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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    空気の剣(1)

    不破高 スポーツチャンバラ部

    討つか、討たれるか。最高の真剣勝負。

     天下分け目の関ヶ原の戦いから400年余――。日本一有名なその古戦場に近い岐阜県垂井(たるい)町に、「武士道」を極めんとする少年がいる。一風変わった剣を手にしているのだけど。

     「カコン、カコン」

     11月上旬の夕方。校舎の北へ延びる渡り廊下をひたひたと歩くと、ピンポン球の音が建物の中から聞こえてきた。チッ、きょうもあっちが先か。

     室内運動場の重い戸を開ける。卓球部が半分使うのは仕方ない。だがピンポン球の乾いた音がどれだけ響こうとも、俺たちはここを「道場」と呼ぶ。

     「あっ、ナリト先輩! ちわっすぅ。遅刻っすかぁ?」

     お調子者の1年生・キヤマが、にやにやしながら言った。1年は全部で7人。2年は部長の俺を含む3人で、最近少し後輩の勢いに押され気味だ。

     「うるせぇなぁ。マジメに準備しろって」

     キヤマを小突く。

     「痛っ!何すんスか~!」

     ブツブツ言う後輩を尻目に俺は、エアーポンプでシュコシュコと剣に空気を注入し始めた。

     指で感触を確かめる。よしっ。今日も俺の「エアーソフト剣」は完璧なコンディションだ!

    ルールは2つ

     俺が情熱を注ぐ競技「スポーツチャンバラ(略してスポチャン)」の魅力は、超シンプルなルールにある。

     【()の壱】体のどこに当てても一本

     【其の弐】相打ちは両者負け ――以上。

     足でも腕でも打たれたら終わり。だから、戦国時代の斬り合いを地でいくような緊張感がある。チャンバラのイメージと言えば、木の棒を持って公園や野山を駆け回る遊びだが、俺たちの部活では礼節も重んじる。

     「先生に、礼ッ」

     教えを請う時には、部員10人全員が正座でぴしっと背筋を伸ばし、深く頭を下げる。ひんやりと冷えた床……心が澄みわたる。

     その後に待っているのが「手刀」。1対1で向き合い、手を指先まで固め、しゅっと振り下ろす。エアー剣を持つ前に欠かせないイメージトレーニングだ。

    師匠は剣道三段

     師匠で顧問の臼井澄史(すみひと)先生(50)はもともと剣道三段。教師になりたての頃にスポチャンを紹介する新聞記事を読んで「生徒がもっと楽しめる!」と思い立ち、17年前にここで部を作ったらしい。

     最近は少しずつ競技人口が増えているが、県内の高校で部活にしているのはうちだけ。休みの日は、対戦相手を求め、地元の社会人チームや他県の高校への出げいこに行く。

     「何でチャンバラなんかに情熱を注いでいるの?」と、好奇の目で見られることもある。だけど、俺は逆に問いかけたい。

     討つか、討たれるかが決まるのは刹那(せつな)。そんな真剣勝負の中で、思い切り剣を振り回していいという自由さ……。こんなに楽しいスポーツで、この国の、いや世界を目指すなんて最高じゃないか?ってね。

     振り下ろすエアー剣が、「ビシッ、ビシッ」と空を裂く。その先にあるのが俺の目標。世界のナンバーワンだ。

     (高校生の登場人物はすべて仮名です。敬称略)

    <メモ>
    スポチャンとは
     1971年に日本で生まれたスポーツ。短刀(43センチ)、 小太刀 ( こだち ) (60センチ)、長剣(100センチ)、 ( やり ) (210センチ)、 ( じょう ) (140センチ)、棒(210センチ)などの用具で相手を打つ。剣道と違い、相手の体のどの部分を打っても、きれいに決まれば一本。試合は原則、1分間1本勝負か、3分間3本勝負の形式をとる。競技人口は世界約60か国で40万人以上。
    2016年01月25日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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