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お茶目な負けっぷり、砂かぶりでの微笑…カメラマンが見た白鵬「最も撮るのに疲れる力士」

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日馬富士を豪快に転がして、20回目の優勝を果たした白鵬(2011年9月24日、両国国技館で)
日馬富士を豪快に転がして、20回目の優勝を果たした白鵬(2011年9月24日、両国国技館で)

 大相撲の横綱白鵬(36)が引退を決断した。優勝45回、横綱在位84場所、幕内1093勝……。数々の記録を打ち立てた大横綱はその取組を間近で追い続けてきた読売新聞のカメラマンにとっても特別な存在だった。入社以来35年、大相撲を撮影してきた園田寛志郎カメラマン(59)が目撃した白鵬の姿を紹介する。

常道が通用しない、プレッシャーを感じる力士

 カメラマンの相撲取材は、通常2人で担当する。土俵のすぐ下、通常「砂かぶり」と、その東西反対側の2階席から、土俵を挟むように 対峙(たいじ) して撮影する。特に砂かぶりでは、控え力士のすぐ隣で撮影する時もあり、一番近い場所で勝負前の力士を観察できる。

上手投げで大砂嵐を投げ飛ばした白鵬。豪快な投げ技も魅力の横綱だった(2014年7月20日、名古屋場所)
上手投げで大砂嵐を投げ飛ばした白鵬。豪快な投げ技も魅力の横綱だった(2014年7月20日、名古屋場所)

 白鵬は、カメラマン的に最も撮るのに疲れる力士だった。

 相撲の決まり手は、寄り切り、押し出しが常道だが、白鵬の決まり手は多彩。特に投げ技がダイナミックな力士だった。動き出して技が決まるまで、コンマ何秒の世界。四つに組み合うと、その後は居合切りのような世界で、白鵬の肩や腕がピクリと動いた瞬間に、シャッターを押し始める。寄り切り、押し出しで決まりそうだな、と思っても、白鵬の場合はいつ投げ技が出てくるか分からないから、最後まで細心の注意を払わなければならない。

 圧倒的な強さもカメラマンにはプレッシャーだった。歴代最多の45回優勝、横綱に昇進した2007年以来、ほぼ2回に1度は白鵬が優勝している。滅多に負けない横綱が負けるシーンは即、紙面写真に直結するのだ。勝っても負けても、絵になる、いや、絵にしなければならない力士だった。

大一番の前にあぐらの足先が…

千秋楽で優勝を決め、場内の声援に両手を挙げて応える白鵬。笑顔も素敵な横綱だった(2014年7月27日、名古屋場所・愛知県体育館で)
千秋楽で優勝を決め、場内の声援に両手を挙げて応える白鵬。笑顔も素敵な横綱だった(2014年7月27日、名古屋場所・愛知県体育館で)

 砂かぶりでの姿も印象に残っている。

 通常は取組の2番前に、力士は土俵下に控え、取組を待つ。コロナ禍以前は、砂かぶりに東西10人近いカメラマンが待機しており、あぐらをかいて撮影する。取り組み前の力士は当然、緊張していて、カメラマンの足先が力士に触れようものなら、すごい 剣幕(けんまく) でにらまれたりする。

魁聖を上手投げで下し、通算1000勝を達成した白鵬。「どんなもんだ」という表情が印象的だった(2016年11月15日、両国国技館で)
魁聖を上手投げで下し、通算1000勝を達成した白鵬。「どんなもんだ」という表情が印象的だった(2016年11月15日、両国国技館で)

 ただ、白鵬はちょっと違った。とある場所の千秋楽、優勝がかかった大一番の前に、白鵬の隣に座る機会があった。あぐらで組んだ足先が体に触れ、「すみません」と謝ると、白鵬は一言、「狭いね」と言って微笑した。緊張感の中で、この余裕はどこから来るのかと思った。

体の美しさ、細い足首にほれぼれ

稀勢の里に小手投げで敗れた白鵬。63連勝で記録を止められたのも、稀勢の里だった(2011年9月22日、両国国技館で)
稀勢の里に小手投げで敗れた白鵬。63連勝で記録を止められたのも、稀勢の里だった(2011年9月22日、両国国技館で)

 そんな一面もありながら、白鵬は取組前に仕切りを重ねる中で、だんだん色白の体や顔が紅潮していく。最後の仕切りが終わり、気合を入れて足早に塩を取りに行く時の姿は、まるで「戦う前の猛獣」のような感じで、好きであった。

 白鵬の強さの秘密として、「相手の圧力を吸収してしまうようなしなやかな体」があげられることが多い。ただ、個人的に驚いたのは、彼の足首の細さだ。

 最初に気づいたのは、砂かぶりで隣に座った時。「あれ? 自分の方が太いかも」と感じ、それから意識して幕内力士の足首を見るようになったのだが、力士の体重にかかわらず、白鵬の足首はきわだって細く、小兵力士並みだった。太い筋肉質のふくらはぎから、シュンと細くなる足首は、本当に美しく、取組での俊敏な足さばきは見ていてほれぼれするものがあった。

終盤にみせた金星力士への視線は…

勝ち名乗りを受け、懸賞を受け取る白鵬。身体を紅潮させ、手刀を切った(2019年3月15日、大阪府立体育館で)
勝ち名乗りを受け、懸賞を受け取る白鵬。身体を紅潮させ、手刀を切った(2019年3月15日、大阪府立体育館で)

 白鵬の豪快な投げ技はフォトジェニックでカメラマンを喜ばせる力士であったが、個人的には負け姿にも魅力があったと思っている。土俵際、ダメだと思うと、お茶目に負けるのである。

 「おっとっと」とか「やられたあ~」みたいな感じで。そして、負けた後、苦笑いする。とくに力士人生の終盤、自分を負かした金星力士を、「強くなったな、よくやった」とほめているような視線すら感じることがあった。

 私の思い違いかもしれないが。

2021年3月場所初日、横綱土俵入りを披露する白鵬(2021年3月14日、両国国技館で)
2021年3月場所初日、横綱土俵入りを披露する白鵬(2021年3月14日、両国国技館で)

  園田寛志郎  1986年入社、北海道支社、週刊読売編集部、東京本社写真部。東京外国語大学モンゴル語学科卒、モスクワ大学ロシア語コース修了。ただ、モンゴル語はさほど得意ではなく、かつて旭鷲山に「君がモンゴル語を話すより、俺が日本語しゃべったほうがはやいだろ」と言われた。ロシア語は得意で、ジョージア出身の栃ノ心とはロシア語で話せる。読売新聞写真部の公式ツイッターでは(寛爺)の名前で、写真を投稿中。

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使い方
2401019 0 大相撲 2021/09/28 18:39:00 2021/10/02 13:00:56 2021/10/02 13:00:56 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/09/20210928-OYT1I50102-T.jpg?type=thumbnail

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