最高峰のコシ(2)

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ひばりが丘高(山梨県) うどん部

こんな話です


 富士吉田市名物「吉田のうどん」を広める「うどん部」の部長・ツトムは、うどん作りに憧れてひばりが丘高校に入学した。入部直後に待っていたのは、麺打ちの勉強と愛するソウルフードが直面する危機だった。

▽過去の連載
 最高峰のコシ(1)

足踏み「ムニュ、ムニュ」 気持ちいい…

 モチモチ、ツルツル、シコシコ……うどんの食感を例える表現はいろいろあるけど、うどん部のメンバーが最初に体で知る感覚は「ムニュムニュ」かもしれない。

 俺もそうだった。

 3年前の春。うどん部に入部した俺は、先輩から言われるがまま、白い粉末を水と一緒に混ぜ合わせた。粘土のようになったその物体を大きなビニール袋に入れると……

 「じゃあ、ツトム君、これ踏んで。うどんの麺を打つから」

 「は?」

 「床に置いて踏んで」

 俺は戸惑いながら、靴を脱ぎ、ビニール袋の上にそっと右足を置いた。

 「ムニュッ☆」

 泥の田んぼにはだしで入ったような独特の感触。さらに左足を乗せて全体重をかけると……

 「ムニュ、ムニュ」

 こ、これは気持ちいい。

 「じゃあ、どんどん踏んでいって。リズム良くね」

 言われなくてもそのつもりだ。これがうどんの麺作りだとするならば、これは気持ちよい上に、おいしい作業だ。

 足で踏みまくるうちに、次第に弾力を増していく白い物体。聞けば、小麦粉に水、塩を混ぜただけだというが、どんどん感触があのコシの強い「吉田のうどん」に近づいていくから楽しい。

 「よし、そろそろいいね。切ってみよう」

 (やり)みたいな長さの麺棒で平たく延ばして、丁寧に包丁を入れれば完成。全身粉まみれになって初めて作った自家製麺は、太さも長さも不ぞろいでお世辞にも上出来とは言えなかったけど、ゆで上がったそれを口に入れた瞬間、思わず頬がゆるんだ。

熱々にあこがれ

 俺がうどん部に入って気づいたこと。それは、「学校って、楽しい!」。

 え、そんなこと? いやいや、中学までの俺を知る人が聞いたら、びっくりすると思う。だって、昔の俺は、熱々のうどんとは正反対の冷めた中学生。

 友達はいたけど、部活にも入ってなかったし、正直、学校を心から楽しいなんて思ったことは一度もない。学校をさぼって、一日中、家でテレビゲーム……なんて日もあった。言わば、陰キャラ(笑)。だから進学が迫っても、「高校もつまんないんだろうな」って思ってた。

 そんなとき、たまたま出かけた地域のイベントで、大人たちに交じって、ひばりが丘高校の先輩たちがうどんを売っていた。目がさめるような活気あるかけ声、キラキラと額ににじむ汗、お客さんを笑顔にする先輩たちの笑顔……。まぶしすぎた。

 いま振り返ると、当時の自分は無意識のうちに、自分が没頭できる何か、自分を変える何かを探していたのかもしれない。

 そして俺は、うどん部に入るためだけに、ひばりが丘高校に入学した。

後継ぎ やばい

 そうして、うどんにのめり込んでいった俺だけど、「吉田のうどん」について知れば知るほど、この愛すべきソウルフードが「やばい状況」にあるってことがわかってきた。

 人口減少と高齢化にあえぐ日本の地方。富士吉田市も例外ではなく、市内のうどん店はこの10年で10軒ほどが姿を消した。うどん部が市内のうどん店に行った調査でも、ほとんどが「後継者がいない」と回答した。

 このままでは、吉田のうどんを広めるどころじゃない。俺たちにできることって何だろう。入部早々、俺は重く大きな課題を突きつけられたのだった。(高校生の登場人物はすべて仮名です)

 最高峰のコシ(3)はこちら

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883164 0 部活の惑星 2019/11/06 09:55:00 2019/11/07 10:00:38 2019/11/07 10:00:38 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/10/20191024-OYT8I50057-T.jpg?type=thumbnail

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