山あいの町に県外からも部員が集まる…広島・県立佐伯高の女子硬式野球部は「地域の希望」

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 女子野球が盛り上がっている。彼女たちはどんな思いを抱き、何を目指して白球を追うのか。女子野球に関わる人たちを紹介する。

【#野球しよう・彼女たちと白球】初の甲子園出場校 元コーチの男性…女子野球 夢のつづきを 消防士辞め進学、明治大に同好会結成

部員たちが運営もSNSも

 広島県廿日市市の市街地から車で約30分の山あいに、県立佐伯高はある。周辺は田園が広がり、冬は雪に覆われる。女子硬式野球部副主将の中島 愛莉奈えりな (2年)は、大阪府豊中市から来た。

 中学の軟式野球大会で広島を訪れた時、佐伯高の部員が献身的に運営を手伝う姿に感動した。

 部員はフェイスブックやツイッターなど専用SNSを作り、積極的に投稿してPRしていた。そこで見た野球への情熱を込めたメッセージ、絆で結ばれている様子に魅力を感じた。

下宿先の沼座さん夫婦宅で夕食を囲む中島愛莉奈(左から3人目)、舞雪花(右端)ら佐伯高部員。公立校の女子野球部を地域が支える=吉野拓也撮影
下宿先の沼座さん夫婦宅で夕食を囲む中島愛莉奈(左から3人目)、舞雪花(右端)ら佐伯高部員。公立校の女子野球部を地域が支える=吉野拓也撮影

 遠く離れた地方への進学にも、親は「行ってこい」と背中を押してくれた。1年後に妹の 舞雪花まゆか (1年)も入部した。愛莉奈は「学年による上下関係がなく何でも話し合える。野球に向き合う姿勢は厳しく、成長できる」と言う。3年生7人が引退し、現在7人の部員は近い距離感で高め合う。

創設時の部員は2人

 2015年、広島県内初の女子硬式野球部として部員2人で創部。背景には学校の存続問題があった。過疎化で減少した生徒数は、80人を切る可能性が高まっていた。80人は2年連続で下回ると統廃合の検討対象となるラインだ。野球を続けたい女子選手の進路は全国でも少ない。その受け皿となることに、学校と住民は活性化の活路を見いだそうとした。

 地域の公立校を支えようと、街ぐるみの後押しが始まった。県外出身の部員のために同窓会長らが地域を回り、4件の下宿先を確保した。朝夕食付き(平日)で月6万円。中島姉妹ら6人を受け入れている沼座暢夫さん(75)は「孫のよう」と目を細め、妻の直子さん(70)も「元気をもらえる」と話す。

女子野球タウン認定、地元企業も応援

 その後、県内の高校に女子野球部が新設され、部員数が減った時期もあった。そこに追い風が吹く。全日本女子野球連盟が20年9月、普及に協力する自治体にイベント開催支援などを行う「女子野球タウン認定事業」を開始した。廿日市市は同年末に認定を得て、支援をさらに充実させた。月2万円だった下宿代の補助を3万円に増額。地元企業はグラウンドの黒土や照明設備を提供した。

 同市教育委員会の新中安幸・スポーツ推進担当課長は「地域の希望の光として佐伯高の役割は大きい。女子が野球を続け、みんなが応援できるようになれば楽しい街になる」と期待する。

 創部から約7年、公式戦で未勝利。「練習量は強豪に劣らない」と言う犬塚慧監督は勝負に執着せず、選手が自ら考えて行動するチーム作りを掲げる。練習計画班、広報班など4班に分かれ、チームのために働く。

グラウンドの外でも全力

 野球だけでなく勉強にも力を入れ、昨年度は部員4人が国公立大に進学した。グラウンドの外でも全力を尽くす姿が海外の生徒も引きつけた。ソフトボールU18(18歳以下)台湾代表・チューイーシュエン(16)は指導者らの勧めもあって佐伯高に憧れ、留学する予定だ。

 「夢は全国大会で私立の強豪校を倒すことです」。中島姉妹は部の魅力を発信する側になり、昨年10月にメッセージ動画をSNSに投稿した。生徒数は昨年度88人、今年度76人だが、女子野球部は今春、多くの新入生部員を見込む。

 女子硬式野球部がある全国43校中、公立校はわずか4校。佐伯高は地域を照らしている。(中村孝)

女子野球タウンとは

 全日本女子野球連盟が、競技を通して地域活性化を目指す自治体を公募し、普及活動やイベント開催などの計画を審査して認定する。自治体は「女子野球タウン」の名称をPRに活用でき、連盟は女子日本代表の派遣や情報提供などを通して支援する。現在は埼玉県加須市、佐賀県嬉野市など全国10自治体を認定。広島県廿日市市では昨年3月、日本代表を招いての野球教室を開催した。

スクラップは会員限定です

使い方
「スポーツ」の最新記事一覧
2688733 0 野球一般 2022/01/20 13:59:00 2022/01/20 14:55:52 2022/01/20 14:55:52 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/01/20220120-OYT1I50081-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)