最高峰のコシ(4)

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

ひばりが丘高(山梨県) うどん部

こんな話です

 富士吉田市内のスーパーのフードコートで自分たちの店を開くことになったツトムらうどん部のメンバーたち。開店当初は上々のスタートを切ったように思われたが、間もなく客からは麺に対する不満の声が上がるようになり……。

▽過去の連載

 最高峰のコシ(1)(2)(3)

たどり着いた黄金比。麺も夢もちぎれない

 2018年4月29日。俺たちうどん部は、ついにその日を迎えた。

 できることはやってきたつもりだ。先輩の卒業後、しばらく一人で開店準備を進めてきたが、開店直前に頼れる仲間も加わった。1年生のセイラ。うどん作りはまだ無理だけど、彼女に接客を任せれば、俺はうどん作りに集中できる。

 「開店で~す!」

 午前11時。セイラの声がフードコートに響き渡る。俺は三角きんをきつく結んで気合を入れ、厨房(ちゅうぼう)に立った。

 で、初日の結果――お昼時3時間の営業で約70杯。想像以上にお客さんが来てくれて、途中からは、無心で麺をゆでる、ゆでる、またゆでる! そんな状態で、まずは上々のスタート。そう胸をなで下ろしていたのだが……。

気温、湿度で調整

 うどん部によるお店の営業は週1回、日曜日のお昼時。サービス向上のために、食べ終わったお客さんにはアンケートで感想を書いてもらっている。

 異変に気づいたのは5月に入ってから。感想でこんな意見が目立つようになってきたのだ。

 「麺が短いです」

 どういうこと? ゆでる前はいつもの長さだし、レシピ通りに作ってる。そんなはずは……。半信半疑、俺はゆであがった麺を確認してみた。

 「ち、ちぎれてる」

 どうやら、ゆでた時に麺がちぎれてしまうようなのだ。改善しなければ、お客さんが離れるどころか、「吉田のうどん」の評判まで落としかねない。

 俺たちはすぐに地元のうどん店に助けを求めた。理由はすぐにわかった。

 「麺を作るときは、気温や湿度に合わせて、小麦粉や水の量を変えないとダメだぞ」

 これほどまで頻繁にうどんを販売することがなかったので気づかなかったけど、実はうどんは超繊細な食べ物なのだ。

 湿度の低い日は水を普段より多めにしないと、麺はパサパサになるし、逆に湿度の高い日は水を少なめにしないとゆるくなる。熟成スピードも気温や湿度によって変わるので、同じ状態の麺を毎日、作るのは至難の業なのだという。

 「これは一からやり直しだ」

 それからの放課後は、セイラや先生と家庭科室にこもりっきりで、ひたすら麺を研究した。

 「ダメだ。ちぎれた」

 「こっちは硬すぎる」

 数g単位で水や小麦粉の配合を変えては試食する。これが延々と続くものだから、さすがの俺もうどんが嫌いになる寸前まで追い込まれた。

 そして1か月後――。

 「これならイケる!」

 俺たちはついに、ちぎれない麺の黄金比にたどり着いた。強力粉と中力粉を4:3の割合で混ぜ、気温や湿度に応じて、水の分量を小麦粉に対して45~49%の間で調整する。驚くほどの細かさだけど、この繊細さこそがうどん作りの醍醐(だいご)味なのだと気づかされた。

探究は続く


 麺の改良後、店の評価はうなぎ登り。それと比例するかのように、たくさんのマスコミが俺らの店、さらには吉田のうどんの魅力も取り上げてくれるようになった。今年の春には2人の新入部員も加わった。

 そして俺は――。夢であるうどん屋を開くために、今日も「うどん道」を探究する。いつの日か吉田のうどんの「最高峰のコシ」で、みなさんをおもてなしできる日が来ることを願いつつ。(高校生の登場人物はすべて仮名です)(完)(文・菅原智、写真・菅原智、うどん部)

無断転載禁止
887668 0 部活の惑星 2019/11/08 10:05:00 2019/11/08 10:05:00 2019/11/08 10:05:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/10/20191024-OYT8I50054-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

 


東京オリンピックパラリンピックオフィシャル新聞パートナー

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
The Japan News
発言小町
OTEKOMACHI
ささっとー
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