夢に向かって撃て!(1)

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明治大付属中野中・高(東京都) 射撃部

次世代エースはいつも冷静

 10m先の的を見つめ、ヒトシは軽く深呼吸した。10月、明治大学付属中野中学・高校で開かれた射撃競技の都大会。緊張でピンと張りつめた空気を心地よく感じるのは、失敗が許されない“射撃手”の本能かもしれない。

 「よし、行くぞ」

 心を整えて、愛用のビームライフルを構える。鋭い眼光で、的の中央にある小さな円を捉えて……

 「ビシューン」

 短く軽い電子音。直後に表示された「10.7」の得点に、ヒトシは納得の表情で軽く(うなず)き、ライフルをもう一度構えた。

優勝でも笑顔なし

 射撃と言えば、ど派手な銃声と硝煙の香りをイメージするかもしれないが、中学や高校では、光線を発射するビームライフルを使った競技が主流。本物のライフルと違い、危なくなく、銃の所持資格を取る必要もないため、誰でも楽しめるのがその理由だ。

 本物の銃弾は使わないとはいえ、競技自体は見た目以上に繊細でハードだ。

 狙うのは、10m先の直径46mmの円。1回の射撃は「10.9点満点」で、45分間で60回撃った合計得点を競う。46mmの円を外せば0点だし、文字通り1mmの差が勝負を分けることになる。

 特に立ったまま撃つ「立射」は、上体が安定しないから、極限まで神経を使う。少しでも邪念が入ると、手元がぶれて、「はい、終了」となりかねない。

 平常心、平常心、平常心……。念仏のように何度も唱え、ひたすらマシンのように的の中心を狙う。

 614.6点。この日、ヒトシは、男子の部で最高得点をたたき出し、見事、優勝した。副賞のクオカード5000円分(!)に会場は沸いたが、笑顔を見せるそぶりもなし。いかなる時も心は水面(みなも)のようにしなやかで静かに――。それが明大中野射撃部の次世代エースの流儀だ。

出会いは小学4年

 現在、高1のヒトシと射撃との出会いは今から6年前、小学4年の時。兄の通っていた明大中野の文化祭を訪れ、たまたま射撃部の体験会に足を運んだのがきっかけだった。

 映画やアニメで見るような、長身のライフルを構え、遠くの的を撃ち抜いていく先輩たち。その精悍(せいかん)な表情も、いちいち格好いい。

 「やってみてもいいですか」

 「もちろん」

 先輩からライフルをもらう。

 おぉ、重い。持つだけで何だか感動。それに手にするだけで、ちょっと自分が大人になった気分もした。確か、ここをこうやって引き金を……

 「ビシューン」。見よう見まねの1発目は、円から大きく外れて0点。まだまだ。2発目こそは……

 「ビシューン」。またまた0点。3発目は……(以下同文)

 何発撃ったかは覚えていない。そもそも何かを“狙う”以前に、ライフルを持つ手がプルプル震えてどうにもならない。

 「慣れるまで時間がかかるけど、練習すればうまくなるよ」

 優しい勧誘にヒトシは完全に心を撃ち抜かれた。

 「俺、ここに入ったら射撃をやる」

 3年前の4月、無事、明大中野中に合格したヒトシは迷うことなく射撃部の門をたたいた。(高校生の登場人物はすべて仮名です)

射撃とは

 銃器が発達した15~16世紀頃、ヨーロッパを中心に始まったとされる。オリンピックでは、第1回アテネ大会から正式競技で、参加国数は陸上競技の次に多い。銃規制の厳しい日本では、中高生の大会は、「ビームライフル」が主流で、拳銃型の「ビームピストル」と、鉛の弾を使う「エアライフル」「エアピストル」の計4種目が行われている。

夢に向かって撃て!(2)はこちら

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556064 0 部活の惑星 2019/05/07 05:20:00 2019/05/08 09:57:13 2019/05/08 09:57:13 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/04/20190424-OYT8I50013-T.jpg?type=thumbnail

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