【読んだよ 読もうよ】テーマは「ゾクッとする話」

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 梅雨つゆが明ければ本格的ほんかくてきな夏到来とうらい。3回目のテーマはすずしくなれる?「ゾクッとする話」です。

異界の橋がつなぐもの…小6・池上記者

伊藤遊作/太田大八画
伊藤遊作/太田大八画

 「あの世へ行く時、ひとは三途さんずの川をわたる」と、みなさんも耳にしたことがあるでしょう。『おにの橋』(福音館書店)では、この世とあの世の間に、鬼がひそむ橋が現れます。

 舞台ぶたいは平安時代の京都。腹違はらちがいの妹をれて遊びに出かけたれ寺で、古井戸に落ちた妹が死んだことで自分をめる少年たかむらは、ある日、その井戸から、あの世につながる橋にまよみます。橋には人を食らう鬼がおり、死者である征夷大将軍坂上田村麻呂せいいたいしょうぐんさかのうえのたむらまろが、橋を渡れないまま都を鬼から守っていました。篁はこの世と、異界いかいの橋を行き来するようになります。

 現世で篁は、身寄みよりのない少女阿子那あこなと、阿子那と行動をともにすることで、人を食わなくなった鬼、非天丸ひてんまると知り合います。ぼくが心を動かされたのは、あの世から来た鬼から2人を守るため、篁が、田村麻呂にもらったゆみで、自分の身をかえりみずにたたかう場面です。

 この物語では、橋が、人と人をつなぐ重要じゅうよう役割やくわりたしています。篁が、阿子那や非天丸との友情や、田村麻呂との語らいなどによって、成長せいちょうしていく姿すがたさわやかです。

「平和」なコミュニティーの闇…高2・伊東記者

ロイス・ローリー作/島津やよい訳
ロイス・ローリー作/島津やよい訳

 『ギヴァー 記憶きおくを注ぐ者』(新評論)の主人公は、全ての事柄ことがら管理かんりされ、規律化きりつかしたコミュニティーで生きるジョナス。12歳になった彼が任命にんめいされた職業しょくぎょうは、かつて人々が保有していた様々な記憶を受けぐ「レシーヴァー」でした。「ギヴァー」から記憶を受け取るにつれ、彼はコミュニティーの空虚くうきょさとやみに気付いていきます。

 コミュニティーには、いたみもえも、孤独こどくもありません。私は初め、これこそが「平和」なのではないかと思いました。しかし、不測ふそく事態じたいけるための「同一化どういつか」の結果、多くのものが失われていたのです。

 ジョナスが戦争せんそう飢餓きが、雪や虹、そして「あい」の記憶を受け継いでいくにつれ、周囲しゅういの人々との気持ちのへだたりは大きくなり、ジョナスはついに、ある決断をすることになります。

 ジョナスがもとめた幸せと、痛みのないコミュニティー。この二つのどちらが正しいのか、私には分かりません。少なくとも今は、痛みを知るからこそ得られる、相手をおもんぱかる心や、痛みにやさしさを大切にしていきたいと思いました。

怖いもの 人間の心にも

張替恵子/東京子ども図書館理事長
張替恵子/東京子ども図書館理事長

 暑い夏、ゾクッとする話ですずむのはいかが?

《1》オトフリート・プロイスラー作/佐々木田鶴子訳/スズキコージ絵
《1》オトフリート・プロイスラー作/佐々木田鶴子訳/スズキコージ絵

 『地獄じごくの使いをよぶ呪文じゅもん』(小峰書店)《1》には、ドイツに伝わる悪魔あくまや魔女の話が13入っています。冒頭ぼうとうの「ここにサインを!」は、ファウスト博士はかせが、悪魔メフィストフェーレスと契約けいやくむすぶシーン。24年の契約期間がぎたら、博士のたましいは地獄へとちなければなりません。それでも博士は誘惑ゆうわくに負け、自らの血で契約書にサインします。その瞬間しゅんかん、心のおく深くでふるえが……。この本をまとめた児童じどう文学作家プロイスラーが各々おのおのの話の背景はいけいをやさしく解説かいせつ。気に入った人にはつづきが2さつあります。

《2》蒲松齢作/立間祥介編訳
《2》蒲松齢作/立間祥介編訳

 『聊斎志異りょうさいしい』(岩波書店)《2》は、中国・しん時代の作者が、道行く人や友人から聞いた妖怪ようかい仙人せんにん幽霊ゆうれい等の494へんをまとめた短編集から31編を紹介しています。地獄の閻魔王えんまおう補佐役ほさやくが、男のはらわたやそのつまの頭を死者のものと入れえる「首のすげかえ」、戦乱せんらん犠牲ぎせいとなった娘と生きている男が結婚けっこんする「幽鬼ゆうきの村」など不気味な話もあれば、きくせいが見事な菊を育てる「菊の姉弟」のようなあやしく美しい話もあり、次々と読みたくなります。

 てのひらサイズのお話集『おはなしのろうそく32』(東京子ども図書館編・刊)は、こわい話ばかり集めた特別版とくべつばん。チロルの「しゃれこうべ」、朝鮮ちょうせんの「ヘビのうらみ」、スペインの「いかけ屋と幽霊」等、全部で5話。声に出して読むと一層いっそうたのしめます。

《3》オットー・シュタイガー作/高柳英子訳
《3》オットー・シュタイガー作/高柳英子訳

 怖いものは人間の心の中にもひそんでいるかもしれません。『泥棒をつかまえろ!』(童話館出版)《3》では、スイス・ベルン市の学校に通う15歳のペーターが、夏休みの出来事を語ります。4年E組16人の男子生徒は、担任たんにん夫妻とともに、アルプス山中にキャンプに出かけます。その後、旅行費用ひようがなくなったことが判明はんめい通報つうほうを受けた警官けいかんは、犯人を、窃盗せっとうでつかまり、脱走だっそうしたばかりのイタリア人にちがいないとげます。気のはやる少年たちと先生は、国境こっきょうえてげるであろう犯人を追跡ついせき、山小屋で見つけてふくろだたきにします。

 重傷じゅうしょうを負った彼を警察に引きわたして明らかになった衝撃しょうげきの事実。「君たちには何がおこったんだね?」と問う医者。正義感せいぎかんがいつ何時、残虐性ざんぎゃくせいに変わるかもしれない、という恐ろしさを実感する作品です。

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1370310 0 キッズニュース 2020/08/03 05:20:00 2020/08/03 05:20:00 2020/08/03 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/07/20200728-OYT8I50010-T.jpg?type=thumbnail

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