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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    下を向いて歩こう(4)

    日比谷高(東京都) 雑草研究会

    こんな話です

     日比谷高雑草研究会(雑研(ざっけん))には、後輩たちから「雑草女王」とあがめられる一人の卒業生がいた。彼女の他に類を見ない雑草愛と、それを受け止め続けた福田先生との絆とは?

    ▽過去の連載

     下を向いて歩こう(1)(2)(3)

    「雑草女王」恩師と見る夢

     こんにちは。部長で2年のめじろです☆ 前回、一つ上の先輩「コケ世代」の魅力をお伝えしました。今回は、彼らよりさらにエッジの利いたある女性についてお話しします。

     その名は、ヒナ先輩。

     コケ世代のさらに一つ上で、この春卒業した「第2シダ世代」。後輩の誰もが畏敬(いけい)の念を抱く彼女は、まさに「雑草女王」と呼ぶべきお人なのです!

     普通、雑研なんて珍しい部活、入学して初めて知って「のぞいてみるか」くらいですよ()!? でも3年前、彼女は担当の福田先生に目をキラキラさせながら言ったそうです。

     「雑研があるから日比谷に入りました」

     なんと★ この学校は、受験対策のための塾(5月25日号別刷りふろく参照)があるほどの難関高。入学の動機って普通、難関大学への進学とか、校風だと思うのですが……。

     その後も彼女のケタ違いの探究心に、福田先生は度肝(どぎも)を抜かれ続けます。

     「先生、このシダは何ですか!?」

     「これは何の芽生(めば)えですか!?」

     「これは食べられますか!?」

     休み時間になるや否や外に飛び出し、草を()んだり写真を撮ったり……。うちの学校では2、3時間目の間の休み時間が5分しかないのですが、そのわずかな時間でさえ、雑草探しをしていました。

     そうそう、ある時は、用務主事さんにこう伝えたといいます。

     「スケッチしたこの草、観察中なので抜かないでください()☆」

     なんと★★ お目当ての雑草に赤いテープを巻き付け、刈らないように保護したのでした。

    今は東大生

     ヒナ先輩のすごさは、学業でもズバ抜けて優秀だったこと。

     東大模試では「A」判定が当たり前。普通なら「B」が出ただけでもうれしいのに……。 受験前でも、ヒナ先輩は後輩の面倒を見てくれました。

     そしてこの春、当然のように東大に合格。みんなが驚いたのは、あれほどの植物好きなのに、入ったのが文科1類だったということ。

     「私、雑草観察は、純粋な趣味にしたいんだ☆」

     さらりと、そう言ってました。

    集大成の図鑑

     そんなヒナ先輩を福田先生は応援し続けています。

     〈先生 花の大学生が(やぶ)の中に入っていると変人扱いされそうなので、今は控えています〉

     〈構わない。やりなさい〉

     2人は、今でもメールでこんなやりとりをしています(笑)。

     実は福田先生は64歳で、今年度が教師生活のラストイヤー。退職前にこれまでの研究を残そうと、2人は今、撮りためた雑草や樹木の写真を図鑑の形にまとめようとしています。

     たたき台は、雑研ができて数年後の2003年にOBが中心となって作った「日比谷高校野草図鑑」。わら半紙に、校内で見つけた約170種類の植物を写真で紹介しています。

     ただ、植物の分布は時とともに変わるもの。「図鑑をリニューアルしたい」という2人の夢に、協力するのは僕たち現役世代の使命でもあります。

     残された時間は短い。雑草の魅力を教えてくれた福田先生の教師生活のラストに草……じゃなくて花を添えたい。

     過去の雑草は消えたのか?

     未知の雑草は生えているか?

     僕たちは、きょうも下を向いて歩いています☆

    (高校生と卒業生の登場人物は仮名です。完)(文・増田知基 写真・米田育広)

    2018年07月26日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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