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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    情熱の筆さばき(2)

    大曲高(秋田県) 書道部

    こんな話です

     縦4m×横6mの巨大な紙に、音楽に合わせて筆を走らせる「書道パフォーマンス」。アカリたち3年生5人は、「字が下手」という致命的な弱点を乗り越えようと模索を始めた。

    ▽過去の連載
     情熱の筆さばき(1)

    パフォーマンスは最高、でも字が…

     「とにかく“字”にこだわる」

     今から1年前、アカリたち3年生5人が新チーム結成時に誓い合った目標だ。

     それって、書道部として当たり前じゃ……と思うかもしれない。もちろん、アカリたちだって字にこだわってきたつもりだ。しかし、昨年8月、愛媛県で開かれた「書道パフォーマンス甲子園」では、自分たちのこだわりがいかにちっぽけなものだったのかを痛感させられた。

     半年かけて練り上げたテーマは「文明開化」。社会で活躍する女性が出てきた歴史をイメージし、12人のメンバー全員がはかま姿で躍動する。

     バレエ経験者のアカリの優雅な舞いがあり、なぎなたの演舞があり、和傘など小物を使ったパフォーマンスもあり……そして巨大な紙のど真ん中には、先輩が全身の力を込めて記した「道は必ず開ける」というメッセージ。6分の演技中、会場は沸いたし、自分たちとしても最高の出来だった。

     だけど、多分……。

     空港までの帰り道のバス。アカリは先輩の引退に一抹の寂しさを感じつつ、上位入賞を逃した現実に妙に納得していた。

     おぼろげだけど、分かった気がしたのだ。自分たちに足りないもの。

    上位校 作品に迫力

     後日、大会本部から郵送されてきた詳細順位は、アカリの考えを確かなものにしてくれた。

     パフォーマンス力では全21校中6位。でも筆さばきや字の正確さなど、書道作品そのものに対する評価は下から2番目。つまり、「字がダメ」というわけだ。

     確かに上位校は作品の迫力が半端なかった。

     優勝校は、紙の上半分を教室の黒板に見立てて真っ黒に塗り、その上にチョークをイメージした白い文字で「壁をぶち破れ!」と豪快に書いた。

     一見、書き殴った感じなのだが、一つ一つの文字やその配置を見てみると、計算され尽くしていて、しかも若さとか躍動感とか情熱とか、いろんな気持ちがあふれ出ている。

     それと比べてしまうと、自分たちの作品はいかにも平凡で、人を引きつけるものが少ない。

     「結局、完成作品を客席に向けた時の迫力だよ」

     「パフォーマンス重視の練習ではかなわないな」

     パフォーマンスをいかに芸術作品に昇華させるか。当たり前だが、ついつい見落としがちな真理でもあった。

    練習「まずは字」

     書道部の活動は、半分が書道パフォーマンスの練習、残り半分は、古人の優れた筆跡をお手本にする「臨書(りんしょ)」に充てられる。

     当然、動きがある書道パフォーマンスの方が何倍も難しい。しかも、紙が大きいので、全体のバランスをとるのも大変だ。

     だから、これまではパフォーマンスと臨書は別物と考え、書道パフォーマンスの練習は、ダンスや大きな紙を使った実践形式を中心にしていたが、新チームは、それを変えた。

     「まずは字!」。ということで、自分が担当する文字を何時間も座って練習。その次は、A4判の“設計図”とにらめっこし、ひたすら床に敷いた新聞紙に書き続ける。メジャー片手に文字の大きさや、書き始め、書き終わりの位置を1cm単位で調整する。

     アカリはいつの間にか、書道の魅力にとりつかれていた。止め、はね、払い、文字の間隔、角度。神経をとぎすますほど、自分の文字がより力強く、輝きを増していくのが分かった。(高校生の登場人物はすべて仮名です)

    2018年09月04日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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