戦火の国の子へ 贈り物
小学校6年間の思い出が詰まったランドセル。使い終わった後、皆さんはどうしていますか? 国際協力NGO「ジョイセフ」(東京都新宿区)は、15年以上にわたって、使用済みのランドセルをアフガニスタンの子どもたちに贈る活動を行っています。
日本のNGO アフガン支援…鉛筆や跳び縄も
ランドセルをもらい、目を輝かせて喜ぶ女の子(国際協力NGOジョイセフ提供)04年から
ジョイセフは元々、戦後の日本で学者や医療関係者らが連携して女性や子どもを支援していた団体でした。その後、国内の支援対象が減ったのを機に、国連などからノウハウを海外で役立てては、と声を掛けられ、1968年に発足した“日本生まれ”のNGO(民間活動団体)です。現在は、アフリカを中心に女性や子どもの支援をしているほか、国内では被災地へ支援物資を送るなどの活動を行っています。
アフガニスタンにランドセルを贈る「思い出のランドセルギフト」活動を担当しているジョイセフの甲斐和歌子さん(44)によると、この活動はランドセルの素材メーカーから使用済みのランドセルを再利用できないかと相談を受け、2004年から始まりました。
数十年にわたって内戦が続いているアフガニスタンでは、女性や子どもは病院や学校になかなか来られず、様々な情報や知識を伝えることもできません。ランドセルを配れば子どもたちが学校に来るようになり、そうしたことを知らせることができるのではないか――とこの活動が始まりました。
22万個以上
ランドセルを贈っているのは、アフガニスタンの中でも特にテロ活動が多く、教育が影響を受けている東部のナンガハール州。ランドセルは国内の倉庫に集められ、一つひとつチェックしてコンテナ船でパキスタンの港まで運びます。そこからトラックに載せ、陸路で学校に届けます。現地のNGOと連携を密にして、どこに配るか、無事配れるか、を確認して、これまでに22万個以上を届けたといいます。
多くの子は教科書やパンを使い古したポリ袋に入れたり、直接手で持ったりして学校に通っているそう(国際協力NGOジョイセフ提供) 贈るのは、小学1~3年生。普段は教科書を手で持ったり、使い古したポリ袋などに入れたりしていた子どもたちが、ランドセルを受け取って目を輝かせる様子が「励みになる」と甲斐さん。ランドセルは、贈った子のきょうだいまでずっと大事に使われているそうです。ランドセルの中には、鉛筆や消しゴム、ノートといった新品の学用品のほか、クレヨンや縄跳びの縄などを入れて贈ることもあります。縄跳びで遊ぶ女の子たちの動画も見せてもらい、私たちと同じだなと思いました。
希望も届く
アフガニスタンでは、「女の子は学校に行かなくてもいい」という意識が強く、学校に通っている女の子は国全体で2人に1人、卒業するのは4割しかいません。通学中の治安を心配して学校に行かせない親もいるそうです。紛争で校舎が破壊され、屋外で授業を行っている学校もあります。そんな中で、復興に教育は不可欠だという考えが共有されていると聞いて、胸が熱くなりました。
紛争のため、活動の成果を数字で表すのは難しいそうです。でも現地の人に聞くと、ランドセルを背負って子どもが学校に行けば、学校に行っている子といない子が一目で分かって教育が「見える化」し、「男女同じように学校へ行ってもいい」という考えが親たちにも浸透してきたといいます。
何より紛争で親を亡くしたり、親が働けなくなったりして孤独を感じている子にとっては、ランドセルを贈れば「日本の友達が遠くから応援してくれているというメッセージが伝わり、支えになるのではないでしょうか」と甲斐さんは力を込めます。
話を聞いて、毎日学校に通えるのは当たり前ではなく幸せなことで、この活動はランドセルだけでなく、夢や希望も届けているのだと感じました。寄付を喜んでくれる子どもたちがいるのを忘れず、私たちも物を大切にしていきたい、と思いました。
ランドセルを贈るには、輸送費を一緒に寄付する必要があります。詳しくは、ジョイセフホームページへ。
(高2・遠田剛志、大島彩也夏、中3・丹羽美貴、中1・青木咲良、小6・吉田桜記者)