頂点極めてそして男になった…元女子ボクサー、真道ゴーの葛藤〈4〉 スポーツストーリー「LIFE」

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 デビュー戦は2008年5月、地元・和歌山で開催された。競技歴5か月だった 真道しんどう ゴー(34)の相手は、アマチュア時代の実績が豊富な秋田屋まさえだった。

男として強さ極める…元女子ボクサー、真道ゴーの葛藤〈5〉 スポーツストーリー「LIFE」

 開始早々、視界がゆがむほどのパンチを食らった。だが、打たれに打たれても食い下がり、会場はどよめく。判定で敗れ、うつむいてリングを下りた時だ。次々に歩み寄ってきた観客から、意外な言葉をかけられた。「女子の試合なんてつまらんと思ってたのに感動した」。胸が熱くなった。

2度目の世界挑戦でWBCフライ級王座を獲得した真道(右)(2013年5月19日、和歌山市で)
2度目の世界挑戦でWBCフライ級王座を獲得した真道(右)(2013年5月19日、和歌山市で)

 「今までのつらい人生は、この時のためにあったんや。この世界で頑張って、絶対にてっぺんを取ったる」

 無心でサンドバッグと向き合った。スパーリングで、手を抜く男子選手から本気を引き出すのが楽しかった。連勝を重ね、3年で東洋太平洋王座を獲得した。

 一方、デビュー後間もなく、心は男だとブログで公表したことで、 誹謗ひぼう 中傷を受け続けた。「見たくない」「やめてまえ」。ネット上の心ない言葉に、何度も落ち込んだ。新しいアルバイト先で10年に出会った4歳上の亜由佳(38)との交際が順調なほど、「心は男だとか言いながら、女子の世界王者を目指すなんて矛盾してないか」と思い悩んだ。

 結婚を考え始めたある日。性別変更の相談に訪れた病院から帰る車の中だった。思いをぶつけると、普段はおっとりした亜由佳が厳しく言い放った。「男とか女とかばかり気にしてるゴーって、めっちゃださい。世界王者になるって決めたなら、それを成し遂げるのが『男らしさ』ちゃうん」

 目が覚めた。猛練習を重ね、13年、2度目の挑戦で世界ボクシング評議会(WBC)フライ級王座を獲得。翌年、3度目の防衛に失敗すると、「強い相手に出会えた」とさらに燃えた。

家庭への夢、引退決意

 亜由佳が30歳になる前にウェディングドレスを着せるという誓いを守れず、王座陥落から1年余りが過ぎた頃。かつて、泣きながら「いつになったら結婚できるん?」と漏らした亜由佳が、将来への不安を口にする回数が増えてきた。

次女と遊ぶ真道(中央)。妻の亜由佳(右)と家庭を築き、3児の父となった
次女と遊ぶ真道(中央)。妻の亜由佳(右)と家庭を築き、3児の父となった

 引退して家庭を持とう――。決断したのは、選手として脂が乗る28歳。長年ライバル視してきた世界ボクシング機構(WBO)バンタム級王者・藤岡奈穂子への挑戦を最後と決めた。16年6月、2階級制覇をかけた試合は0―3の判定で完敗。未練は断ち切った。

 体を男に変えるため、約1年後、タイに渡り、10時間に上る手術を受けた。目が覚め、膨らみの消えた胸のサラシを取る。鏡に映る新しい姿を見た時の感動は忘れられない。「これからは人前でパンツ一丁になれる。堂々と男として生きられる。やっと結婚できるんや」

 裁判所に届けて、戸籍も男に変わった。結婚し、3児の父となった今、もう、本名は「めぐみ」ではない。「橋本 ごう 」。父・浩一郎(67)から1文字取った。(敬称略)

スポーツストーリー「LIFE」

 つまずいたり、転んだりしながら競技人生を歩んできたアスリートたちの内面に迫ります。

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3137952 0 その他 2022/07/04 12:30:00 2022/07/04 12:03:32 2022/07/04 12:03:32 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/07/20220704-OYT1I50044-T.jpg?type=thumbnail

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