和歌の高嶺に腕を振りつつ(3)

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富士高(静岡県) 百人一首部

こんな話です

 競技かるたの名門・富士高校で切磋琢磨(せっさたくま)して成長を続けるマイコとアユミ。ついに高校かるたの花形である団体戦に挑戦することが許されるのだが、個人戦との違いに悪戦苦闘することになる。

▽過去の連載

 和歌の高嶺に腕を振りつつ(1)(2)

鬼気迫る 仲間の声に 手が動く

 百人一首部に入って半年たった高1の秋、マイコとアユミに待ちに待った瞬間が訪れた。

 「みなさんにはこれから、団体戦に挑戦してもらいます」

 来たぁぁぁぁっ!! ずっと憧れていた団体戦。連載ではこれまで、1対1の戦いばかりが描かれてきたけれど、高校かるたの花形と言えば、やはり仲間と戦う団体戦なのだ。

 1チームは5人。1列に並んでそれぞれが相手チームの選手と戦い、3勝したチームが勝ちとなる。基本は1対1の戦いだけど、五つの対戦すべてが同時並行で行われるので、仲間と支え合いながら戦い抜く。

 例えば、富士高校の場合、相手陣の札を取ったら、「抜いたっ!!」と大きな声で仲間や対戦チームにアピール。ミスをした仲間がいれば、「焦らなくていいよ」と心を落ち着かせる。

 孤独な個人戦では、相手に一度つかまれた流れを取り戻すのは簡単じゃないけど、団体戦では、仲間の声が力になる。劣勢でも、かけ声で調子を取り戻して、一気に勢いづくなんてこともあるのだから面白い。

団体戦で優勝

 マイコとアユミらの当面の目標は、1か月後に迫った1年生同士による県新人戦での優勝。メンバー的には優勝候補筆頭であることは間違いなかったのだが、仲間と戦うかるたは、想像以上に奥が深かった。

 まず知ったのが、団体戦特有の緊張感。今までは目の前の札に集中すればいいだけだったのに、仲間のプレーにも気を配らなくてはならない。2対2になって自分で勝敗が決まるときなんかは、チームメートの祈るような視線が心に突き刺さる。

 そんなこんなで、団体戦の練習では悪戦苦闘。アユミは札位置の暗記がおろそかになり、マイコにいたってはお手つきを連発し、個人戦では勝てていた相手にも黒星を喫した。

 新人戦は予選で各選手が個人戦3試合を戦い、成績優秀者の多いチームが、団体戦で決勝を戦う特殊ルールで行われる。団体戦恐怖症に陥りかけていたマイコとアユミも個人戦では順調に勝ち星を重ね、いよいよ決勝を迎えた。

 大一番でダブルエースをよみがえらせたのは、やはりお互いの存在だ。

 まず、お手つきを連発していたマイコがみせる。

 「抜いたぁぁぁーーーっ!!」

 もはや、なるようになれ。やけくそ気味に放ったど迫力のかけ声に会場がどよめく。初めて見るマイコの隠れた“野性”に、みんな一瞬、あぜんとしたけど、アユミだけは違った。

 「マイコの声、気持ちいい!!」

 負けじと札を払い、「抜いた!!」の連発。2人は競うように札をとり続けた。

 〽嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり

 嵐で吹き飛ばされた紅葉がその後、川を美しく染めるように、試練を乗り越えた2人は県新人戦優勝という秋の歓喜をチームにもたらしたのだった。

まさかの大抜てき

 季節は巡り、高2の夏。マイコとアユミに大きなチャンスが舞い込んだ。

 「今年の県予選のメンバーを発表します」

 顧問の稲葉先生が切り出す。全国大会につながる県予選の登録メンバーは8人。もちろん3年生が中心になるのだが、

 「……アユミ! ……そして最後にマイコ!!」

 まさかの大抜てきに、2人は「はいっ!!」と力強く返事をし、目を輝かせた。(高校生の登場人物はすべて仮名です)

 和歌の高嶺に腕を振りつつ(4)はこちら

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600074 0 部活の惑星 2019/05/29 05:20:00 2019/05/30 12:24:46 2019/05/30 12:24:46 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/05/20190522-OYT8I50018-T.jpg?type=thumbnail

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