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渡辺雄太、過酷な環境から「100万分の1」の高みに…追い風となったNBAの「戦術変化」

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 アメリカプロバスケットボール、NBAのレギュラーシーズン全日程が5月17日に終了した。今シーズンは日本出身の選手2人が本契約を交わし、プレーした歴史的なシーズンとなった。渡辺雄太が4月にトロント・ラプターズのツーウェー契約から本契約を勝ち取ったのだ。日本人としては田臥勇太(宇都宮=Bリーグ)、八村塁(ワシントン・ウィザーズ)に次いで3人目の快挙だ。それまでの「ツーウェー契約」と「本契約」とは何が違うのか、よくわからない人も多いのではないだろうか。渡辺の奮闘を通して世界最高峰リーグのNBAを解説する。(読売新聞オンライン・古和康行)

米国の大学で活躍も…

グリズリーズ戦で11得点をあげた渡辺(AP)
グリズリーズ戦で11得点をあげた渡辺(AP)

 渡辺はバスケットの国内実業団チームで活躍した両親の下に生まれ、尽誠学園高(香川)を卒業すると、全米大学体育協会(NCAA)1部のジョージ・ワシントン大学に進学した。バスケット留学だ。主力メンバーとして活躍し、最高学年ではキャプテンも務めた。当時からディフェンスに定評があり、所属する地域では最優秀守備選手賞を受賞。ただ、在学中にNBAのチームからオファーを得ることはなかった。

 大学卒業後に参加したサマーリーグでの活躍が認められ、2018年にメンフィス・グリズリーズとツーウェー契約を結んだ。ツーウェーとは、NBAのチームと提携する下部リーグのチームで活動しながら、招集されれば一定期間、NBAの試合や練習に参加できる契約で、本契約とは待遇面で大きな差がある。

 渡辺はグリズリーズで2シーズンプレーしたが本契約には至らず、今シーズンはラプターズとツーウェー契約を結んだ。主力選手の戦線離脱などで徐々に出場機会を得ると、4月16日にはオーランド・マジックとの試合で21得点を挙げるなど結果を出した。課題だったシュート力も改善し、4月19日に念願の本契約を結んだ。ここまでの苦労を渡辺は「逃げ出したくなることもたくさんあったけれど、自分にハッパをかけてやってきた」と表現した。

平均年俸は9億円

 NBAプレーヤーの平均年俸は約9億円といわれる。高額な放映権料などによって、リーグから各チームに多額の資金が分配されるようになり、選手の待遇が向上している。スポーツ専門局ESPNによると、20―21年シーズンの最高年俸はステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)で約46億円といわれる。

 一方、2017年のオフシーズンから始まったツーウェー契約は、新型コロナウイルスの影響で出場試合数の上限が撤廃されるまで、契約できるのがNBA在籍3年以下の選手に限られているうえ、シーズン中にNBAのチームに参加できるのは50日間(20-21シーズンの特別措置)までと定められていた。また今季の年俸は、約45万ドル(約4800万円)と定められている。

 これに対して、今季の渡辺が契約できる本契約の最低年俸は約162万ドル(約1億7500万円)。年俸の単純比較でも3倍以上の差がある。ツーウェーは、主力選手がけがやスランプに悩まされたときにNBAに呼ばれる「調整弁」のような契約で、チームが変われば戦術も異なる。場合によっては長距離の移動も必要で、過酷なプレー環境に負けずに結果を出すことが求められる。

100万分の1

 NBAのチームには、選手に支払う年俸の上限枠が定められる「サラリーキャップ」制度がある。「資金力があるから、いろいろな選手を保有しよう」というチーム作りはできない。契約するということは、即戦力としてのパフォーマンスが求められているということで、チームは選手を厳選する。

 NBAには1チーム15人までの「登録選手」の枠が設けられている。計30チームあるので、出場登録できるのは全体で450人。国際バスケットボール連盟(FIBA)によると、世界の競技人口は「登録者」だけで約4・5億人いるとされる。単純計算で、NBAプレーヤーになれる確率は「100万分の1」ということになる。

