男だらけの舞台で(1)

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逗子開成高(神奈川県) 演劇部

熱血指導者とスーパールーキー(?)登場

 汚れた部室によどんだ目の部員、周囲の同情を集めるとことんまでの弱小ぶり……。一昔前の青春部活マンガでよくみられた舞台設定だろう。

 ちょうど今から1年半前の2018年3月、俺たち逗子開成高校演劇部もそんなド底辺に近い状態だった。

 当時高1の俺・東山が次期部長として悩んでいたのは、「どうしたら勝てるか」ではなく、「どうしたらみんな練習してくれるか」。

 まず練習が時間通りに始まることはほとんどない。練習中もスマホ片手に「ゲーム中だから、誰か代役立てといて」なんてことは日常茶飯事。気に入らないことがあると、すぐけんか腰になるヤツもいたし、誰かが少しでもやる気を見せれば「何あいつ、マジでやってんの?」なんて、陰口を(たた)かれる始末だった。

 部活マンガならそんな時、熱血指導者が出てきたり、スーパールーキー(もしくは転校生)が入ってきたりするもんなんだけど、そんな都合のいいこと、そうそう起こるわけがない。

次期部長の悩み

 昔はこんなじゃなかった。中高一貫の男子校の男だらけの演劇部。全国レベルとまではいかないけど、はっちゃけた台本と固い友情に結ばれた息のあった演技で、学内のステージでは毎年ドカンドカンと笑いの渦を巻き起こしていた。

 中1の時から、それが当たり前だった俺からすれば、ここまで落ちるとは想像もできなかった。

 部が空中分解した直接のきっかけは、高1の秋の県大会で起きた大げんかだった。

 上演を目前に控えた会場のロビー。「お前、もういいかげんにしろよ!」。突然、叫び声が上がったと思うと、演出の西野と役者の中井が取っ組み合いのケンカを始めていた。

 小さなことの積み重ねだったらしい。中井からすれば、初めての演出で稽古をしっかり仕切れない西野へのイライラがあった。西野からすれば、演出である自分の意見に従わない中井への不満がたまっていた。それが、最悪のタイミングで爆発した。

 もちろん、この日の出来は散々。何よりも最悪だったのはその後、みんながこの結果をそれぞれ他人のせいにしてしまったこと。気づけば、10人の部員の心はバラバラになっていた。

ドラマの幕開け

 そんな状況だったから、去年の春、我が演劇部に入った新入部員が新高1の白田たった1人だったというのも(うなず)けた。しかも、白田はヨット部からの転部組で演劇はずぶの素人。俺の頭には廃部の2文字がよぎった。

 唯一の希望はコーチとして戻ってきた鳥沢先生の存在だった。中3の時までのコーチで、一度は県外の学校に転任したものの、再び戻ってきてくれた。本人も高校時代は演劇部だったらしく、とにかく芝居に熱い。

 「全員が責任を放棄している。これじゃあ、劇は作れない」。先生は着任早々、演劇部の現状を見抜き、俺たちに厳しい言葉をぶつけた。

 そして、もう一人、意外過ぎるヤツがぶち切れた。「先輩、こんなんじゃダメでしょ。やめるのか本気でやるのか、はっきりしてくださいよ」。すごみの利いた声で意識改革を迫ってきたのは白田だった。

 事実は小説より奇なり。マンガのような話だけど、我が部にはその時、熱血指導者とスーパールーキー(?)が2人同時にやってきたのだ。そして、それはどん底にいた演劇部が日本一にまで上り詰める壮大なドラマの幕開けでもあった。

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1228237 0 部活の惑星 2020/06/01 10:00:00 2020/06/17 11:22:20 2020/06/17 11:22:20 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/12/20191226-OYT8I50021-T.jpg?type=thumbnail

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