甲子園で締めくくる…選抜32校交流試合
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春の選抜高校野球大会に出場を予定していた32校が8月、甲子園で交流試合を戦うことになった。新型コロナウイルスの影響で一度は幻となった憧れの舞台。夏の全国大会も中止になる中、各校の選手たちは10日、吉報に胸を躍らせた。
「21世紀枠」磐城…諦めず練習、吉報

21世紀枠で出場予定だった福島県立磐城高(いわき市)の選手は同日夕、練習の合間に吉田強栄校長から、交流試合開催を告げられた。みな驚きのあまり声をのみ、目が潤み出す選手も。渡辺純監督(38)らの話の後、円陣を組み、岩間涼星主将(3年)が力強く語りかけた。「悔しい思いもたくさんしたが、高校野球を甲子園で終われることに感謝し、しっかりとやりきろう」
県内屈指の進学校。昨年の台風19号で地元が浸水被害を受けボランティア活動に尽力した。今年1月、21世紀枠で46年ぶりの選抜出場が決定した。だが、その後は苦難が続いた。
3月11日に選抜が中止となった後は、チームを5年間率いてきた木村保前監督(49)が4月に他校へ転任。夏の甲子園中止でチームは激しく動揺し、「大学受験に集中したい」と引退を考える3年生も現れた。それでも県内で代替大会開催の可能性があったため話し合いを続け、6月上旬、最後まで迷っていた3年生が「自分も引退せずにやりたい」と岩間主将に伝え、3年生全員の結束が固まった。
4月16日を最後に部活動は休止となり、今月8日に再開したばかり。10日の練習後、エースの沖政宗投手(3年)は「目標を失った中、各自で練習を重ねてきたのが報われた気がする。夢の舞台で勝つために全員が同じ方向を見て、必死に練習したい」と語った。
渡辺監督は「これまで選手の暗い顔ばかり見てきたが、喜んでいる姿を見られて良かった」と目を細めた。転任の際、部員に忍耐の大切さを呼びかけたという木村前監督は「野球の神様が彼らの頑張りに、ご褒美をくれたのかな」と喜んだ。
「目標見えた」「ご褒美」
高崎健康福祉大高崎高(群馬県)の選手たちは高崎市内のグラウンドで青柳博文監督(48)から開催を伝えられた。分散登校のため全体練習はできず、県の代替大会も決まっていない状況だけに、戸丸秦吾主将(3年)は「これで目標が見えた。自分たちがやってきたことを見せて勝ちたい」と意気込んだ。
5月30日から練習を再開している仙台育英高(宮城県)の田中祥都主将(3年)は「(甲子園での試合は)今までゼロだった部分なので、うれしさがある」と笑顔で話した。指導者も決定を喜び、明徳義塾高(高知県)の馬淵史郎監督(64)は「甲子園という目標がなくなっても練習を頑張った選手にご褒美がきた、甲子園から迎えがきたという気持ちだ」と語った。