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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    陽気なダンサー(3)

    好間 ( よしま ) 高(福島県) フラダンス部

    こんな話です

     「笑顔、元気、マハロ(感謝)」を合言葉に活動する好間高校フラダンス部の目標は、地元で開催される「フラガールズ甲子園」での優勝。厳しい練習に打ち込んでいた去年の夏、事件が起きる。

    ▽過去の連載

     陽気なダンサー(1)(2)

    笑顔で踊るって……キツイ!

     フラダンスを始めた花が最初に思い知らされたのは、「笑顔って意外と難しい」ということだった。

     「フラガールズ甲子園(フラ甲)」で見たマナ先輩たちは、「Uilani O’lapa(陽気なダンサー)」というチーム名にたがわず、笑顔いっぱいで、優雅だったけど……。

     なにせキツイのだ!! 基本姿勢を保つのが。

     豊かな表情とウクレレに合わせたあでやかな手の動きが特徴のフラだが、下半身の動きはタフそのもの。両ひざを曲げ、腰をグッと落として、右へ左へ。そう。軽い空気イスの状態でステップを踏み続けるのだ。

     そんなわけで放課後の練習も1時間もすれば、太ももが目覚まし時計のようにプルプル、プルプルと震え始める。

     「つらくても、笑顔は忘れないで」。先輩たちは言うけれど、足に力を入れれば、顔にも力が入るもの。花は鏡を見なくても自分が“筋肉笑い”になっているのが分かった。

    習うより慣れろ

     では、先輩たちはどうやって笑顔を身につけたのか。それはたぶん、OJT(on the job training)みたいなものだと花は思う。

     東日本大震災で被害を受けた地元をフラで元気にすることを目的に設立されたうちの部は週末、被災者が暮らす仮設住宅や各地のイベントで踊りを披露している。不思議なことに、そうした場では足のプルプルが自然と忘れられた。

     お客さんに見られることで、意識が外に向くというのもある。でも、何より1曲終えるごとに送られる拍手に、もっと笑顔を届けたいと思えるのだ。地元の人たちの温かいまなざしが、フラ部を成長させてくれているのかもしれない。

     フラに少しだけ慣れてきた2016年8月、花は初めてフラ甲のステージに立った。11人の部員全員で臨んだ憧れの舞台。残念ながら、目標の優勝を果たすことは出来なかったが、センターに立つマナ先輩の優雅な舞を後ろから眺めた花は、フラっていいな、と改めて思った。

    新3年生の檄

     マナ先輩が卒業した後の2017年春、フラ部は5人の新入生を迎え、14人でスタートを切った。

     新部長になったゆみ先輩が掲げた目標は「今年こそはフラ甲優勝!!」。私たちを応援してくれる地元の人たちのためにも、地元開催の大会ではやっぱり優勝したい。練習には今まで以上に力が入った。

     「はい笑顔! 笑顔!!」。腰を落としたままのステップに顔をゆがませる新入生に3年生の(げき)が飛ぶ。

     そのつらさは分かるが、フラ甲優勝のためには、自分だってこれまで以上に成長しなきゃならない。「みんな、頑張って」。花は心の中でエールを送った。

     大会まで残り1か月となった7月、事件は起こった。

     「みんなちょっと集まって」

     練習中、突如、曲を止め、部員を集めたゆみ先輩。体育館の隅の空気がピンと張りつめた。

     「いい、私たちチームの合言葉は『笑顔、元気、マハロ(感謝)』なんだよ。自分たちが心から楽しんで踊らなきゃ、見てる人たちに伝わらない。フラ甲優勝なんて、無理だから」。ゆみ先輩たち3年生4人は、そう思いを爆発させると泣き崩れた。

     笑顔とは何か。みんながわからなくなっていた。(高校生の登場人物はすべて仮名です)

    2018年05月16日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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