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古い箱物/母校のよう「寂しい」
イタリア・ミラノのサンシーロスタジアムはACミラン、インテル・ミラノの本拠地として親しまれてきた。1920年代に建てられてから改修を重ねてきたが、老朽化は否めない。ロイター通信によると、同国の文化財担当省は昨年「保存すべき重要性はない」とし、取り壊して新スタジアムを作る計画が進む。幾多の名勝負の舞台が建物としてはただの古い箱物、という判断には地元で賛否があるという。

近年はトットナム(イングランド)などが新スタジアムに移った。収容人数が増え、快適性や安全性は向上した。他のイベントを誘致でき、収益面のメリットも大きい。一方で旧競技場の雰囲気を懐かしむファンもまた多い。サンシーロ近くの飲食店で働くニコロ・フォージさん(36)は「小さい頃から通い、母校のようなもの。残す価値がないと言われるのは寂しい」と残念がった。
伝統を守りつつ、時代に合わせて変わることは難しい。近代五種では馬術を五輪の実施種目から外し、「低コスト」「都会的で若い世代に魅力的」などの条件を満たす新種目の採用を目指すが、選手らは「競技の本質が失われる」と反発する。
国際サッカー連盟のワールドカップ(W杯)隔年開催案に対し、OBらは「W杯の威厳が損なわれる」と批判的だ。国際オリンピック委員会は、他競技のスポンサーや放映権収入に及ぼす影響を懸念し、こちらも商業面と伝統が絡み感情的な応酬が続く。
いずれの判断も、その是非は後世に委ねられる。フォージさんには3歳の息子がおり、「新スタジアムが彼の母校になってほしい」と願う。そのために、今は議論を尽くさなければならない。(岡田浩幸)