夢に向かって撃て!(4)

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明治大付属中野中・高(東京都) 射撃部

こんな話です

 明大中野射撃部の次世代エースとして期待を集めるヒトシだが、このあふれんばかりの射撃愛を周囲の友達はイマイチ理解してくれない。そんな彼の今の目標は、一流の射撃手がそろう夢舞台・国体での優勝だ。

▽過去の連載
 夢に向かって撃て!(1)(2)(3)

俺は射撃手、射的はゴメン。

 ありったけの情熱を射撃に注ぐヒトシは、祭りの季節になると憂鬱(ゆううつ)な気分になる。男友達から毎年のように声をかけられるのだ。

 「お前、『射的』もうまいだろ? 今度の祭りで頼むよ!!」

 もちろんヒトシだって、お祭りに行けば、射的で遊ばないことはない。でも、射的の銃なんておもちゃみたいなもん。射撃部で使うライフルとは全くの別物だ。それに、そもそも射的って、的にちゃんと当てても、なかなか景品が倒れない。華麗なフォームで「パチン」と撃って、何も倒れないときのシーンとした空気。想像しただけでゾッとする。

 「あんまり得意じゃないんだよね。ごめん」

 「え~!!」

 そんなとき、ヒトシはとりあえず謝り、心の中で反論することにしている。

 「俺がやっているのは、『射撃』だ!!」

納得できない

 そうそう。射撃を愛するヒトシには、もう一つ納得できないことがある。こんなにクールでシビアなスポーツ、めったにないはずなのに……

 「俺、射撃やってるんだぜ!!」(どや顔)

 「へ、へーそうなんだー」(ぽかーん)

 こんな感じで女友達の反応は男以上にイマイチ。そもそも明大中野は男子校で、ただでさえ女子との出会いは少ないのに、つれないそぶりはさすがにヘコむ。別にモテたいわけじゃないけど、もう少し射撃の格好良さを知ってほしいなとは思う。

やっぱり日本一

 そんなヒトシの今の夢は、高校在学中に秋の国体で優勝すること。

 特に日本一を目指しているのが「エアライフル競技」。光線を使ったビームライフルと違い、エアライフルは圧縮した空気を使って鉛の実弾を放つ。一歩、使い方を間違えれば大きな危険も伴うだけに、公安委員会から銃を持つ許可ももらわなければならず、まさに“選ばれし者”だけが手にできる「上級者向け」のライフルなのだ。

 明大中野では、〈1〉ビームライフルで60発を撃ち、安定的に593点以上の高得点を記録できる〈2〉顧問の佐々木先生から「他の部員の模範になる」と認められた人物――だけが、エアライフルを扱うための手続きに進むことができる。

 ヒトシは現在、この手続きの真っ最中。講習会に参加したり、競技団体から推薦状をもらったりと忙しい日々を送る。「こいつに銃を持たせて大丈夫か」という警察による身辺調査(!!)まで行われたのには、さすがにびっくりしたけれど(笑)。

 国体のエアライフル競技は、こうした大変な道のりを乗り越えた“一流”が集うハイレベルな舞台。青春を射撃に(ささ)げると誓った以上、やはり最高のステージで一番になりたい。それにまわりのみんなも、1mmが勝負を分ける最高にスリリングなこのスポーツにもう少し注目してくれるかも。

 だから、ヒトシは今日も、いつものように射撃場に行き、いつものルーチンでライフルを構える。神経を研ぎ澄まし、狙いを定め……

 「ビシューーン!!」

 夢に向かって、撃つのだ。(高校生の登場人物はすべて仮名です、完)

 (写真・文 菅原智)  

無断転載禁止
556079 0 部活の惑星 2019/05/10 05:20:00 2019/05/10 05:20:00 2019/05/10 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/04/20190424-OYT8I50020-T.jpg?type=thumbnail

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