岡本から生まれた、豪快ではなく「技ありの一発」
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持ち味の豪快なスイングではなかった。巨人が優勝マジック「1」として迎えた一戦で、リーグ連覇へと導いたのは4番・岡本が放った技ありの一発だった。
1点を先取された直後の三回二死二塁。ヤクルト・歳内に追い込まれた後の5球目、内角低めの141キロを腕をたたんで捉えた。最後は左手一本で払うように振り抜くと、打球は左翼席へ。「走者をかえすことだけ考えていた」
昨季は前を打つ坂本、丸が高い出塁率を残しながら目標の100打点に届かず、日本シリーズでも打率1割台。ふがいなさがつきまとい、4番と呼ばれることには「ものすごく違和感があった」と明かす。
4番の座を確固たるものにする――。そうオフに誓いを立てると、打撃練習では1球も無駄にしないことを心掛けた。「どこに来ても、全部打つ」。たとえボール球だったとしても、「色んなコースに対するバットの出し方も覚えられる」。本番で常に甘い球が来るとは限らない。理想のスイングを追求するだけでなく、追い込まれた時の対応なども考えた。28号アーチは、与えられた役割を果たすべく磨き続けた技の集大成と言える。
先制打や逆転打などの「殊勲打」は試合前時点でチーム最多の24本。得点圏打率も3割4分超だ。数字でもチームを先導してきたことがよく分かる。原監督は、その勝負強さを自身の愛称を引き合いに出して褒めたたえる。「若大将のごとく引っ張っている」。大一番でも、相手に傾きかけた流れをすぐに引き戻した主砲。見事な4番へと成長を遂げた。(後藤静華)