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届かなくても、かなわなくても、その気持ちこそが…第6回キミ本大賞、三浦しをんさん寄稿

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 全国の中学、高校の先生たちが生徒に薦めたい本を選ぶ「君に贈る本大賞(キミ本大賞)」。「スポーツの力を感じさせてくれる本」がテーマの第6回キミ本大賞に輝いたのは、『風が強く吹いている』(新潮文庫)。著者の三浦しをんさんが、作品に込めた思いを読売中高生新聞に寄稿してくれました!!

 中学生、高校生のみなさんと日々接しておられる先生がたが、『風が強く吹いている』を選んでくださったこと、とてもうれしいです。どうもありがとうございます。

 でも、当の中学生、高校生のみなさんは、「けっ、大人に勧められた本なんて読みたくねえ」と思うかもしれませんね。お気持ちはわかります。私も、「努力の尊さを(うた)う『文科省推奨』的な本なぞ死んでも読まん」という決意のもと生きてきました。

 『風が強く吹いている』は、ダメダメな大学生が箱根駅伝出場を目指す話です。こう説明すると、努力の尊さを謳う内容みたいに思えるかもしれませんが、私がこの小説を通して書きたかったのは、「いくら努力しても手が届かないものもあるし、生まれつきの才能の持ち主にはかなわないことだってある」ということです。じゃあ、凡才たる我々が、なにかを好きだなと感じたり、手に入らぬとわかっていて、がんばってなにかに取り組んだりすることは、無駄なのでしょうか。

 決してそうではない、と私は思っています。手が届かなくても、かなわなくても、夢中にならずにはいられない気持ちこそが、ひとに幸せや新しい出会いや発見をもたらしてくれるのだ、と。「結果」が大事なのではないし、結果を出すために努力するのでもない。ただ、それぞれがやりたいことを自由にすればいいんじゃないか(犯罪行為とかじゃなければ)。やりたいことが見つからないなら、とりあえず流されるままなにかをやってるうちに、自分の好きなことや向いてることが見つかるんじゃないか。

 そんな思いをこめて書いた小説です。だから、結果が出なくてあせっているひと、努力がたりないと言われてうんざりしているひと、スポーツが苦手なひとにも、ぜひ読んでいただければと願っています(私は運動が大の苦手で、体育の授業中はなるべく目立たぬよう木陰で自主休息していました。体育の先生、ごめんなさい)。

 生きていくなかで一番恐れるべきなのは、失敗することや結果を出せないことではありません。現状に対する抵抗や疑問を忘れ、精神の自由と楽しさや喜びを追求する意思を失ってしまうことです。この小説の登場人物たちは、楽しく、自由に、それぞれにとって大切なことはなんなのかを、「走ること」を通して見いだしていきます。

 みなさんにも、かれらの挑戦を見守り、応援していただければ、そして、「一生懸命にやったのなら、『結果』なんてどうでもいいこと、(あり)にでも食わせておきゃあいいんだな(蟻も大事な命なので、かわいがってほしいですが)」と気楽な気持ちになっていただければ、うれしいです。

みうら・しをん  1976年、東京生まれ。学生時代の夢は編集者で、就職活動では出版社を巡ったが全敗した。入社試験の作文に才能を感じた編集者が声をかけたことがきっかけで、作家の道へ。2000年、「格闘する者に○」でデビュー。「まほろ駅前多田便利軒」で直木賞、「舟を編む」で本屋大賞を受賞している。

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1215663 0 キミに贈る本大賞 2020/05/12 14:15:00 2020/05/12 14:15:00 2020/05/12 14:15:00

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