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読売新聞スポーツアドバイザー、堀内恒夫さんと鹿取義隆さんがプロの目線で野球を語る「持論球論」。完全試合を達成した佐々木朗希(ロッテ)はフォークボールで三振の山を築いています。現代野球の決め球について語ってもらいました。(聞き手・編集委員 太田朋男)
完全試合の佐々木朗希、腕の振り全く変わらぬ2球種
――完全試合を達成した4月10日と8回完全の同17日、佐々木の球種は55~60%程度が速球で、残りの大半がフォーク。カーブ、スライダーは数球ずつでした。
鹿取「球種は主に二つだが、腕の振りが全く変わらない。打者は追い込まれると真っすぐのタイミングで振りにいって、あっと思ったらフォーク。この繰り返しになっていた」
堀内「速球の切れなら、山本(オリックス)の方が上だが、160キロ以上になると、そんな次元を超越している。山本のような、きれいなスピンがかかるようになれば、切れが増し、空振りもさらに増える」
――追い込むとフォークの確率が高い。フォークを待てば、何とかなりますか。
鹿取「速球よりもスピン量が少なく、空気抵抗を受けて沈むフォークの落差、変化は1球ごとに違うし、彼のフォークは大半が145キロ超えだ。真っすぐと同じ速さで縦に変化する。あの時点では、誰もそんな球に慣れていなかった」
堀内「巨人時代の松井秀喜が横浜(現DeNA)の佐々木主浩のフォークを『消える』と表現していた。152、3キロの速球と140キロ超のフォークだったが、佐々木朗はさらに速いわけだからね」
――彼のフォークは最強の決め球ですか。
鹿取「そう思うね。人の目はスライダーのような横の変化にはついていけるが、縦の変化と緩急には弱い。もちろん、160キロの速球があるという前提だ。加えて、ゾゾマリンスタジアム特有の風も味方した。サイドハンドだった私は現役時代、横に変化させる持ち球が多く、あの風に苦労したが、佐々木のようなオーバーハンドでは、時に恩恵を受けられる。風が中堅から本塁へ吹く時は、ネット裏にはね返った逆風によってフォークの落差が増す」
堀内「24日のオリックス戦は京セラドーム大阪だったから、風の恩恵はなかったね。ただ、速球、フォークとも切れ、制球が今一つだったし、打者もしっかり対応してきた。あと一つ信頼出来る変化球があれば、球数を減らせて、楽にアウトが取れると思う。三振は投手の勲章だが、目的は勝つことだから」