夢をのせて、発射!(1)

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普連土学園(東京都) 理科部

チョコの筒ロケット、空へ。永遠の30秒

 ウィィィーーン、ガガガッ。

 東京タワーを近くに臨む校舎の一室に、武骨な工作音が響きわたる。

 「エリコ、今日も早い!!」

 高1のノリカは慌てて理科室に駆け込むと、電動ノコギリを器用に操る同級生に軽く手を振った。制服はすでにベニヤ板の削りカスまみれ。女子力という言葉とはほど遠いキャラだけど、一心不乱に作業するエリコの並外れた集中力は、彼女らのプロジェクトには欠かせないものだったりする。

 いつもの場所に座ったノリカが取り出したのは発泡スチロール。カッターナイフを取り出して、小さな穴をせっせと作り始めた。すぐ隣では、同じく高1のミナとルミがヤスリで何かを黙々と削っている。

 理科部というよりは、どこかの工務店と言った風情だが、高1女子4人組が取り組むのは、理系の憧れと言ってもいい大プロジェクト――。大型ロケット製作だ。

リケジョ…? 

 「おお、今回はゴリゴリのリケジョの話か」と思った人、ちょっと違うかも。なにせ主人公のノリカは中高一貫の普連土学園に入った頃、理科には全く興味がなかったのだ。

 入部の理由は、他の部活と違って「あんまり上下関係がなさそうだった」からだし、ロケット班を希望したのも「ロケットって超楽しーよ。一緒にやろーよ」とハイテンションで話しかけてくる先輩に圧倒されたため。顧問の松浦良知先生の「ロケット班は大変だよ」という言葉も当時はあまり気にとめなかった。

最高時速180km

 彼女らが研究しているのは、厚紙や木材、プラスチックなどで作ったモデルロケットを正確に飛ばす技術。ロケット花火のように、推進薬(火薬)を燃焼して生じたガスを後方に噴射し、その反作用で上空に飛ばす仕組みだ。

 火薬を扱う上、小型の模型ロケットでも最大速度は時速180kmに達することもあり、打ち上げには日本モデルロケット協会が認定するライセンスの取得が求められる。このため、ロケット班のメンバーが最初に経験する打ち上げは必然的に、小型ロケットを飛ばす、最も簡単な4級ライセンスを取得するとき、ということになる。

 ノリカは中1の夏休み、ライセンス取得の打ち上げに臨んだ。先生や先輩に言われるままに、マーブルチョコの筒をカッターで加工する。空気抵抗を減らすため、先端に木材をヤスリで削った円すい形の「ノーズコーン」、内部にはパラシュートを装着。軌道を整える尾翼(フィン)を胴体につけ、火薬が装填(そうてん)された専用のエンジンを筒の中にセットし……。

 「よし、完成!!」

 見よう見まねで約2か月かけて作り上げた小型ロケット。エリコらが打ち上げに成功したのに続き、ノリカは火薬に点火するコントロールボタンを「えいっ!!」と押した。

 シューーーー。

 鋭い音と共に発射台から飛び出した小型ロケットは、空を突き刺すようにぐんぐん上昇。秋空のど真ん中でパッとパラシュートを開いた。

 「お菓子の筒が、飛んだ…!!」

 初の打ち上げは、製作期間2か月にして、滞空時間はわずか30秒。だけど、空飛ぶマーブルチョコの真っすぐな軌道はノリカにとって、一生忘れられない特別なものとなった。

 理科部に新たな歴史を刻むことになる“ロケット女子”誕生の瞬間だった。(高校生の登場人物はすべて仮名です)

夢をのせて、発射!(2)はこちら

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576646 0 部活の惑星 2019/05/13 05:20:00 2019/05/14 11:52:17 2019/05/14 11:52:17 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/05/20190510-OYT8I50054-T.jpg?type=thumbnail

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