「ワンチーム」の感動から1年…最高峰リーグで輝く松島幸太朗、コロナ下に一筋の光

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 日本中が熱狂したラグビー・ワールドカップ(W杯)の開幕から、9月20日でちょうど1年となる。初の自国開催だったW杯は、国内のラグビー界やスポーツ界に何をもたらしたのか。この1年の変化を追った。(矢萩雅人、帯津智昭)

「W杯でアピールできたから、この場にいる」

 「松島は何度も攻撃を仕掛け、相手の防御ラインをきれいに突破することもあった」。フランスのスポーツ紙「レキップ」(電子版)は今月上旬、同国1部リーグ「トップ14」のクレルモンに加入した日本代表の松島幸太朗のデビュー戦の様子をそう記した。かつて日本選手の出場すら難しかった世界最高峰のリーグで、鮮烈な印象を残してみせた。

 昨秋のW杯で、日本はアイルランドやスコットランドなどの強豪を破り、初の8強入りを果たした。5トライを挙げた松島が「W杯でしっかり自分をアピールしたことで、今この場にいると思う」と話した通り、W杯で日本選手に対する世界の評価は格段に高まった。

 それに比例して、国内のトップリーグも一気に世界の注目を集めるリーグとなった。

 世界年間最優秀選手に2度輝いた名手で、ニュージーランドの主力であるボーデン・バレットがサントリーに、スコットランド主将を務め、日本を苦しめたグレイグ・レイドローはNTTコミュニケーションズへの加入が7月、相次いで発表された。ワールドクラスのスター選手たちが日本を選ぶ理由とは。暮らしやすさや待遇の良さなどは以前から指摘されてきた。パナソニックの飯島均ゼネラルマネジャー(GM)は、金銭面ではフランスリーグなどの方が日本より好条件という印象だといい、「成長するためには一定のレベルでプレーしないといけない。日本のレベルが上がっていることも大きい」と、W杯での日本の活躍も要因とみる。

トップリーグ打ち切り、代表人気は健在

 ただ、新型コロナウイルスの流行が水を差した。トップリーグは3月で打ち切られ、今年は日本代表戦が行われないことも決まった。代表強化と人気拡大の好機が失われてしまった。それでも代表人気は健在だ。快足の福岡堅樹(パナソニック)がバラエティー番組に出演したり、「笑わない男」で人気を博した稲垣啓太(同)がポスターに起用されたりと、W杯戦士を目にする機会は続いている。昨年の新語・流行語大賞に選ばれた日本代表のチームスローガン「ONE TEAM(ワンチーム)」は今も様々な場面で耳にし、ラグビーを想起させている。

 来年1月開幕予定のトップリーグでラグビー人気を持続させ、さらに強化につなげるには。NTTコムの内山浩文GMは「代表の主将まで経験した選手から学ぶところは多い。加えて、トップリーグ自体のクオリティーの高さを世界にアピールするチャンス」と海外勢とのプレーで強化と人気拡大の相乗効果を期待する。

 W杯が残したインパクトは、コロナ禍の日本ラグビー界の支えになっている。

NTTコミュニケーションズのジャージーに身を包んだレイドロー(c)Craig Watson
NTTコミュニケーションズのジャージーに身を包んだレイドロー(c)Craig Watson

「にわかファン」急増、発揮した「おもてなしの心」

 昨秋のラグビーW杯日本大会は、国内開催のスポーツイベントとしては2002年サッカーW杯以来の大規模な大会だった。「にわかファン」らが一体となって盛り上がる中、活動したボランティアは約1万3000人。「おもてなしの心」で来場者と接する姿はSNSなどを通じて世界に発信され、大会の評価を高めた。

 群馬県板倉町の大塚秀範さん(63)にとって、W杯でボランティアをした経験は一生の宝物だ。公式ユニホームや研修で使った資料を今も大切に保管している。「世界的なイベントに関わりたい」と応募。試合会場の一つ、埼玉・熊谷ラグビー場周辺で3日間、駅でチラシを配ったり、シャトルバスの乗客に手を振って歓迎ムードを演出したりした。

 熊谷での出来事。米国代表のジャージーを着た外国人ファンに「USA!」と声をかけると、笑顔でハイタッチを交わしてくれた。大会に向けて勉強してきた英語で実際に口にできたのは国名だけだったが「『私も応援しているよ』という思いが伝わった気がした。こんな時、言葉はいらないんだ」。来年の東京五輪では東京都の都市ボランティアとして活動する予定。「来日した外国人に東京を好きになってもらえれば」。W杯の経験を生かせる時を今から楽しみにしている。

ラグビーW杯でボランティアマネジャーを務めた神野さん=本人提供
ラグビーW杯でボランティアマネジャーを務めた神野さん=本人提供

オリパラへ 貴重なレガシー

 「大規模国際大会は、色々な価値観を持った人がジグソーパズルみたいに組み合わさり、一枚の絵を作っていく。それを経験できたことは得がたい学びとなった」。ラグビーW杯の大会組織委員会でボランティアマネジャーを務めた神野幹也さん(33)は、様々な国籍や経歴を持つ人たちと働いた大会をこう振り返る。

 W杯後に東京五輪・パラリンピック大会組織委へ。本番でバドミントンや近代五種、車いすバスケットボール会場の武蔵野の森総合スポーツプラザ(東京都調布市)で観客サービスを担当する。「大会直前にどういうことが起きるか、パズルをはめた時にどこでずれが生じやすいか、W杯で経験しているのである程度分かる」と言い、「W杯のような良い雰囲気を作るには、お客さんの期待を上回るモチベーション(意欲)でおもてなしをする、そのために良いチームを作ることが欠かせない」と力を込める。

 新型コロナウイルスの影響でスポーツを取り巻く状況は一変し、東京五輪・パラリンピックも延期。それでも空前の盛り上がりを見せたラグビーW杯で知見と経験を得た人々は、来年、そしてその先の大規模イベントが控える日本にとって貴重な存在となるはずだ。

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1490440 0 その他 2020/09/20 08:53:00 2020/10/02 09:00:03 2020/10/02 09:00:03

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