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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    陽気なダンサー(4)

    好間 ( よしま ) 高(福島県) フラダンス部

    こんな話です

     フラガールズ甲子園(フラ甲)が迫る中、笑顔を失いかけた好間高校フラダンス部「Uilani O’lapa(陽気なダンサー)」。悲願の日本一に向け、夏休みの“特訓”をスタートさせた。

    ▽過去の連載

     陽気なダンサー(1)(2)(3)

    衣装作りが紡いだ「日本一」

     好間高校のフラダンス部「Uilani O’lapa」が笑顔を取り戻すために行ったこと。それは、部員14人全員で毎日、朝から夕方まで一緒に過ごす、夏休みの“特訓”だった。

    夏休みの特訓

     花も、ゆみ先輩たちが焦る気持ちがよくわかった。

     目標の「フラガールズ甲子園(フラ甲)」ではタイプの異なる二つのダンス――ゆったりとした音色に合わせ、手の動きで感情を表現する「フラダンス」と、太鼓のリズムに乗って激しく腰や手を動かす「タヒチアンダンス」を披露(ひろう)しなければならない。

     採点項目はダンスの技術はもちろん、チームワーク、笑顔、衣装、メイクの美しさなど多岐(たき)にわたり、そのどれが欠けても、目標の優勝は難しくなる。

     さらに焦りを増幅(ぞうふく)させたのが、衣装問題だ。

     フラやタヒチアンの衣装って、あまり市販されていなかったり、高価だったりする。このため、チームでは毎年、ネットや100円ショップで布や飾りになりそうなパーツを買って手作りしているのだけど……。

     「やばい、このままじゃ間に合わん!!」(ゆみ先輩)

     フラは太陽みたいな明るい黄色、タヒチアンは海の風を連想させる青と白。基本方針を決めて何となく安心していたかも。夏休みに入った段階で製作はほぼ手つかずの状態だったのだ。

     というわけで、夏休みの特訓スケジュールは、〈1〉午前=ダンス〈2〉午後=衣装作り、以上!! みんな毎日、日が暮れるまで自分の衣装を手縫いで作った。

     完成したのは本番前日。フシギだった。みんなで着ると、自然に笑顔でポーズが決まった。

    フラ甲本番

     8月11日、ついに迎えたフラ甲の本番。控室で円陣を組み、ゆみ先輩がチームを鼓舞(こぶ)する。

     「みんな、笑顔、元気、マハロ(感謝)を忘れずに」

     もう迷いはない。チーム史上最高のステージが始まった。

     「Aloha Hula」を踊ったフラは両手を広げ、みんなで目いっぱいフラへの愛情を表現した。激しいリズムのタヒチアンも、14人の動きが指先までピタッとそろい、最高に気持ちよかった。

     そして、一度は忘れかけた笑顔。花はその時、わかった。

     笑顔は作るものじゃない。仲間との一体感を感じたとき、みんなへの感謝の気持ちを表したいとき、笑顔は自然と生まれるものなんだって。

     表彰式。ゆみ先輩の顔は涙と笑いでくしゃくしゃだった。

     「ほとんどがフラ初心者だったけど、みんなで頑張ってきました。応援してくれた人たちに喜びを伝えたいです」

     好間高校フラダンス部が日本一に輝いた瞬間だった。

     2月、いわき市内のスーパーで、ゆみ先輩ら3年生が参加する最後のイベントが開かれた。

     14人のステージはこれで終わり。新部長になった花は、一つ一つのステップを今まで以上に大切に踏んだ。みんなとの時間を心と体に刻みつけるように。

     「一緒にいると家族みたく心が安らぐ存在でした」。踊り終えた花は、3年生にそんなメッセージを送った。みんな人目もはばからずぼろぼろ泣いた。

     メイクが崩れたちょっといけてない記念写真は花にとっては一生の宝物。だって、思うのだ。こんな「陽気なダンサー」、どこにもいないって。(高校生の登場人物はすべて仮名です。完)

     文・吉田拓矢 写真・伊藤紘二、吉田拓矢

    2018年05月17日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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