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    中高生の部活にまつわる青春ストーリーをお届けします。

    情熱の筆さばき(1)

    大曲高(秋田県) 書道部

    紙の上 筆も体も舞い踊る

     心落ち着けて墨をすり、正座をして、そっと筆をとる……。書道と聞けば、そんな「静」のイメージを持つ人が多いだろう。

     でも、大曲高校書道部のアカリたちが夢中になっているのは、その対極にある新しい書道。汗ほとばしり、身も心も熱く燃える「書道パフォーマンス」だ。 

     ズンズンズン……

     廊下の突き当たりの教室から、アップビートの低音が響く。

     Rock you!

     目の前のガラスを割れ!

     欅坂(けやきざか)46のヒット曲「ガラスを割れ!」に合わせ、ジャージー姿で踊るのは、4月に入学したばかりの1年生。本家顔負けに髪振り乱し、頭と腕を激しく振り回す。飛び散る汗は、自然と教室の熱気を上げる。

     これはダンス部……ではなく、書道パフォーマンスの特訓。大曲市内の商業施設で行われる新チームのデビュー戦があと1週間後に迫っていた。

     パフォーマンス部長を務める3年のアカリの指導にも力が入る。

     「ストップ!!! もっと体の動きを大きく。カワイイだけのダンスじゃないんだから」

     書道パフォーマンスは簡単に言うと「人を魅了する書道」だ。

     音楽やダンスを組み合わせながら、縦4m×横6mの大きな紙の上に、文字を書く。題材は英文だっていいし、スプレーを使って絵を描いてもいい。

     今、ダンス練習をしている1年生6人はまだ筆はとらず、一糸乱れぬ体の動きでパフォーマンスを盛り上げる役割。紙だけでなく、そのまわりの空間そのものも思うままに染められる自由さが、アカリはこの上なく大好きだ。 

    頭から墨かぶり

     廊下を挟んで、上級生が書の練習をする書道室。床に敷き詰められた新聞紙の前で3年のユウは額の汗をぬぐった。

     先生のお手本を見ながら、何度も何度も文字を書き重ねる。もう、新聞紙は真っ黒だけど、少しずつ力強さを増していく自分の文字にユウは手応えを感じていた。

     ジャージーが汚れようと顔に墨がつこうと、誰も気にするそぶりはない。なにせ、ここにいる2、3年生は大抵、お笑い番組を地でいく「墨かぶり」を一度は経験しているのだ。

     書道パフォーマンスは書き手の動きも激しい。墨が入った小さな手桶(ておけ)を持ち、紙の上を踊りながら縦横無尽に動き回る。

     最も危険なのは美しく両手を上げる決めポーズの瞬間。桶を持つ手を勢いよく上げすぎたり、少しでも手首の角度を間違えると……

     バシャン!!

     頭の上から派手に墨をかぶることになってしまう。その場では笑いがおきるが、さすがに帰りの電車で浴びる痛い視線に慣れることはない。 

    「字が下手」の壁

     そんな体育会系書道部(?)が目指すのが、7月末に開催される全国大会「書道パフォーマンス甲子園」。過去4年連続で北日本予選を勝ち抜き、本戦出場を果たしているが、その度に全国の高い壁にはね返された。

     新チームのデビュー戦に「ガラスを割れ!」を選んだのは、今年に懸ける思いの表れ。何とか全国の強豪と()するパフォーマンスを披露したい。

     そのためにはまず、乗り越えないといけない課題がある。

     「字が下手」問題だった。(高校生の登場人物はすべて仮名です)

    2018年09月03日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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