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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    Action!(1)

    米子高専(鳥取県) 放送部

    映画監督はつらいよ

     「ザッパーン」と浜辺に押し寄せる荒波。「東映」の映画……ではない。

     ここは、鳥取県米子(よなご)市の弓ヶ浜(ゆみがはま)海岸。高校生向けの国内最大の映画コンクールで2年連続最優秀賞をめざす米子高専放送部が、今季の作品のオープニングに選んだロケ地だ。


    連覇めざして

     〈ベートーベンのピアノソナタ「月光」が流れる中、男が波打ち際で愛を叫ぶ〉

     ユウタ「僕と来てほしい。僕たちの国、海底にあるんだ!」

     ルイ「ごめんユウタ、私行けない。好きな人がいるの」

     〈颯爽(さっそう)と現れる別の男〉

     タイチ「ちょっと待ったぁ!!」

     ルイ「タイチ君☆」

     ユウタ「お前には、ルイを幸せにはできない!」

     タイチ「お前こそ、自分勝手なんだよ!!」

     ルイ「ケンカはやめて!!」

     タイチ「俺のルイちゃんに、手を、出すなぁぁぁ!!」

     ザッパーン…………。

     〈無残にも海へと投げ飛ばされるユウタ〉

     「って何スか、これ。河本(かわもと)先輩!! 俺、投げられるんスか?」

     8月の暑い日。1年の長谷川が勢いよく台本を机に置いた。

     「え、ダメ? 嫌?」

     「てか、海底にある国って何スか!! 竜宮城スか」

     「え、ダメ? そんな嫌?」

     「うーん……」

    【映画監督あるある その1】
     役者はやたら個性的で、言われたことを聞くのは大変

     軽音同好会兼務のイケメンだけに、イメージ低下を招く役は避けたいのか。やれやれ。部長で3年の河本はため息をつき、自らユウタ役を引き受けた。

     米子高専放送部は1997年に前身の同好会が結成され、結成20年目の昨年、「高校生のためのeiga worldcup」の自由部門で最優秀賞を受賞。その名を全国にとどろかせた。

    夏場は人員不足

     「先輩も俺も『ツーセー』だし、夏は撮影で大忙しですね」

     機嫌を直した長谷川がニコニコしながら言う。

     「それな。今年もみんな、ツーセー頼みだよ」

     河本は黒縁メガネの奥にある眉間にぐっとしわを寄せた。

    【映画監督あるある その2】
     エキストラを含め、出演者の頭数をそろえるのがすごく大変

     ツーセーとは、「通学生」の略。河本は自宅から通学しているが、鳥取県に一つしかない高専とあって、米子高専には各地から生徒が集まる。で、何が問題かって、遠方から来た「寮生(リョーセー)」が、みんな夏休みに地元に帰るってこと。

     2連覇がかかる「worldcup」の締め切りは10月上旬。夏休みは大事な時期なのに、圧倒的人員不足に陥るのだ。

     

     大学並みに広いキャンパスをとぼとぼ歩きながら、思案に暮れる河本。と、その時、

     「お、河本。どうした?」

     「あっ、森先輩」

     そうだ! なんてったって、ここは高専。前部長の森先輩のような4、5年生もいれば、大学3、4年にあたる専攻科の先輩もいる。わしゃわしゃいるじゃん、エキストラ。

     「先輩! 今度の新作なんですけどね、実は……」

    【映画監督あるある その3】
     やたら前向き。大変なことがあっても、とにかく何とかする

    2018年01月22日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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