはしていません。高座で毎日声を出しているので、それで鍛えられているんだと思います。

 落語のトレーニングはやはり、毎日の稽古ですね。私は自転車に乗ってブツブツ稽古をします。ある時、警察署の安全運転管理者協会の総会に講師として呼んでいただきました。ただ自転車に乗って噺の稽古をしているという話は不謹慎だと思って「自転車で稽古していても、ブレーキに手をかけて信号も守って、意識は交通安全に向いている。落語は無意識に口から出てくるだけで、そうなるまで日ごろの稽古をしている」というような内容で、それでも怒られると思ったら、後日に署長さんから感謝状をいただきました。
 賞状の文面が「落語を通じて、自転車の安全な乗り方など交通安全意識の高揚に多大な貢献をされました。ここに深く感謝の意を表します」。これには恐縮の至りです。ますます安全に気をつけて自転車で稽古をしています。

日常から落語の情景をイメージトレーニング

 落語は想像の芸であると言われます。聞く方が情景を豊かに想像するのはもちろんなのですが、演じ手である私も日常の生活の中で落語の中のシーンに結び付くような情景を探しています。新聞や雑誌に載っている写真とか絵を何げなく見ていて、落語の場面で自分が思っていたようなものがあると、切り抜いてとっておきます。噺をしている時にその絵を思い出すと、ふっと良い間ができて落ち着くんです。

 「鰍沢(かじかざわ)」という噺では、雪の中の風景はどんなものだろう。雪深い景色の絵があったりすると、これを噺に入れてみようとか、崖の上から見る滝の流れの絵があったら、鰍沢ってこういう風に見えるのかな、と重ね合わせてみます。

 浜辺の夜明け、沖が白んでくる、そういう絵があったら、これは「芝浜」で魚屋の勝五郎が見た風景でもいいな、とかね。

 隅田川沿いを自転車でぶらぶらすることも多いのですが、落語には隅田川が出てくる話が多いので、風景を見ながら稽古していると、飽きないです。これもイメージトレーニングってやつですかねえ。

 そろそろお時間です。次回もお付き合いのほどをよろしくお願いいたします。

 ※2月下席(21~28日)、新宿末廣亭に出ています。昼2時30分上がりです。

プロフィル
隅田川 馬石( すみだがわ・ばせき
 1969年兵庫県生まれ。石坂浩二さんの主宰劇団に所属した後、93年10月に五街道雲助に入門して前座名「わたし」。97年9月にニツ目昇進で「佐助」。2007年3月に真打ちに昇進して四代目「隅田川馬石」を襲名。ゆったりと軟らかな語り口で滑稽噺(こっけいばなし)から師匠譲りの芝居噺、人情噺も手掛ける古典落語の名手。高校時代は野球部で9番・サード。趣味のマラソンではフルで4時間を切る「サブフォー」の実力者でもある。高座名は、馬をつなぎとめるのに使われたと言い伝えられる隅田川沿いの駒止石(こまどめいし)に由来する。十代目金原亭馬生を大師匠に持ち、落語界では「馬派」とも呼ばれる。

受賞歴
1999年 北とぴあ若手落語家競演会奨励賞
2007年 第12回林家彦六賞
2012年 文化庁芸術祭大衆芸能部門新人賞
無断転載・複製を禁じます
1843802 0 馬石のやわらか噺 2021/02/15 17:00:00 2021/02/15 17:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/02/20210212-OYT8I50063-T.jpg?type=thumbnail

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