家族のかたちは
千差万別
。世界
各地
のいろいろな家族の本を
紹介
します。
日常に込められた深い愛…高1・
丹羽美貴
記者
渡辺茂男 著
「おとうさんやおかあさんは、おまえたちがいなければ、生きがいがない」。
『寺町三丁目十一番地』(
講談社文庫
)
を読んでから、この言葉が頭から
離
れません。昭和10年(1935年)ごろ、静岡市で写真館を
営
む16人の大家族の物語。一家の大黒柱、福っつあんこと、
福地裕介
は何ごとにも前向きで、時には
厳
しく、時にはおおらかな心で10人の子どもたちを楽しませ、
導
き、
誰
よりも深い
愛情
で一家を
包
み
込
みます。本では福っつあん一家をめぐる様々な出来事がリズミカルに
綴
られています。家族で行った
海水浴
や
大晦日
に起きたトラブル。そして最後には
平穏
な家族に大きな試練がふりかかります。
また、この本は家族の
日常
の
他
に昭和
初期
の暮らしぶりを感じられることも大きな
魅力
で、おやつや
友達
との遊び、
宗教観
など、まるで当時にタイムスリップしたかのような
没入
感を覚えます。
普段
、何げなく
過
ごしている家族との日常。その日常には深い愛が込もっていること。その日常こそが何にも代えがたい
宝物
であることを考えさせられる作品です。
みなさんも福っつあん一家の宝物のような日常を
覗
いてみてはいかがでしょうか。
違いを受け入れ助け合う…中1・
坂本彩夏
記者
セシリア・スベドベリ 編 山内清子 訳
「心のレンズはにごっていませんか?」と心に
囁
くような気がする
『わたしたちのトビアス』(
偕成社
)
は、スウェーデンの家族の実話です。スベドベリ家の5番目の子、トビアスの
誕生
から始まります。
ダウン
症
のトビアスについて、スベドベリ家の兄姉たちは、「生まれたときから、なぞをもっているんです。」と
表現
し、前向きに受け入れます。一方で、病院から帰ってきた母が
泣
きじゃくったことも正直に書かれています。
ダウン症について知るために、兄姉たちは
障
がいについて考えます。どんな子供も
一緒
に学び、遊びあうことによって
違
いを受け入れこわさがなくなり、助け合うことが
自然
になると。
私も小学生の時にトビアスのような子と
過
ごしました。クラスメートは、一緒にできるように
工夫
し活動をしました。その中で、助け合うことを学んでいきました。
7
歳
の姉ヨハンナの描いた絵は、
素直
にトビアスとの日々を楽しみ
私
たちに語りかけるような気がします。そのままを受け入れる、しなやかで強い家族の話だからこそ、本当の
優
しさが身に
染
みる
一冊
です。ちょっとの時間、トビアスの話に耳を
傾
けてみませんか?
張替恵子(はりかえ・けいこ) 東京子ども図書館理事長さまざまな家族の情景
家族
親戚
が集うのも
難
しかったお正月。世界のさまざまな家族の
情景
を
眺
めてみましょう。
《1》ドラ・ド・ヨング 作 吉野源三郎 訳
『あらしの前』(岩波少年文庫)
《1》の
舞台
は第2次世界
大戦
下のオランダ。村の開業医オールト家に6人目の赤ん坊が
誕生
。一家が喜びに
包
まれるシーンに始まり、家族
各々
の
日常
が
描
かれます。
次男ヤンは勉強に身が入らず高校進学も
危
うい
状況
でしたが、父の仕事ぶりを見て自分も医者になろうと決意します。ある夜、病院で、ドイツから
亡命
してきたユダヤ人少年ヴェルナーに会い、家で
預
かることに。
寂
しげだった少年は、長男ヤープと音楽を通じて打ち
解
けます。そんな中、ナチス
侵攻
の
噂
が流れたと思う間に、一家は戦争の
嵐
に
巻
き
込
まれ……。続編『あらしのあと』とともに、
希望
を
失
わず
結束
して生きようとする家族の
姿
が
印象的
です。
《2》野上丹治 洋子 房雄 作品集
『つづり方兄妹』(
理論社
)
《2》は、戦後間もない
大阪
で育った兄妹7人のうちの3人が7年間に書いた作文や詩、日記を集めています。一家は
台湾
から
無一文
で引き
揚
げてきたため、生活は苦しく、お金の心配ばかり。それでも、子どもたちは家事やアルバイトの合間に、日々あったこと思ったことを
綴
ります。「うれしいことばっかしや/ほんまに/よい正月がきよる/ぼくは、らいねんがすきや」と明るく書いた
房雄
は、
傘
が買えず、ずぶぬれになったあと
高熱
が続き小学3年生で
亡
くなります。
満足
な
治療
を受けられなかった弟の死への
無念
を6
歳
上の
丹治
が記します。また
口蓋裂
のせいで学校でいじめられている妹・洋子のことや、
働
きづめの母のことも思いやります。
初版
は1958年と古いですが、今も心に
響
く力作です。
《3》渡部陽一 写真・文
『戦場カメラマン
渡部陽一
が見た世界2 家族』(くもん出版)
《3》には、写真家の渡部さんが戦場や
被災地
で出会った家族の様子が
収
められています。森で
薪
を集め、頭にのせて帰るガーナの子どもたち。村を守るため
銃
を持って
見張
りに立つソマリアの少年少女。
紛争
の
犠牲
になった子どものお
墓
にたたずむパキスタンの父親たち。
爆弾
の
影響
で命が
危
ない娘をずっと
抱
きしめるイラクの母親……。あらためて、家族が
一緒
にいられる有り
難
さに気づかされます。