読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

[選手たちの10年 東日本大震災]<2>支援から交流 深まる絆…川崎 仙台と「共に歩む」

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

試合開始前、サポーターで埋まった客席を前に円陣をくむ仙台イレブン(川崎市の等々力陸上競技場で、2011年4月23日撮影)
試合開始前、サポーターで埋まった客席を前に円陣をくむ仙台イレブン(川崎市の等々力陸上競技場で、2011年4月23日撮影)

 仙台のチャント(応援歌)がわき起こったのは、川崎サポーター席だった。震災後にJリーグが再開した2011年4月23日、等々力陸上競技場。川崎の私設応援団「川崎華族」のコールリーダー、小俣海人さん(30)は祈りを込めた。「僕らの声で東北の皆さんの心を少しでも温かくできたら」。皆が声を合わせてくれた。

 反対側の仙台サポーター席には、「市民後援会」理事長だった佐々木知広・現仙台社長(64)がいた。サポーター同士で「生きていたんだ」と抱き合った後、犠牲者を悼み、東北を励ます大型スクリーンの映像に見入った。「共に歩むんだというメッセージ。みんな、ぼろぼろ泣いた」。仙台側から、川崎へのエールがこだました。

 「独特の雰囲気を忘れることはない」。仙台のMFとして先発した太田吉彰さん(37)は、そう振り返った。リーグの再開前にはチームで宮城県内のがれき撤去を手伝ったが、被災者にかける言葉が見つからず、逆に「ベガルタ頑張れ」「サッカーで夢を」と励まされた。子供たちは一緒にボールを蹴るだけで笑顔になってくれた。

 「サッカー観が変わった。自分が点を取れればという思いが強かったけど、スタジアムに来られない人を思い、サポーターのためにプレーするんだって」

 1点を追う73分。両脚がつりながらも同点ゴールをねじ込み、逆転勝ちを呼び込んだ。「被災者や応援してくれる方たちの思いが乗ったゴール。自分の得点だとは思っていない」

 その約3週間前。「川崎華族」の山崎真代表(41)は、川崎のスタッフとともに岩手県陸前高田市に、津波で流失した小学生の教材などを届けていた。以来、何度も足を運び、現地の子どもたちを等々力に招く企画は9回を数えた。観光案内役も務める山崎さんは、保護者から被災地への関心が薄れる不安を明かされ、「一番大事なのは続けることだと思った」。

 15年、陸前高田の飲食店などがホーム戦で出店するイベントを始めた。「商店が経済的に自立するようにしたかった」と川崎のスタッフだった鈴木順・Jリーグ社会連携室長(48)。山崎さんは「支援ではなく交流になってきた」とかみ締める。16年には仙台も輪に加わり、陸前高田で交流戦が実現。両チームの公式戦では、サポーターの区域を分ける「緩衝地帯」がない。

 物資や義援金を届けた震災当初から、広がった輪。それは各地の地震や風水害にも波及し、Jクラブが地域課題に取り組む「社会連携」でも、復興支援や防災は重要なテーマになった。東海6クラブは南海トラフ地震への備えや啓発を進める。鈴木室長は「復興への共通の思いで垣根を越えてつながったのは、社会連携の原風景だ」と考える。

 6日、仙台はホームの川崎戦で、10年前のメッセージビデオに返す形で「感謝のおもいを込めて全力で王者に挑みにいきます」と伝える映像を大型スクリーンで流した。「震災から生まれた絆を大切に守る」。昨年12月に就任した佐々木社長の誓いだ。

 川崎からは、元日本代表MF中村憲剛さん(40)が、19年に引退した太田さんとともにトークショーに出演。陸前高田との交流を率先し、仙台との縁も知るだけに「素晴らしい関係が続いてほしい」と呼びかけた。

 試合後、川崎の選手たちが仙台サポーター席に向かった。コロナ禍で川崎サポーター席はない。一列に並んだ勝者に、総立ちの約9000人から拍手が降り注いだ。(平沢祐、青柳庸介)

無断転載・複製を禁じます
スクラップは会員限定です

使い方
1891678 0 サッカー 2021/03/07 05:00:00 2021/03/11 14:32:33 2021/03/11 14:32:33 サッカー・J1リーグ 川崎1-2仙台 試合開始前、サポーターで黄色く埋まった客席を前に円陣をくむ仙台イレブン。川崎市の等々力陸上競技場で。2011年4月23日撮影。 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/03/20210307-OYT1I50002-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)