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    スマホに話すと外国語に

    自動翻訳の開発がどうなっているのか知りたい

    • 医師や看護師が首にかけて使用し、音声を自動翻訳してくれるウェアラブル端末の画像を紹介する隅田さん
      医師や看護師が首にかけて使用し、音声を自動翻訳してくれるウェアラブル端末の画像を紹介する隅田さん

     2020年の東京オリンピック・パラリンピックまであと2年。英語は苦手だけど外国から来る人と話したい――。そんなねがいをかなえてくれそうなのが、自動翻訳ほんやく技術ぎじゅつです。その開発を進めている情報じょうほう通信研究機構きこう(NICT)の隅田英一郎すみたえいいちろうさんに、自動翻訳の最前線さいぜんせんについて聞きました。

     近年急速に精度せいどをあげているという自動翻訳。隅田さんによると、日本は中でも音声翻訳の研究を1986年、世界に先駆さきがけてスタートさせたそう。その技術は、総務省傘下そうむしょうさんかのNICTが開発した「VoiceTra(ボイストラ)」という、無料むりょうのスマートフォン用多言語音声翻訳アプリに生かされています。

     さっそく隅田さんが、このアプリを自分のスマホで使ってみせてくれました。日本語で「前の道をまっすぐ行って、四つ目の交差点こうさてんを……」とスマホに話しかけると、すぐに聞きれない外国語の音声が返ってきました。「今のはミャンマー語です」と言われ、私たちは目を白黒。

     そのしくみは、スマホから入力された音声がネットワーク上のNICTのサーバーへ送信され、そこで翻訳されて、対訳の音声がスマホに返ってくる、というもの。スマホの画面上には、んだ日本語とその翻訳、さらにその翻訳された外国語から日本語に訳し直された文が瞬時しゅんじ表示ひょうじされます。利用者が、自分の発言が正しく翻訳されたかその場でチェックできる、という工夫くふうです。

    31言語に対応

    • VoiceTraで日本語をミャンマー語に翻訳させた時のスマホ画面。一番上は、利用者が話しかけた日本語。真ん中はミャンマー語の翻訳。その下は、ミャンマー語の翻訳から改めて日本語に訳した内容。これで、利用者の話が正確に伝わったか確認できる
      VoiceTraで日本語をミャンマー語に翻訳させた時のスマホ画面。一番上は、利用者が話しかけた日本語。真ん中はミャンマー語の翻訳。その下は、ミャンマー語の翻訳から改めて日本語に訳した内容。これで、利用者の話が正確に伝わったか確認できる

     翻訳の性能せいのうは、英語の場合「990点満点まんてんのTOEICで900点取れる」と隅田さん。「スマホからインターネット接続せつぞくをするため、データ通信料はかかります」。現在げんざい、英語、中国語、韓国語かんこくご、フランス語など31言語(一部、音声対応たいおうのないものをふくむ)に対応。300万人が利用しているそうです。

     やく30年間、自動翻訳の研究一筋ひとすじという隅田さんに、初めて音声翻訳が成功せいこうした90年代初めの映像えいぞうを見せてもらいました。1文を翻訳し始めるのに30秒もかかり、「実用には向かなかった」と、隅田さんは振り返ります。

     それが近年は、人工知能(AI)に情報を分析ぶんせき・学習させる「ニューラル機械きかい翻訳」という、人間の神経しんけい回路をしたしくみが取り入れられ、開発当初と比べ、翻訳の速度も精度も段違だんちがいに改善かいぜんされました。自動翻訳の開発はGoogleなども行っていますが、VoiceTraの強みは「日本語に強いこと」と、隅田さんは強調します。

     2014年、総務省は「グローバルコミュニケーション計画」を発表。国家プロジェクトとして、「言葉のかべ」のない社会を20年のオリンピックで世界に発信する、としています。計画の下、NICTには40もの企業きぎょうから専門家せんもんかが集まり、共同で研究開発を進めているそうです。

     翻訳の精度をさらにあげるためには、より多分野の、信頼しんらいできる訳文のついをAIにあたえるのが不可欠ふかけつ。そこでNICTは、総務省とともにデータを集める「翻訳バンク」の運用を昨年秋、開始しました。企業や団体から翻訳データを提供ていきょうしてもらうのです。「契約けいやく関係など、翻訳れいがもっと必要ひつような分野はある」と隅田さんは話していました。

    医療などで実用化

     この技術は、すで救急きゅうきゅう医療いりょうなどの分野で実用化が始まっているそうで、診療しんりょう看護かんごなどで両手がふさがりやすい医療現場げんば用には、音声に反応はんのうする、首かけ式のウェアラブル端末たんまつも作られていると教えてくれました。また、インターネット通信なしで使える翻訳機を開発、販売はんばいしている企業もあるということです。

     こうなると、私たちが外国語を勉強する意味はあるのか、という疑問ぎもんもわいてきます。隅田さんは「二つの考え方がある」と言います。「自動翻訳のあやまりを修正しゅうせいできる程度ていどの語学力を身につけるか、あるいは、『語学は機械にまかせて、その時間をほかのことに使う』というもの」。また、「英語は勉強するけれど、中国語、韓国語は機械に任せる、ということもできる」といい、外国語への取り組み方の選択肢せんたくしえるようにも思えました。

     今後私たちは語学を学習するうえで、日進月歩のAI翻訳を上手に利用しつつ、異文化いぶんか理解りかいする姿勢しせいうしなわない、そんなバランス感覚かんかくを大事にしていきたいと感じました。(高1・若尾美紀わかおみき、中3・遠田剛志えんたつよし、中2・池田麻里子いけだまりこ、中1・池上花音いけがみかのん記者、撮影さつえい佐々木紀明ささきのりあき

    2018年06月25日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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