五感のつらさ 除きたい
コロナ禍で今や着用が当たり前になったマスク。しかし、様々な理由でマスクを着けたくても着けられない人がいます。12歳、中学生で起業した加藤路瑛さん(14)は、自ら「感覚過敏」と呼ばれる症状を抱え、同じ症状を持つ人たちが暮らしやすい社会を目指して商品開発や啓発活動を行っています。
中1の時に起業
感覚過敏は、病気ではなく、視覚や聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの感覚が過敏になる状態を言います。個人差があり、マスクを着けただけで針で刺されるようにチクチク感じる人から、かゆいと感じるぐらいの人まで様々で、加藤さん自身も「着られる服が限られたり、食べられるものが少なかったりする」そうです。
幼稚園の頃から「働くことに憧れていた」という加藤さん。周りの人からは「大人になってからね」と言われ、そういうものだと思っていたといいますが、中学1年のとき、小学生で起業した少年が開発したカードゲームに出合い、子どもでも起業し、働けることを知りました。当時の担任の先生に相談したところ「事業計画書にしてみて」と言われ、「自分は何をしたいのか、できるのか」を考えたそうです。
中1の12月、母親を代表取締役、自分は社長として会社を起こしました。社名は、自分の名前から「光り輝く道をみんなで歩めるように」という願いを込め、水晶の道という意味の「クリスタルロード」としました。起業資金は、インターネット上のクラウドファンディングで募り、約115万円が集まりました。
自分目線で開発
オンラインの取材で、感覚過敏をキャラクター化したバッジを見せてくれる加藤さん
せんすマスクや感覚過敏を知らせるバッジと意思表示カード(加藤さん提供)
メインの事業は「感覚過敏研究所」です。自分自身をターゲットにして、自分がほしい商品、自分の
課題
を
解決
できる商品を開発しました。外見からは分からない感覚過敏を
可視化
しようと、ネット上で
運営
するコミュニティーのメンバーとそれぞれの感覚過敏をハリネズミやウサギ、コアラなどのキャラクターで知らせるバッジを作り、さらに、マスクを着けられない人のための
意思表示
カードや、
肌
に
触
れず手に持って
飛沫感染
を
防
ぐ「せんすマスク」も
作製
しました。「マスクを着けずに学校に行けるようになった」「周りに理解してもらえた」といった声が
寄
せられているそうです。
現在
中3の加藤さんは、中2のとき転入した
通信制
の
私立
中学へ週1回通学しています。これまでは
周囲
の音や声、食事のにおいなどで気分が
悪
くなったりすると「わがままだ」などと言われたこともあるそうですが、今は学校の勉強と
並行
して仕事していることで、「学校だけではできなかった体験ができ、会えなかった人に会えた」と話します。
今後は、感覚過敏の人向けの服や
靴下
などを作るアパレルブランドや、
静
かで五感に
優
しいカフェなどを作りたい、と
構想
しています。
最終的
な
目標
は「感覚過敏をテクノロジーで解決すること」。
敏感
な感覚はデメリットだけでなく、
料理
や音楽など様々な分野に生かせる
可能性
を感じているからです。だからこそ、感覚過敏によるつらさを
技術
によって取り
除
きたい、と考えているそうです。
「働くことは楽しいし、社会の役に立てる。ビジョン(
未来像
)があれば、
批判
を受けても自分の道を進み
続
けられる」と加藤さん。「何かやりたいと思ったら、やらない理由を作らず、今やった方がいい」との言葉に、同世代として
刺激
を受けました。
私
たちも、目標にためらわず
挑
んでいきたいと思いました。
(高2・
西山寿奈
、高1・
田中優衣
、中2・
久慈紗緒里
、中1・
青島
アティーシャ・アンジェロ、小6・
中島
あかね記者)