シカの輪は回る(3)

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花巻農業高(岩手県) 鹿踊り部

こんな話です

 1年の文化祭で踊り手デビューを果たしたユウマは、憧れのルイ先輩を目標に成長し、ついにルイ先輩が務めたポジションを引き継ぐことに成功する。自然と鹿踊り愛も深まっていき……。

▽過去の連載
 シカの輪は回る(1)(2)

サウイフ雌鹿ニワタシハナリタイ

 厳しいテストを乗り越え、ようやく踊り手デビューを果たしたユウマ。次なる目標は、どこで踊るのか、というポジション争いだった。

 基本、8人構成の鹿踊(ししおど)りには、“エース級”とされるポジションがある。中央で観客の視線を一身に浴びて踊る「仲立(なかだち)」と呼ばれる役柄だ。新入部員の多くが憧れることになるのだが、ユウマだけは違った。

 「最高の『雌鹿(めじし)』に僕は、なる!」

 !! 突然の宣言に、女子7人を含む同級生が絶句したのは言うまでもない。

 雌鹿とは、その言葉通りメスの鹿。ソロで踊るパートがある四つのポジションの一つだが、男子でいきなり雌鹿に立候補する部員はめずらしい。

 ただ、この選択はユウマにとって必然だった。なぜなら、憧れのルイ先輩が踊ってきたポジションだから。

 「大切なのは、自分なりの解釈で、雌鹿になりきること」。彼女はそう言っていた。

 ユウマにとって、雌鹿とは群れを見守るお母さん。他の鹿たちがのびのびと踊る様子に、誰よりも優しく、慈愛に満ちた視線を注ぐ。そして雄鹿と2匹で向き合って踊るシーンは、これでもか、ってほど情熱的に。

 自分なりの雌鹿を見つけたユウマは見事、引退するルイ先輩から、その座を引き継いだのだった。

年30公演 全力で

 踊り手になると、待っているのは超多忙な毎日だ。年間でこなす公演は、地域のお祭りや高齢者施設への慰問など30回ほど。月に2回以上は人前で本番の踊りを披露している計算になる。

 ステージに上がれば、いつでも真剣勝負。ユウマは常にそう心がけている。

 高齢者施設で公演すると特にそれを感じる。踊りに涙するお年寄りもいるからだ。鹿踊りに特別な思い出があるのかもしれないし、純粋に踊りに感動してくれているのかもしれない。いずれにせよ、鹿踊りには人の心を揺り動かす何かがあると思うし、全力の踊りで人に「感動」を与え続けることが、この生命力あふれる踊りを後世に引き継ぐために必要なのだ。

 そして、全国の人にこの踊りの魅力を伝える最高のステージが、毎年夏に開かれる全国高等学校総合文化祭――総文祭だ。

明かされた「秘伝」

 総文祭は「文化部のインターハイ」とも称される高校文化部の祭典。演劇や吹奏楽、写真など様々な部門で全国トップクラスの高校生が集う。

 鹿踊り部がめざすのは「郷土芸能部門」。出場するには前の年の秋に開かれる県大会で上位2位以内に入らなければならない。花巻農業のある岩手県は、各地に個性的な伝統芸能があり、総文祭に出場すれば常に全国上位に入る強豪県。勝ち抜くのは容易ではない。

 県大会が間近に迫った昨年夏、ユウマらは、部を指導する「春日流落合鹿踊保存会」の会長・大野五月男から突然の提案を受けた。

 「お前らに、流派に伝わる『秘伝の踊り』を伝承する」

 1958年創設の鹿踊り部で受け継がれてきた踊りは4演目。

 「え? まだ僕らの知らない踊りがあるんですか!?」

 それは、これまで高校生には、決して伝えられることのなかった究極の踊り。後に総文祭で伝説を残すことになる「幻の鹿踊り」だった。(高校生の登場人物はすべて仮名です)

 シカの輪は回る(4)はこちら

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542672 0 部活の惑星 2019/04/24 05:20:00 2019/06/28 09:43:55 2019/06/28 09:43:55 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/04/20190417-OYT8I50025-T.jpg?type=thumbnail

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