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スーパーリーグ構想「頓挫」のその後…米国流に収まらない欧州サッカーファンの怒り

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 欧州サッカーの名門12クラブによる新リーグ「欧州スーパーリーグ(SL)」構想を巡り、混乱が続いている。すでにほとんどのクラブが参加を撤回して構想は頓挫し、競技団体による各クラブへの処分も発表され始めているが、一部のファンによる過激な抗議活動はやまない。欧州に根づくスポーツ文化を軽視した構想への批判をきっかけに、近年のクラブのあり方への不満が一気に噴出している。(ロンドン・岡田浩幸)

リバプール戦前にピッチに乱入し、オーナーの退陣を要求するマンチェスター・ユナイテッドのファンら(5月2日)=ロイター
リバプール戦前にピッチに乱入し、オーナーの退陣を要求するマンチェスター・ユナイテッドのファンら(5月2日)=ロイター

マンUファン、米国人オーナーに退陣要求

 5月2日、イングランドのプレミアリーグ、マンチェスター・ユナイテッド(マンU)―リバプールという伝統の一戦を前に、マンUのファン1000人以上が無観客開催の競技場に集まった。一部がピッチに乱入し、クラブのオーナーである米国人実業家の退陣を要求。警察と衝突し、試合は延期となった。

 両クラブは4月18日、富裕なクラブのみが参加し、米国の金融大手JPモルガン・チェースが約40億ドル(約4300億円)を出資するとされた欧州SLへの参戦を表明し、猛烈な批判を浴びた。ともに2日後に撤回し、幹部らが謝罪したが、騒動は収まっていない。英国の放送局スカイは「Civil War(内戦)」と題して問題を特集している。

 「人生で最も腹が立った。良い時も悪い時もクラブと歩んできたのに、裏切り行為だ」。幼い頃からリバプールファンというロンドンの会社員デイビッド・ブロアさん(48)は憤った。主に学校が運動の機会を提供してきた日本と異なり、欧州ではクラブがスポーツや社会活動の場であり、教会とともに地域社会の核となってきた。1892年創設のリバプールの紋章には、街を象徴する鳥が描かれている。

欧州SL創設にいったん合意した12クラブと欧州サッカー連盟(UEFA)、国際サッカー連盟(FIFA)の所在地
欧州SL創設にいったん合意した12クラブと欧州サッカー連盟(UEFA)、国際サッカー連盟(FIFA)の所在地

ファン「裏切りだ」 プレミア「規律と開かれた競争に反する」

 しかし近年、欧州サッカー界は経営のグローバル化が急速に進む。クラブは投資対象となり、人気クラブの多くは米国や中東の実業家らがオーナーとなった。選手の年俸や移籍金とともにチケット代は高騰している。高い競争力を維持し、また選手を保護するために日々の練習を非公開とするクラブも多く、市民とのつながりが薄れている。元日本代表MF長谷部誠は、2008年からプレーするドイツ1部リーグについて「ビジネスの色が強く、放映権収入や世界での認知度が高まり、環境が大きく変わった」と語った。

 また、欧州SLはエリートのクラブが降格することなく、利益が保証された仕組みだ。野球の大リーグなどに似た「米国式」とされ、欧州サッカー界に根づく上部リーグと下部リーグの顔ぶれが成績に応じて入れ替わる「競争のピラミッド構造」に反する。プレミアリーグは声明で「ファンはいつか地元の愛するクラブが頂点に立つことを夢見ている。新リーグはその夢を破壊する」と閉鎖的な考えを批判。5月3日には「規律と開かれた競争を守るため」に、今後新たな規則を設けることを発表した。欧州サッカー連盟(UEFA)も「(各クラブの)私利私欲だ」などと、欧州SLを構想発表当初から強く批判してきた。

ファンを軽視する構想に抗議し、リバプールの本拠地には欧州SLに反対する横断幕が掲げられた(4月21日)=ロイター
ファンを軽視する構想に抗議し、リバプールの本拠地には欧州SLに反対する横断幕が掲げられた(4月21日)=ロイター

コロナ禍に深まる溝

 欧州SLへの参加を撤回したリバプールなど9クラブは▽UEFAの規則を順守する▽育成年代や草の根のサッカー振興に1500万ユーロ(約20億円)を寄付する▽今後、無許可の大会に参加しようとした場合は1億ユーロ(約132億円)の罰金が科せられることに合意する――などとした宣言書をUEFAに提出し、5月7日に承認された。一方、欧州SL参加を正式に撤回していないレアル・マドリード、バルセロナ(ともにスペイン)、ユベントス(イタリア)の3クラブに対する処分について、UEFAは今後検討するとしている。

 リバプールは昨季の決算で、主に新型コロナウイルスの影響による損失額が約4600万ポンド(約70億円)に上った。マンUなども軒並み大幅な減収となっている。収益強化への焦りが今回の騒動を生み出した面もある。ブロアさんは「クラブがどこを向いているのか、よく見えない」と悲しげに語った。9クラブは早期の事態収拾、信頼回復を図りたい考えだが、本来クラブを支える存在であるはずのファンとの溝は深く、簡単に埋まりそうにない。

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2036493 0 サッカー 2021/05/08 19:00:00 2021/05/10 12:58:25 2021/05/10 12:58:25 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210507-OYT1I50097-T.jpg?type=thumbnail

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