[飛躍陵侑]<上>若き鳥人 歴史刻む…W杯総合V

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個人総合優勝を決め、日の丸を掲げて喜ぶ小林陵=岡田浩幸撮影
個人総合優勝を決め、日の丸を掲げて喜ぶ小林陵=岡田浩幸撮影

 【オスロ=岡田浩幸】10日にオスロで行われたスキージャンプのワールドカップ(W杯)男子個人第23戦(HS134メートル、K点120メートル)で、小林陵侑(土屋ホーム)が5位に入り、日本男子初の個人総合優勝を決めた。127メートル、126メートルを飛んで5位となり、この日13位に終わった総合2位のカミル・ストッフ(ポーランド)が残り5戦を全勝しても、逆転される可能性がなくなった。昨季の最高6位から今季は11勝と急成長し、40年のW杯史上、欧州勢以外で初めて頂点に立った22歳の飛躍の秘密を探る。

 

脳波トレで「鉄のハート」

 雲一つない青空の下で行われた10日のW杯。スタート地点のノルウェー国旗は、強風ではためいていた。

 年間王者争いで逆転の可能性を残すのは、総合2位のストッフのみ。気象条件や相手に集中力を乱されてもおかしくなかったが、13位に沈んだライバルを見ても、小林陵は冷静だった。「ラストはすごくいいジャンプができた」。試技では93メートル50と失敗していたが、本番は2本ともしっかりまとめ、今季最強ジャンパーであることを証明した。

 誰もが認める潜在能力を持ちながら、昨季までは1回目で上位につけても、2回目は「緊張で汗だくになって、頭が真っ白になる」と、体が思うように動かせないのが弱点だった。今は「緊張はしても、それが悪い方には出ない」。1月6日のジャンプ週間最終戦では、1回目のスタート前に待たされ、雪が積もった助走路でスピードが出ず4位にとどまったが、2回目にこの回最長の137メートル50を飛んで逆転、4戦全勝で優勝を決めた。精神面の弱さは、過去のものになった。

 ガラスのハートを鉄に変えたのは、専門家の指導で昨年から取り組み始めたメンタルトレーニングだ。

 小林陵の脳波トレーニングを担当するNFBスタジオ横浜(横浜市)の林愛理代表によると、小林陵は、動作の微妙な違いを認識する脳の部位の活動が「何百人と見てきた中で、人並み外れて優れていた」。ところが、緊張すると活発になる周波数の脳波が強すぎ、「能力を100%生かせていなかった」。このため、その脳波を抑え、理想的な集中状態の時に出る脳波を強める訓練を積んだ。

 電極が付いた帽子のような装置をかぶった状態で、リフトに乗ってスタート地点に向かうところから、試合をイメージすることを繰り返した。目標とする脳波が出れば音が鳴る仕組みだったが、小林陵は難度を上げても、次々にクリアしていった。

 「目標値は一般の人では到達できないレベルに引き上がった。緊張時に出る周波数の脳波は減り、より集中できるようになった」と林さん。「ゾーン」と呼ばれる領域を自ら作り出すすべを身につけ、思い通りに体を動かせるようになった小林陵は、「絶大な効果がある」と感謝する。

 一瞬の動きが勝敗を左右するのがジャンプ競技。緊張という大敵を克服したことが、歴史的快挙への大きなステップとなった。

 

[斎藤浩哉の目]国内競争にも好循環を

 私たち日本男子が挑み続け、誰も成し遂げられなかったことを、小林陵は5試合も残して達成した。快挙を心からたたえたい。

 4か月超のシーズンは長く、疲労も蓄積するから、どんな選手でも調子の波は必ず出る。にもかかわらず、シーズン終盤でもトップレベルの競技力を維持しているのは、精神的にも肉体的にも成長した証拠だ。

 3年後の北京五輪での活躍を早くも期待したくなるが、世界は甘くない。来季は打倒・小林陵を目標に各国の強化が進み、勝ち続けることはより難しくなるだろう。快挙に安心していては足をすくわれる。日本は小林陵に続く柱もしっかり育てる必要がある。

 「陵侑ができたのだから次は自分も」と奮起する若手も多いはず。小林陵という起爆剤を生かし、国内競争に好循環を生み出したいところだ。(長野五輪ジャンプ団体金メダリスト)

483082 1 ウインタースポーツ 2019/03/12 05:00:00 2019/03/12 05:00:00 2019/03/12 05:00:00 個人総合優勝を決め、日の丸を掲げて喜ぶ小林陵(10日、オスロで)=岡田浩幸撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/03/20190311-OYT1I50111-T.jpg?type=thumbnail

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