少年よ 騎士道をゆけ(1)

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札幌大谷中・高(北海道) フェンシング部

「本物の仮面ライダー!」 小4の出会い

 整然と雪かきが施された正門をくぐると、ずらりと並ぶ祝い花の甘い香りが鼻をくすぐる。

 春の選抜高校野球大会への出場を決め、歓喜に沸く札幌大谷。春夏通じて初の快挙に、校舎からつるされた「祝 センバツ」の垂れ幕の文字も何だか誇らしげに見える。

 冬はグラウンドが使えないのは雪国の宿命。この日も体育館では室内練習に取り組む球児たちがバットをブンブンと――

 「アレッ!!」

 体育館に響き渡ったのは、フシギなかけ声。端では真っ白なユニホームに身を包んだ2人の剣士が、小刻みに前後に動きながら、対峙(たいじ)している。

 先に動いたのは高2のコウジ。小さな突きを何度も繰り返し、素早い攻撃に相手の意識を向けると――

 「いまだッッッッ!!」

 大きく踏み込んだ突きを一閃(いっせん)。ぐいっと伸びた剣先は冷たい空気を突き破り、相手の胸を捉えた。「よし、狙い通り」とコウジは拳を握りしめる。

 そう。今回の物語の主役は、野球部ではなく、同じく春の全国選抜大会への切符を手にしたフェンシング部。ヨーロッパの剣術から生まれた超エキサイティングなスポーツで、「戦うチェス」とも呼ばれている。

謎の金属音

 コウジとフェンシングの出会いは、小学校時代までさかのぼる。その年代の男子なら、誰でもそうであるように、コウジは“強い男”に憧れていた。

 いま振り返れば、ちょっと恥ずかしいけど、この頃の口癖は「僕は仮面ライダーになる!!」。みんなが憧れるヒーローになるために、地元の空手教室に通い、己を鍛える日々を送っていた。

 そんな小4のある日、母親に連れられ、たまたま訪れた母の母校・札幌大谷でコウジは衝撃の出会いを果たした。

 初めて足を踏み入れた「ちょっと大人の世界」に胸を躍らせ、冒険者気分で敷地内を探索していたところ、

 「シャキン!!」

 ん? なんの音だろう?

 「シャキン、シャキン!!」

 激しく金属がぶつかる音。引き寄せられるように体育館をのぞくと、そこにいたのは、

 「本物の仮面ライダーだッ!!」

 マスクをかぶって“変身”し、剣と剣をぶつけ合う人たち。思わず息をのんだ。

 入り口から顔をのぞかせていると、それに気づいたお兄さんたちが声をかけてくれた。

 「キミもやってみる?」

 笑顔で大きくうなずいたコウジ。初めて触れた1mほどの剣は、ちょっと重かったけれど、手にしただけで戦う男になれた気がした。

弟のように

 「おっ! また来たのか」

 約1年後。札幌大谷フェンシング部の練習場には、中高生に交じって剣を握るコウジの姿があった。

 あの日のことが忘れられず、学校にお願いして練習に参加させてもらったのだ。最初は驚かれたけど、部員のみんなは弟のようにかわいがってくれたし、コウジも一瞬の駆け引きが勝敗を分けるじりじりした戦いにのめり込んでいった。

 当然のように中高一貫の札幌大谷を受験し、無事合格したコウジ。まるで新雪のように真っ白なユニホームに身を包み、強い男の道――「騎士道」を歩み始めたのだった。(高校生の登場人物はすべて仮名です)

フェンシングとは

 中世ヨーロッパの騎士道から生まれたスポーツ。日本には明治初期に伝えられた。相手の体に剣が触れるとポイントが入る。胴体のみを突く「フルーレ」、全身が有効な「エペ」、「切り」と「突き」がある「サーブル」の3種目に分かれる。

 少年よ 騎士道をゆけ(2)はこちら

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662226 0 部活の惑星 2019/07/01 05:20:00 2019/07/02 09:39:33 2019/07/02 09:39:33 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190628-OYT8I50002-T.jpg?type=thumbnail

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