 近年、ヨーロッパ出身選手の台頭もあり、アメリカ国籍以外の選手がNBAの試合に出場することも増えた。19―20年シーズン開幕時には、38か国108人の選手が出場登録された。

 ちなみに、アジアの極東地域からは、中国を中心に比較的多くの選手がNBA入りしている。オールスターに8度選出された姚明(ヤオ・ミン、中国)や韓国初のNBAプレーヤーの河昇鎭(ハ・スンジン)などがよく知られているが、今までNBAでプレーしたアジア選手の大半は身長210センチを超える「高さ」を見込まれたプレーヤーだ。技術やスピードを武器にしてNBAでシーズンを活躍した選手はほとんどいない。

日本人初のNBAプレーヤーとなった田臥勇太選手(2004年撮影)
日本人初のNBAプレーヤーとなった田臥勇太選手(2004年撮影)

 日本人では、230センチの長身を生かして日本リーグで活躍した岡山恭崇(やすたか)さんが、1981年にゴールデンステート・ウォーリアーズからドラフト8巡目で指名されたが入団しなかった。名門・能代工業高(秋田、現:能代科学技術高)で「高校9冠」を達成した田臥勇太が2004年にフェニックス・サンズと契約して出場したが、出場機会は4試合にとどまった。

戦術の変化と需要

 近年、NBAでは得点効率が見直されるようになり、3点シュートなどを多用する戦術が流行している。ビッグマン(大きな選手)がゴール下で得点するという、長年続いた戦法が通用しなくなった。中には、動きの遅い長身選手を起用せずに機敏な選手を5人そろえ、ロングシュートを多投するチームもあるほどだ。

 そうしたプレースタイルの変化は、渡辺にとっては追い風となった。近年では、ディフェンスと3点シュートが得意な「3&D」と呼ばれるタイプの選手が重宝されているが、渡辺の206センチの身長と長い手足を活かしたディフェンスには定評があったため、シュート力を向上させることでチームの戦術に適応していった。

 本契約を交わしてからも、渡辺はコンスタントに試合に出場している。5月8日のグリズリーズ戦にも先発し、11得点4リバウンドを記録した。シーズンを通して50試合に出場し、平均4・4得点、3・2リバウンドをマークした。チームの主力の一人としてシーズンを通じて貢献したといえるだろう。

次代のエースたち

 NBAで活躍する渡辺、八村のように、若い年代から海外でプレーする選手が増えている。

 2018年、高校3年生の冬の選抜大会で1試合平均39・8得点を記録した富永啓生(けいせい)は、アメリカの短大に進学。今年の全米大会ではチームを4強へ導くなど中心選手として活躍した。21年秋からNCAA1部のネブラスカ大でプレーする。全米屈指の激戦区に所属する大学だが、加入を発表したチームのヘッドコーチは、「チームの歴史においても、最も個性的な選手だ。チームにインパクトを与える」と高く評価する。

日本代表の育成キャンプで軽快な動きを見せた田中力(右)とテーブス海(2019年撮影)
日本代表の育成キャンプで軽快な動きを見せた田中力(右)とテーブス海(2019年撮影)

 史上最年少の15歳5か月で日本代表候補に入った田中力も注目の一人だ。中学卒業後、海を渡り、全米トップクラスの高校・米IMGアカデミーでプレーした。NCAA1部のチームから勧誘をうけるなど注目を集める。

 日本バスケットボール界からNBAへの道をこじ開けた田臥、その背中を見て育った渡辺や八村が米国でプレーすることで日本は世界を知った。渡辺の本契約は、国内外でプレーする次の世代の背中を押したに違いない。

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2059963 0 その他 2021/05/18 11:55:00 2021/05/18 16:30:11 2021/05/18 16:30:11 Toronto Raptors forward Yuta Watanabe, of Japan, puts up a shot against the Memphis Grizzlies during the first half of an NBA basketball game Saturday, May 8, 2021, in Tampa, Fla. (AP Photo/Chris O'Meara) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210518-OYT1I50027-T.jpg?type=thumbnail

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