情熱の筆さばき(3)

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大曲高(秋田県) 書道部

こんな話です

 音楽に合わせてダンスも交えながら、縦4m×横6mの巨大な紙に筆を走らせる書道パフォーマンス。7月末に四国で開催される「書道パフォーマンス甲子園」出場に向け、アカリたちは半年前から、テーマ選びで悩んでいた。

▽過去の連載
 情熱の筆さばき(1)(2)

渋過ぎ、だけど美しい「秋田杉」で全国へ

 雪深い1月の書道室。アカリたちは1枚のルーズリーフを囲んで、考え込んでいた。

 なまはげ、あきたこまち、秋田犬、比内(ひない)地鶏にきりたんぽ……。書かれていたのは、いわゆる“秋田名物”。夏の「書道パフォーマンス甲子園」で、「秋田の魅力を伝えたい」というところまでは決めたけど、具体的な題材となると、難しい。

 ちなみに、先輩たちが過去に取り上げた秋田美人と大曲花火は、最初から除外されている。

 書道パフォーマンスにとって、「題材」は生命線。なまはげは、女子オンリーのうちの部だと表現するのは難しそうだし、食べ物はうまく書道に結びつけることができるかどうか……。

 たくさんの案が消された後、最後に残ったのは「秋田杉」。

 ん、地味かも。正直、アカリは気が乗らなかった。豊かな自然は秋田の宝だけど、JKが杉って、渋過ぎる取り合わせだ。

 とりあえず一晩、秋田杉の魅力について、それぞれ調べてくることでその場は終わった。

 翌日、2度目の会議。

・成長は緩やかだが、年輪の幅が狭く、密度が濃い
・清純爽快(そうかい)な香りでリラックス効果がある
・丈夫で木目が美しく、建材から曲げわっぱまで用途が広い
 あれ、意外とやるじゃん、秋田杉。研究成果を並べてみると、どんどん言葉があふれてきた。

「生命の樹」力強く

 200年を超える時をかけ育つ上質な杉。厳しい冬を何度も乗り越え、まっすぐ天に向かって伸びていくその姿は、強く、しなやかで、美しい。

 「生命の樹」

 自然と、真ん中に置く文字が浮かんできた。秋田育ちだからこそ、表現できる言葉。「これで行こう」。アカリの呼びかけに誰も異論はなかった。

 背景には、青で故郷の山をシンプルに、大胆に描くことにした。なぜ山が青なのか? 遠くに連なる山は、緑ではなくて深い深い青なのだ。私たちだけが知っているあの美しい色……。

 毎夏、愛媛県四国中央市で開かれる全国大会「書道パフォーマンス甲子園」は、動画と写真による審査で出場校が決まる。

 5月、撮影の日がやってきた。予算の都合で撮影は3回。

 「お願いします!」

 体育館を半分使って紙を広げて、ステージ上に設置されたカメラに向かって深く一礼。アカリたち3年5人と2年3人は一斉に動き出した。

 3回目の撮影。両手に持った筆で力強く、「命」という字をしたためたアカリは、不思議な感覚を味わっていた。振りを気にするでもなく、音に合わせるでもなく。ただ、書の世界に入り込んでいる自分。ほかの仲間も同じみたいで、ふと目が合ったナツミと、ほほ笑み合った。

 作品は1回目のものが一番、バランスが取れていた。でも、満場一致で選んだのは最後の作品。無我夢中でパフォーマンスできたあの回は、力強さが他の作品と全く違った。

残念ながら…?

 審査結果が発表された6月15日、顧問の竹村先生は淡々とした表情でアカリたちに告げた。

 「残念ながら……」

 「えっ、残念ながら……?」

 「みんなで四国に行きます!」

 ドッと沸く書道室。アカリは目に涙を浮かべながら、思った。

 もう一度、全国でみんなとあのパフォーマンスをしたい。もしそれができれば……。

 7月29日、アカリたちは初の上位入賞をめざし、地元の誇り・秋田杉と共に全国に挑む。(高校生の登場人物はすべて仮名です、完)(文と写真・影本菜穂子)

38634 0 部活の惑星 2018/09/05 05:20:00 2018/09/05 05:20:00 2018/09/05 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180829-OYT8I50012-T.jpg?type=thumbnail

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