敵はイノシシなり(1)

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利根実業高(群馬県) 生物資源研究部

「田畑守れ」。知略巡らす10年戦争

 知略の限りを尽くし、戦国の世を生き抜いた真田家ゆかりの街・群馬県沼田市。赤城山のふもとに広がるその豊かな田園地帯が少女たちの戦場だ。

 利根実業高校「生物資源研究部」――。神出鬼没の野獣から農作物を守る方法を研究する部活で、おそらく日本一、イノシシに詳しい女子高生だ。

山中の実験区

 「よ~し、OK。今日も無事だったね」

 8月中旬、市中心部から車で30分ほどの山の中。ロープで囲まれた2m四方のスペースに、掘り荒らされた跡がないことを確認し、アカネは大きく(うなず)いた。

 ここは生物資源研究部の実験区。チームで考案したイノシシ対策の仕掛けを試す場所だ。

 方法は至ってシンプルで、仕掛けを施した場所と、仕掛けのない場所にそれぞれリンゴや芋を埋め、食い荒らされないかをチェックする。近くにはカメラが3台設置されており、周辺で何かが動くと自動的にシャッターが切られる。

 アカネらは週に1度、ここを訪れ、“宿敵”の動向を確認している。

侵攻 突破 強奪

 部がこのプロジェクトを始めたのは2008年のことだ。手塩にかけて育てた田畑をぐちゃぐちゃに掘り返すイノシシは農家にとって天敵。被害額だって相当だし、地元のためにも、と研究をスタートさせた。

 ただ、それは“イノシシ10年戦争”と呼んでも過言ではない厳しい戦いとなった。カレらは動物離れした並はずれた知謀で、部員たちが繰り出す計略をことごとく打ち破ったのだ。

 過去10年間の主立った戦いをまとめると……。

■軍手の戦い(2012~14年)

 10年戦争の初期の代表的戦い。イノシシの侵攻を食い止めるため、部員らは実験区のロープに使い古した軍手を数十cmおきに設置。風に揺れる軍手に相手が恐れおののくと予想したが、実験区は56日で陥落。部員たちはその後、何度も軍手を武器に戦いを挑んだが、敗北を重ねた。

■唐辛子の変(2013年)

 軍手の戦いの最中に起きた戦闘。普通の軍手ではイノシシを撃退できないことから、校内で栽培した唐辛子から辛み成分のカプサイシンを抽出して軍手に塗布。抽出作業中は、あまりの刺激に目が痛くなる部員が続出したが、風雨にさらされて成分が薄れたのか、実験区内のエサは51日目に強奪された。

■ロープ柵の合戦(2013~15年)

 恐怖心や刺激物を与える作戦の失敗を受け、物理的な防衛策に挑戦、実験区をロープでぐるぐる巻きにしてガードした。イノシシはロープに絡まるのを嫌がり、一時は13か月間も実験区の防衛に成功した。

 ただ、勝利目前と思われたある日、勇気あるイノシシ1頭がロープを突破。その後は36日間で21回もの猛攻を受け、ロープ柵はイノシシにとって「エサのあるランドマークタワー」的な目印となってしまった。

 と、まぁ、そんな度重なる苦い経験を経て、アカネたちは今、あと一歩で、イノシシ戦争に勝利できそうな作戦を編み出しつつある。

 「彼を知り、己を知れば、百戦危うからず」。孫子の兵法にもあるように、ヒントはイノシシの視点を知ることにあった。(高校生の登場人物はすべて仮名です)

 敵はイノシシなり(2)はこちら

533828 0 部活の惑星 2019/04/15 05:20:00 2019/04/23 14:31:28 2019/04/23 14:31:28 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/04/20190410-OYT8I50062-T.jpg?type=thumbnail

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