女神は細部に宿る(3)

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白梅(しらうめ) 学園 清修(せいしゅう) 中高一貫部(東京都)鉄道模型デザイン班

▽過去の連載
 女神は細部に宿る(1)(2)

もう言い訳しない――。開け、再出発の窓

 去年の全国高校鉄道模型コンテスト。1畳レイアウト部門では、高1だったタナやマノアたちが3位になり、高2と中3が取り組んだモジュール部門(60cm×60cm)も2位。どちらも最優秀賞を逃し、涙をのんだ。当時中3だったヒナの目に映っていたのは……。

2位の理由

 コンテストでモジュール部門に出したのは、台湾の観光地2か所を組み合わせた作品だった。

 川の表面は流れているようにでこぼこさせた。「千と千尋の神隠し」のモデルになったという家々の提灯(ちょうちん)も、本物に近い色のビーズを探してつけた。

 中3の私たちも、高2の先輩を手伝って、厚紙を組み立てて家を作ったり、真ちゅう線をハンダごてでつなげて橋を作ったりした。こだわれるだけこだわったはずだった。でも、2位だった。

 最優秀賞は男子が1人で作った作品。写真の一部を切り取ったようで、超リアルだった。

 私たちはみんなで作るから、統一感ではかなわないと思う。でも、女子の柔らかい感性というか、二つの離れた観光地を組み合わせるとか、あるようでないファンタジーの世界を表現するのが強み。それは示せたのに。

 結果発表後、顧問のナカザワ先生から「なんで家の裏に窓が全然ないの?」って言われた。

 窓があったほうがいいことはわかっていた。ぎりぎりまで作業しても、時間が足りなかったんだ。でも、そんなのは言い訳。審査員に「手を抜いた」って思われてしまったのかも。

挑戦したかった

 コンテストを境に代が替わり、私は中3を代表して副部長になった。そして、私たちは次も、モジュール部門に出品することになった。

 清修は1畳レイアウトで最優秀賞になったことがあるけど、モジュール部門では2位止まり。同じ学年の友だちと「初優勝するぞ!」と意気込んでいた。

 それから数日後。休み時間に、私たちは部長のタナ先輩に呼び出された。廊下に出ると、副部長のマノア先輩ら高1の人たちが勢ぞろいしていた。ナカザワ先生も離れて様子を見ている。なんだろう。

 「私たちにモジュールやらせて」とタナ先輩。モジュール部門の最優秀賞は「文部科学大臣賞」として、世界大会にもつながっている。応募数も例年150校ほどで、1畳レイアウトの20校弱とは桁が違う。つまり、モジュールの方が“格上”。

 そしてタナ先輩たちが、コンテストに挑戦できるのは次が最後。モジュールで挑みたい気持ちはわかるけれど…。

 「わかりました」。マスクの下で唇をかみながら、そう答えた。

リベンジ誓う

 先輩たちが引き揚げた廊下で、同学年の友だちの声が響いた。「まず1畳で優勝、次にモジュールでも優勝したら2種目制覇だよ!」。ありがとう、でも……。

 「なんで家の裏に窓がないの?」。ナカザワ先生の言葉が頭でこだまする。校舎内に飾られた作品を見るたびに胸が締め付けられる。

 このままじゃ再出発できない。だから、一緒に作った高2の先輩や先生にお願いしたんだ。「家の窓、開けさせてください」って。

 冬休み、ジオラマから家を取り外して自宅に持ち帰った。厚紙をカッターでくりぬき、透明なプラスチック板を貼って窓にした。

 一軒、一軒と仕上げるたび、心のつかえが一つひとつ落ちていくのが分かった。

 窓のある家に生まれかわったジオラマは、4月から学校の近くにある大きな駅で展示されている。作品を見るたびにこの窓に誓う。悔いを残さないように取り組むんだ、って。

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2076359 0 部活の惑星 2021/05/26 11:00:00 2021/06/02 12:56:15 2021/06/02 12:56:15 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210524-OYT8I50024-T.jpg?type=thumbnail

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