日本書紀の「赤い気」って何のことだった?

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オーロラ 飛鳥の「雉の尾」

 日本書紀にほんしょきに、飛鳥あすか時代のオーロラを描写びょうしゃした記述きじゅつがある――。国立極地きょくち研究所(東京都立川市)などが3月、注目の研究成果せいかを発表しました。科学と歴史、両分野の協力で結実けつじつしたものです。この研究を進めた極地研の片岡龍峰准教授かたおかりゅうほうじゅんきょうじゅ(43)に、研究の意義いぎなどについて話を聞きました。

日本でも見られる

江戸時代に描かれたオーロラとみられる赤い扇形の絵。飛鳥時代のオーロラも同じような形だったと推定される(三重県松阪市提供)
江戸時代に描かれたオーロラとみられる赤い扇形の絵。飛鳥時代のオーロラも同じような形だったと推定される(三重県松阪市提供)

 オーロラは太陽から放出されたプラズマ(太陽風)の影響を受け、宇宙の電子が100~1000キロもの上空の高層こうそう大気中の酸素さんそ原子と衝突しょうとつすることで発生する発光現象げんしょう。北極や南極などの極地で見られますが、太陽で爆発ばくはつが起こり、大量たいりょうのプラズマが放出されて地球の磁気じきみだれる「磁気あらし」が生じると、日本のような中緯度地域ちゅういどちいきでもオーロラを見ることができるそうです。

 1300年前(720年)に編纂へんさんされた古代の歴史れきし書である日本書紀には、「天に赤い気があらわれた。長さは一丈余じょうあまり。形はきじに似ていた」(現代語やく)とする620年の記述があります。この「赤い気」とは何か。オーロラ以外にも彗星すいせいであると主張しゅちょうする研究者もいて、長く議論ぎろんされてきました。

 片岡さんは、2015年から、理系りけい・文系の研究者が協力してオーロラの実態を解明かいめいするプロジェクトに取り組んできました。その一環いっかんで、江戸時代(1770年)に、京都など多くの地域で赤いおうぎ形のオーロラが見え、史上最大規模きぼの磁気嵐が発生していたことなどを2017年にき止めました。そして、この扇形のオーロラが、日本書紀の「赤い気」と関係かんけいがあるかもしれないという仮説かせつを立てたのです。

天文学と国文学

 研究では、「雉の尾の形に似た」という記述に着目。キジは、尾羽を扇形に広げて求愛きゅうあいする習性しゅうせいがあり、まさに中緯度地域で見られるオーロラの形と共通しています。彗星の尾は赤く光らないという天文学の知識ちしきも、オーロラせつ補強ほきょうしました。片岡さんが、「日本最古の天文記録きろくである可能性かのうせいが高い」と強調するように、飛鳥時代の夜空にかがやいたオーロラの実態じったいを解き明かした研究成果であることから、3月に大々的に発表されたのです。

 今回の研究は、片岡さんが所属しょぞくする極地研と、日本書紀などの国文学を研究する「国文学研究資料館」に所属する研究者による共同研究でした。

 日本書紀をはじめ、むかし文献ぶんけんを読み解く文系的な視点してんと、オーロラや彗星の科学的な分析ぶんせきという理系的な視点の両方からアプローチをしたといいます。

 極地研と国文研は同じ敷地しきち内にあり、今回のように、共同で研究をする場合、意見交換こうかんがしやすいといいます。片岡さんも、「非常ひじょうめぐまれた環境かんきょうだった」とり返っていました。

共同研究の成果

 「専門せんもん分野をきわめた研究者同士どうしが協力することで新たな発見が生まれるのが、共同研究の意義。自分の専門からはなれていればいるほど、意外なチャンスがひそんでいるのかもしれません」と片岡さんは言います。

 研究者が専門を究めた“プロ”であるというのは、片岡さんのこれまでの歩みを聞いてもよくわかりました。

 大学生の時に、オーロラの研究を専門にすると決めてからは、極寒ごくかんのアラスカ(米国)やカナダなどで、長期にわたる調査を行ってきたそう。そして、その成果を論文ろんぶんにまとめ、研究者の世界でみとめられるためにも、大変な努力を重ねています。

 レベルの高い研究者同士の高度な知の「かけ算」により、今後も新たな世界が解明されることを期待したいです。

 そして、自分の得意とくい分野に閉じこもらず、違う分野の人たちとも積極的せっきょくてきにコミュニケーションを取り、柔軟じゅうなんに意見を取り入れることは、我々ジュニア記者にとっても大事なことだと思いました。新しい世界に積極的に挑戦ちょうせんする姿勢しせいを、つねに忘れずにいたいと思います。

 (高3・蟹田光かにたひかる、高2・野部芙香のべふうか、中3・丹羽美貴にわみき、中1・中野和貴なかのかずき記者)

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1180495 0 キッズニュース 2020/04/27 05:20:00 2020/04/27 05:20:00 2020/04/27 05:20:00 江戸時代に描かれたオーロラとみられる赤い扇形の絵。飛鳥時代のオーロラも同じような形だったと推定される。三重県松阪市提供。2020年3月16日撮影。同日夕刊「扇形オーロラ 飛鳥の夜空に 日本書紀「(N)の尾に似た赤い気」」掲載。提供写真。国立極地研究所と国文学研究資料館のチームは、日本最古の正史「日本書紀」に、飛鳥時代のオーロラを描写した記述があるとする研究成果を発表した。620年12月30日の出来事として記述されており、極地研の片岡龍峰准教授は「日本最古の天文記録である可能性が高い」と指摘する。研究チームは、「天に赤い気が現れた。長さは一丈余り。形は(N)(きじ)の尾に似ていた」(現代語訳)という一節のなかで、「(N)の尾に似ていた」という表現に着目した。近年の研究で、江戸時代に赤い扇形のオーロラが現れたことが判明しており、「赤い気」はオーロラをキジの羽に例えて描写したものと推測した。 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/04/20200420-OYT8I50015-T.jpg?type=thumbnail

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